思い出「恥ずかしがり屋の忘れ物」
【夏の宿題】
7歳の時。
夏休みが終わり、9月になって学校が始まった。
俺は、夏休みの宿題を終わらせられず、始業式に行ってきた。
終わらなかったのは、自由研究。
俺以外にも、数名宿題を終わらせなかった子たちがいた。
他の子達は、算数ドリルや、漢字の書き取りだった。
俺は、宿題を初めから終わらせる気どころか、やる気さえ無かった。
でも、親が宿題をやれとうるさいので、朝の1時間イヤイヤ宿題をやった。
それで、自由研究以外全部終わらせられたのは、自分で立派だと感じた。
残った自由研究は、少しやってあり、完成させられず持って行けなかった。
自由研究の課題は、電車の橋を作っていた。
作り方は、細い木の棒を切って、ボンドでくっ付けて橋の形にしていく。
これが想像以上に、根気がいる作業で中々終わらせられなかった。
当時の俺は、凄い飽き性で全然作業に集中できない。
でも宿題だし、とりあえず終わらせようと頑張った。
でも結局、始業式に間に合わず持って行けなかった。
【覚悟】
先生が、宿題を終わらせられなかった子達を、放課後残した。
そして、毎日放課後に残って、終わってない分をやっていく事になった。
でも、俺の場合自由研究なので、家でやってきて良いと言う事になった。
しかし俺だけ、1週間以内にやってこいと指示が出た。
正直1週間でやるのは、きつい気がしたがやるしかない。
これから俺は、毎日家に付いたら速攻電車の橋を作り続けた。
橋の部分の寸法を計り、細い木をカッターでゴリゴリ切っていく。
そしてボンドで止めて、チビチビ作っていった。
こんな根気のいる事を、何で俺はやろうと思ったのか凄く後悔した。
でも、1週間という短い時間しかなく、必死になって作っていった。
母親は「こいつ、こんなに集中する人間だっけか?」と言う顔をしていた。
そして、木が無くなったら母親に言ってお金をもらい、買いに行く。
俺は「このケチな母親が、よくお金を出してくれるものだ」と感じた。
いつもは、一緒に買い物に行った時、お菓子をねだるが全く買てくれない。
おもちゃをねだっても、誕生日とクリスマス以外全く買ってくれない。
超ドケチな母親だった。
でも、自由研究の材料と言う事もあり、全部で1000円位出してくれた。
俺は、この時これで自由研究を終わらせなければ、殺されるなと感じた。
【睡魔】
5日たち、橋げた以外の部分は、何とか完成させられた。
残り2日で、橋げたを完成させないとならない。
橋げたは、細い木をレンガみたいに重ねて作ろうと思った。
そして俺は、キチガイの様に木を同じ長さに切りまくった。
そして大量の短い木を作り、レンガの様に1つ1つ重ねて作っていった。
これも、気が遠くなる様な根気のいる作業で、凄く大変だった。
特に、作業を始めるまでが、凄く面倒くさくて体が動かない。
それを無理して、体を動かし作業を始めると、数分で何も感じなくなる。
そして、何とか作業に打ち込む事が出来ていた。
1度始めると、全く休憩無しで2時間位夢中で出来た。
そして、夕飯の時間になると作業を止めて食事をする。
この後、アニメを見て作業を開始した。
作業を開始する事が出来るのだが、1時間もすると眠くなってしまう。
俺は、眠気だけには、どうしても勝てずその場で寝てしまっていた。
そうするといつも、父親が布団に囲んでくれて寝かしてくれていたようだ。
【照れ屋さん】
そして何とか、1週間で完成させる事に成功した。
そして、完成した電車の橋を自分で見て、その大きさに今頃驚いた。
大きさを計ったら、全長160㎝位あり、橋げたからの高さが50㎝位ある。
こんなデカい物を登校時間に学校に持って行くのは、恥ずかしい。
なので30分前に学校に登校する事にした。
そして1番に学校に到着し、こっそり自由研究が置いてある場所に置いた。
自由研究が置いてある場所は、教室の後ろにあるロッカーの上。
でも、橋が巨大で置く場所が無く、皆の自由研究を端に追いやり置いた。
明らかに俺の電車の橋だけ、出目立ちすぎている。
なんだか、凄く恥ずかしいが、どうしょうも無かった。
そして、みんな登校してきて、俺の電車の橋を見てその大きさに驚いた。
みんな、まるで巨大ロボを作ってきたかの様な驚き方をしていた。
皆の凄い驚きっぷりに凄く恥ずかしくなり、自分が作ったと言い出せない。
でも、先生が来て宿題をやってきたと事を伝えてバレてしまった。
そうしたら、先生にもビックリされて、皆から賛美されてしまった。
宿題を忘れたのに、凄く褒められて、どう反応すれば良いのか解らない。
でも、嬉しくて恥ずかしくて、顔も耳も真っ赤だったと思う。
そして1月間、巨大な電車の橋は、みんなの自由研究と一緒に飾られた。
この間だけ、クラスの子達の俺の見る目が違っていた気がする。
俺、もしかしてヒーローなのか?と勘違いしていた。
宿題忘れたくせに。