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続・マイ・ファースト・カメラ、休息への旅へ。

(前回の続き)購入から20年、いよいよ使用不能となったマイ・ファースト・カメラ「CONTAX Aria 」を、ネット検索で見つけたカメラ修理屋さんへ持ち込んでみることにした。

修理屋さん最寄りの駅前は昔ながらの商店街がいまだ健在でそれなりの賑わいを魅せていた。修理屋さんは商店街から脇道を入った一本裏の通り沿いに建つ、二階建の古い住宅の2階にあった。表札でお店の名前を確かめてから建物の側面に取り付けられている鉄製の狭い階段をカンカン音を立てて登り詰めた。入り口の扉の前であらためて意を決して(人見知り)ドアノブを握って扉を押し開けると、正面に中古カメラが並べられたガラス棚がまず視界に飛び込んできた。ガラス棚の向こう側は作業スペースで、そこで男性が2人、背中合わせで机に向かいそれぞれ作業に専念していた。ドアノブに手をかけたままの姿勢で「すみません、修理をお願いできるか見ていただきたいのですが」とどちらにともなく声をかけると、入り口に近い側に座っていた男性がこちらへやってきた。傍の狭いスペースに応接用の小さな机と椅子が置かれていて勧められるままそこに腰を下ろし、わたしは持ってきたカメラをカバンから取り出すと事情を説明した。男性はわたしのカメラを手に取って症状を確認してから眉根を寄せて困った表情を見せた。そして、「ContaxのSというカメラを自分も持っているんですけどね、まだバラしたことがないんですよ。ちょっとこれはウチでは難しいですね。」と断られた。断る理由が「まだバラしたことがない」というところがあっけらかんと真っ正直で好感を持てた。今回の故障は電子系統に関わる問題だから引き受け手が限られるということはあらかじめ調べてわかっていたので、やっぱりダメか、とわたしはさっぱりと納得した。

しかし男性は続けて、Contaxのカメラを専門的に修理している会社がありますから、とあるお店の名前を挙げてくれた。メモさせてください、とわたしがアタフタしていると、お店の奥で作業していたもう一人の男性が顔をあげて「そこじゃないよ、確か長野にあるはずだよ」と言った。すると、目の前の男性は あ、そうだった、と言いながらポケットからスマホを取り出すと、ちょっと待ってくださいね調べますから、と検索してくれた。そして取り扱ってくれそうなお店を2ヵ所、教えてくれたのだった。

店名をメモさせてもらうとわたしは礼を言って店を後にした。
今回は引き受けてもらえなかったけれどとても親切に対応していただいた。何かの時にはまた相談させてもらおうと思った。


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そして、Ariaは教えていただいたお店へと送り出した。
数日後にはその店から連絡が入り、くだんの裏蓋とシャッターの故障以外にもツマミの欠損や底にヒビが入っているなど、これまでまったく認識していなかった驚きの修理箇所を数ヵ所追加で指摘された。その上で、「今ならどの修理箇所についても部品が揃うので修理することができますけどどうしますか」と訊かれた。

”今なら部品が揃う”という殺し文句にわたしは一にも二にもなく、それはもう是非よろしくお願いします。と即答していた。

部品よ、永遠なれ。


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というわけでAriaは修理のため数ヶ月間の旅に出た。再会できるのは年明けになってしまうかもしれないがそれも致し方ない。これまで20年間文句も言わず、わたしの酷使に耐えてきてくれたのだ。ここはゆっくり養生してもらい、再び一緒に出かけられる日を楽しみに大人しく待っていようと思っている。

そう、そのはずだった。。。



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(※画像はすべてCONTAX Aria + Carl Zeiss Distagon 28mm F2.8)


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