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#329 余白のある人生

◆余白のある時間と生き方

基礎教養科目でキャリアデザインに関する単元に入った。

今の子たちは小中高校時代に探究学習で鍛えられているので、大学2年生くらいになると随分と上手いプレゼンをする。

私の授業ではChatGPTの使用も許可しているので、カッコいいトレンドワードも目立つようになった。

彼らがどれほど理解しているかは怪しい。

でも、私自身が怪しいセンセーなので学生たちの怪しさが目立たない。

気になる用語を拾い上げてみよう。

パーパス(purpose):目的、意図
リスキリング(reskilling):社内スキルの獲得と向上
ケイパビリティ(capability):才能、能力
コアコンピテンス(core competence):得意分野
アダプタビリティ(adaptability):適応能力
アントレプレナー(entrepreneur):起業家、創業者
イントレプレナー(intorepreneur):社内起業家

横文字ばかりだな・・・・・
日本語で表現したほうがストンと落ちない?


早朝開催の経営者懇談会に招かれた時のこと。

比較的若い経営者が多く、横文字がバンバン飛び交っていた。

言わんとすることは半分くらい理解できた。

私なりに解釈すると、
対外的なプレゼンはサマリーが重要であり、わかりやすくアカウンタビリティを果たさなければステークホルダーとの間にコンセンサスもインセンティブも生まれず、企業としてのコミットメントは希薄になってしまうだろう・・・・
と、自分で何を言ってるかさっぱりわかんない。

怪しいセンセーだから、これでいい。


トレンドワードは「人生、イケイケで行こうぜ!」とモチベーションを上げるエネルギーを持っている。

しかし、ことば合わせができていないと齟齬が生じる。
精神的プレッシャーを助長する危険性もはらんでいる。

“ やらされ感 ” 満載の社員研修で疲弊している若手社員は多いと聞く。

本人に主体的・内発的動機があって、しかも練習経験(失敗してもよい場)がないと成果が得られにくい。

「キャリア自立が大事だ! 非認知能力の向上を!」と言っている私自身、抽象的で具体性に欠ける言葉を連発しながら学生たちを煽っていやしないか?


学生が探究の過程で有名企業の「キャリア・オーナーシップ」を見つけ、プレゼンで紹介してくれた。

【キャリアオーナーシップ】
 自らのキャリアについて「どうしたいのか」「どうなりたいのか」「どうあるべきなのか」を主体的に考える」こと。

オーナーシップの度合いが4類型に分類されている。

1.未来創造フェーズ
2.関心分散フェーズ
3.自己固執フェーズ
4.現状停滞フェーズ

ほら、また横文字が!

では、気を取り直して次のフェーズに移りましょう。


実際のところ、自分の興味・関心と適性を深く理解し行動に反映させることはそう簡単ではない。

「好き」だけでは仕事にならない。

「好き」がかえって邪魔をすることもある。

「好きとは言えない」「嫌い」だったとしても、仕事を通じて開発され磨かれていく後天的能力もある。

そこが仕事の面白いところでもある。

私自身、周囲の期待や環境の変化に順応する柔軟さを求められるのと同時に、ブレない芯を持つことが大切なんだということはイヤというほど思い知らされてきた。

しかし、私の心はよくブレた。
プレッシャーで、「仕事行きたくないな。ぽんぽん(お腹)痛いんだもん・・・・」となったこともあった。

組織の長になった当初は円形脱毛症にもなった。

心理学的にいえば、
「思考系(論理)」「情動系(感情)」「ボディー系(身体)」は相互に関連しているので各面からのアプローチが必要になる。

思考系はアドラー心理学、情動系はゲシュタルト心理学というアプローチ法があるが、いずれかひとつだけでコントロールすることには限界がある。

今は心身のつながりを重視し、身体技法も取り入れることが求められている。

理論を知って視野を広げることが他者の助けになるだけでなく、自分を助けることにもつながっていく。

内省的な話し合い(自分との対話)の機会を設けたり自分の助け方を習得するためにも、カウンセリングやコーチングは重要な役割を果たしている。

学生たちのワークキャリア、ライフキャリアの形成には、立ち止まって熟慮するための「余白」が必要だと思うのである。