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#227 青年期の心理の変化と今どきの親子関係と愛着

学生と面談しながら、たぶん親子間の愛着に何か秘密が隠されているのだろうと感じる事例に出会うことが多い。

問題があると思っても、はっきりと「愛着障害」と断言するだけの根拠を持てずにいる。
専門家ではないから。

【用語】
愛着・・・・慣れ親しんだ人や物事に深く心を引かれ、離れがたく感じること。
愛着障害・・・・乳幼児期に長期にわたって虐待やネグレクト(育児放棄)を受けたことにより、保護者との安定した愛着(愛着を深める行動)が絶たれたことで引き起こされる障害の総称。

デジタル大辞泉(小学館)

「愛着障害」以前に、「愛着」という概念をきちんと理解し、自分の中に定義させなければならないと思った。

教育心理学から派生させて研究してみたいと思うけれど、自分の本来の研究領域ではないから、研究目的を明確にして整理して研究費を申請するための下調べと準備を進める時間がアレなわけで・・・・どれだよ

ふだん学生達に「時間は自らつくり出すものだ!」と言っておきながら、時間がないことを言い訳にする根性のない自分が嫌いだ(本当は、そこが人間的で好きなのだが)。

手持ちの書籍を読んだり、大学や市の図書館を駆けずり回って専門書に当たってみたのだけど、親子関係に関する研究に関しては従来の知見と現在の知見は異なることがわかった。

歴史的変遷をちょっと調べただけで気が遠くなるような作業だとわかり気持ちが萎えてくる。

日ごろ向き合っている大学生は青年期に位置している。

面談を通して対話を繰り返しながら、心の底にある澱を取り除いてやりたいという思いはある。

青年期の年齢区分は心理学ではいくつかの分け方があるが、厚労省の区分に従えば15歳~29歳とやや長めだ。

一般的に青年期は「子どもから大人へ移行する過渡期」と定義されている。
つまり、いろんなアレが起こる時期なわけだ。どれだよ‥‥

民法改正により18歳成人となったからと言って、高校3年生で一気にオトナとして完成するわけではない。

個人差もある。

それでも、大学生ともなれば、いつまでも子ども扱いするわけにはいかないと思って、大人扱いするよう努めるのだけれど、結構、苦戦しているのである。

私が子どもだからいけないのか?
そう、私は少年期を生きている。

従来の考え方にしたがえば、青年期は急速に親からの「分離」や「自立」が進む時である。

しかし、新しいモデルは、青年の自立を重視しつつも、愛着や親密性が高いレベルで維持され、しかも子どもの発達に好影響をもたらしているらしい。

つまり、親は子に対して重要な「サポートシステム」として機能し、幼・少年期と同じように依然として強い愛着の対象となっていて、それが肯定的な発達を促進させるというのが現代の青年像であり、新しい親子関係のありよう、ということらしい。

現在、小学生段階からキャリア教育が始まり、「キャリアパスポート」なるものを使いながら中学生、高校生のキャリア教育へと連なっている。

キャリア発達に影響を及ぼしていると考えられる親との関係性に関するデータがある。

愛着機能の中には「安全基地機能」というのがあり、ある種、母親の胎内のようなもので、胎盤がウイルスや細菌を遮断し、へその緒からは胎児へ必要な栄養もしっかりと供給してくれる。

へその緒が切れて胎児がこの世に出ると、親はさらに安全基地としてのレベルを上げていく。
そこは今も昔も変わらない。

ところが、現在は子どもが青年期を迎えてもなお、親は子のお悩み相談にも乗るし、車で送り迎えもする。
一緒に買い物にも行く。
子ども自身、親と行動を共にすことに抵抗感がない。家事をやらせることは少なく、進路決定も親があれこれと助言し、親の希望を伝えても子から拒否されず、子が安定した企業へ就職することを望む。
子どもには実家で一緒に暮らして欲しいと願う・・・・・

あくまでも近年よく見られる傾向ということだが、他にもいろいろなパターンがありそうだ。

最終的に子どもは何らかキャリア発達を実現するが、親子間の強い愛着は続く。
女子と男子では違いがあるに違いない。


従来であれば、親は子が青年期を迎える頃までは強い愛着を持って育てるが、子はやがて反抗期を迎え、安全機能から自立し「一人前」になっていくものだという考え方だった。

子どもにとって、安全基地機能がキャリア発達に響を及ぼすことは間違いない。

現代は、子が青年期であっても愛着度・密着度が高いほうが、子のキャリア発達も望ましい形で実現するという。

学生と面談していてよく聞くのは、反抗期がなかったという話。

もちろん、今でも親に反抗する子はいる。

現代の親子関係は上手く均衡が保たれているようだ。

昭和世代のじいいちゃん、ばあちゃんから見ると、それが「甘やかし」に映るようだ。

私自身、絵に描いたような「通過儀礼」としての反抗期を経験し、親を疎ましく思う時期があった。

そして、やがて親に感謝の念を抱くようになった。

「孝行したい時に親はなし。さればとて石にふとんも着せられず」の思いに至っている。

我が家の息子3人も、父母の愛情を受け、時に反抗し、くっついたり離れたりを繰り返しながらオトナになった。

親の子育て、子の親育てにおいて後悔する出来事など経験しないほうがいいのだろうが、私は親に対して後悔することだらけだったからこそ、人として優しくあろう、誰かのために力を尽くそうと思えるようになったのかもしれない。
還暦過ぎてまだ少年期だけど。

親から受けた愛情を恩として、我が子や世間の人々に「恩送り」するのが私の使命だと思っている。

いずれにせよ、現代における愛着とキャリア発達の関係について認識を改める必要があるようだ。

「研究」すると言ってしまうと気が重いので、専門家の研究事例を読みながら素人として学び、大学生達と向き合うなかで、支援できることがあれば、心の結びなおしや、育ちなおしのお手伝いをしたいと思っている。

面談で丁寧な聞き取りを重ねていこうと思った次第。