【期間限定公開】『疲れない体を脳からつくる ボディハック』第1章①〜人はなぜ疲れるのか?〜
※この文章は、8/7(金)に発売される新刊『疲れない体を脳からつくる ボディハック』の第1章の一部を期間限定で無料公開したものです。
前章にあたる「はじめに」はこちら。
現代人特有の疲労の正体
現代生活には、疲れる要因があふれています。多くの方は「朝から晩までデスクワーク、寝る時間も少なく、食事は外食中心」という生活を送っているのではないでしょうか? ストレス、運動や睡眠の不足、栄養の偏り、単調な日々の繰り返し。これは、まさに〝不健康〟そのものです。
健康の基本は「運動・栄養・休養」。
運動することでさまざまなホルモンが分泌され、その働きで睡眠中に脳内のストレス物質が除去されます。
そのため、仕事でストレスを溜めながら運動と睡眠のダブル不足が重なれば、ストレスは解消されるはずがありません。その結果、仕事のパフォーマンスは下がり、働く時間は無駄に延び、睡眠不足と運動不足から抜け出せないという悪循環にはまってしまいます。
世界保健機関(WHO)は、健康を「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」と定義しています。 心身ともに疲弊し、仕事も私生活も楽しめない状態は、健康とは程遠い状態です。これでは、パフォーマンスを上げるどころではありません。
ヒトは「2つのモード」を切り替えて生きている
ヒトは本来、自然の中で暮らす生き物でした。変化する環境の中で生き延びるため、脳は活動し、体は生命活動を維持しています。外気の変化に合わせて体温調節を行ったり、昼には外敵から逃げたり、狩りをしたり、夜には体をリラックスさせて休めたり。環境に合わせて脳と体を調整することで、ヒトは生きてきました。
そして、ヒトが活動するにはエネルギーを消費するので、消費した分を補うために休む必要があります。ヒトは「動く/休む」という2つのモードで生きているのです。
日中は「動く」=ONになることで活動のパフォーマンスを上げ、夜は「休む」=OFFへ切り替えることで活動した分をリセットします。
この2つの機能を備えたボタンの役割を果たしているのが「自律神経」と呼ばれる神経です。活動を促すONが「交感神経」、休息を導くOFFが「副交感神経」です。この自律神経が、意識して動かすことのできない内臓の機能を調節したり、内臓からの情報を司令塔である脳に伝えたりしています。
たとえば、交感神経にスイッチが入ってON状態になると、呼吸数や心拍数、血流が増加して体温が上昇するなど、緊張時に出る反応が起こります。これは「闘争と逃走」と呼ばれていて、古来は、他の生物から自らの命を守るために発動する自動システムでした。睡眠中でも、急に獣が現れたら瞬時に体を動かせる状態にならなければ一瞬で死んでしまいますよね。自律神経が適切に切り替わることで、ヒトは生き延びてきたとも言えます。
だるい疲労感の正体は「環境の変化」
そんなヒトの原始的生活も、文明の発展に従ってすっかり様変わりしました。ヒトは自然環境と夜を克服し、その生活範囲も活動時間も大幅に広がりました。
しかし、活動時間が延びれば延びるほど、ヒトの体では交感神経優位のON状態が続きます。つまり闘争モードが長く続くため、エネルギーを消耗して疲れやすくなってしまいます。
また、遠くの獲物を見て狩りをしていたヒトの目は、遠くを見る際は交感神経優位のON状態にあります。夜になれば遠くは見えなくなり、焚き火に照らされる至近距離では、副交感神経優位のOFF状態になります。ところが、現代生活では夜になっても煌々とした電灯のもとで働き続けたり、ベッドに入った後もスマホを使い続けたりと、副交感神経が優位になるべき時間帯に交感神経が優位になっています。これこそ、脳にバグが発生している状況です。
脳にバグが生じている現代人の生活は、自律神経のON/OFFがチグハグになり、体には大きな負担がかかります。たとえば、自律神経のバランスが崩れると、それを司る「サーカディアンリズム」と呼ばれる、いわゆる体内時計が狂ってしまいます。それによって、
・睡眠の質の低下
・日中のパフォーマンス低下
・不調(頭痛、肩こり、腰痛など)
などが起こりえます。
「運動もしてないのに疲れる」「なんとなく不調」という現代人特有の〝だるい疲労感〟の背景には、脳のバグがあるのです。そもそも脳が疲弊する環境で生きているため、日常生活を送っているだけで疲れてしまうのです。
こうしたバグが常態化すれば、より疲労が抜けづらくなります。交感神経が優位なON状態のままでは、横になってもよく眠れず、1日の疲れがリセットされません。交感神経優位が長く続けば闘争状態が長く続くので、高いストレスにさらされ続けます。
このような問題を放置したまま、体へのアプローチだけで疲労をとろうとしても、根本的な解決にはなりえないことがおわかりいただけたでしょうか。
脳を整える=脳細胞の3大要素を最適化する
ソフトである脳のバグを解消すれば、ハードである体全体の不調は改善され、パフォーマンスも格段に上がります。
さて、では脳を活性化するためにはどうすればいいのでしょうか? 脳は千数百億もの細胞の集まりです。つまり、脳を整えるとは、この脳細胞のコンディションを改善するということ。
それには、細胞の3大要素「酸素・刺激・栄養」を最適化する必要があります。
脳細胞たちが元気であり続けるためには、
①細胞の生命線である「酸素」
②脳を活性化する(鍛える)「刺激」
③体(脳)の部品とエネルギー源となる「栄養」
この3つが適切である必要があります。
本書では、「酸素」と「刺激」を中心に扱います。
第1章のコラムと第5章にて「栄養」についてもお話ししますが、現代の生活では、酸素や刺激が適切でないケースが多く見られるため、本書ではそちらを優先しています。
それでは、さっそく「酸素」と「刺激」にまつわる、現代人に特徴的な4つの不健康現象について見ていきましょう。
(つづく)
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