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もしも出会わなかったら、

執着の終の棲家の安積山宿世の縁共に果てぬる
(SHUUCHAKU NO TSUI NO SUMIKA NO ASAKAYAMA SUKUSE NO ENISHI TOMO NI HATENURU)

たしか高校生のときだった。

古典の教科書に載っていた安積山の話を初めて知って
小さな衝撃を受けた。

誘拐事件なんてニュースではよく目にするけれど、
それが古典文学に描かれていることに胸がざわついた。

もしも出会わなかったら、それぞれの日々を生きて
天寿を全うしたかもしれなかった2人。

振り切れない片想いが原動力となって、
一組の男女の人生が狂った。

逃げた先でたどり着いた安積山で日々を重ね、
思わぬ形でそれぞれが死を迎えた。

それは前世からの因縁だったのだろうか。

2人の生活の場所であった安積山の庵で、彼らは果てた。

美貌を失った女と、その女を失った男の成れの果ての
安積山。

彼らを迎え入れたその場所は、一体どんな想いで
2人の日々と最期を見届けたのだろう。

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読んでくださって、どうもありがとうございます** きらめく50音の中から掬い上げた31文字が、 あなたに届くとうれしいです。 今日も明日も、あなたの毎日が素敵な日々でありますように。 あなたの人生と世界が、優しいものでありますように。 すずき春