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書記の読書記録#95「或る「小倉日記」伝」

松本清張「或る「小倉日記」伝」のレビュー


レビュー

ー或る「小倉日記」伝

1952年の作品で,第28回芥川賞受賞作。肉体的な欠陥を抱えながらも頭脳の明敏な一青年が,森鴎外「小倉日記」の巡礼を行う話。ある種のコンプレックスによる悲劇性を学問の追究へと昇華させた感じか。周辺人物も大事で,常に献身的な母や"コケットリイ"てる子,これらの存在が主人公の姿勢に影響する。

他の短編にしても書いてあることは似ていて,学者が表現者かであろうと夢中になる者,気分はどうあれ献身する者,機会があるごとに出し抜こうという雑な悪意,人々の生涯,あたりだろう。考古学や歴史学に対する考察の姿勢は,ひねくれた面はあるものの根は真摯そのものだと受け取った。また,人々の学究から推理の萌芽を感じ取ることもできる。


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