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#8 習慣の確立とマインドフルネス

■三日坊主症候群

教職志望者を対象に、課外講座『共に学ぶ』を開設している。
本時の導入部で問いを立てた。

「君が教師になったら、生徒に何を身に付けさせたい?」

聞き取りながら次々とホワイトボードに書き出していく。

ある学生が言った。
「そもそも理想を言う前に、自分自身、身に付いていないことなんですけど・・・・」

「ん?なに?」

「習慣化です」

みんな口を揃えて「あー、それ、あるある!」と。

「うん、それでいい。じゃあ、今日は“習慣化”について取り上げてみようか。学校教育、家庭教育では、よく、生活習慣の確立が大切と言っているしね」

いつもどおり、学生から出てきたことをお題にしながらワークショップを展開。

「やりたいこと」「やらなければならないこと」「やるべきこと」がいろいろあるのに、なかなか手が付けられないでジタバタしていることについて出し合った。

大学生20人に聞きました!
母数があまりにも少ないので、非常に限定的な話と受け止めてもらいたい。

個々の学生からあげられたことを集約し「習慣化したいけど、できていないこと」を質問項目にして、自分に当てはまるかどうか答えてもらい集計してみた。

第1位 勉強する 100%
おいおい! 青年よ大志を抱け!! 
「少年老い易く学成り難しとは、私が考えた金言だ」
「いいえ、違うと思います」
「そうか、それは失礼した」

第2位 新聞を読む 90%
学生達はネットの時事ニュースや教育関連サイトをチェックしているという。そこは褒めてあげよう。
新聞は読解力を鍛えるためのものではなく、考える材料を集める道具だと捉えれば、ネットでもいいだろうし、このnoteだって有益な情報が無数にある。

第3位 読書する 80%
子どもより大人の方が読書量は少ないと言われている。
押し付けられ強要される読書はつまらない。
自ら目的を見出してほしい。
私が60年近く読書を続けている理由は「よい本に出会うため」と、主人公の人生を追体験したり、著者、執筆者の思考にアクセスするためだ。
努力しているわけではない。これが習慣なのだろう。

第4位 部屋の掃除・片付け 65%
まあねぇ、人のこと言えないしなあ・・・ 

そもそも片付ける気ないんだよねwww

第5位 メモすること 55%
私はメモ魔な分、メモ帳はゴミ屋敷だ。
いざという時、メモ帳を開いても必要な情報をすぐに探し出せないことが多いので、5年ほど前からスマホのメモ帳に内容を思い出せるタイトルを付ける習慣を身に付けた。

第6位 断捨離 45%
第4位の「部屋の掃除・片付け」と連動している。
書籍、洋服、小物、誰かからもらったお土産・プレゼント、ゴムが緩んだ靴下やパンツの断捨離、ネガティブ思考やネガティブワードの断捨離、悪口・陰口、妬み嫉みの断捨離・・・・

第7位 ノートづくり 40%
学生達は、私が提唱した「ノート上手は勉強上手。世界に1つだけの “ わたしのノート ” をつくろう!」が、かなり気になっているようだ。
板書事項を忠実に模写したり、平常点をもらうためにノートをつくっているわけではない。
なんなら、ノートなんか書かなくたっていいのだ。
自分に合った勉強の補助方法を獲得することが一番大切だ。
私の学生時代は、他人には理解できない暗号だらけのノートを書いていたし、教科書の余白にもガシガシ書き込むタイプだった。

第8位 その他 15~30%
筋トレ、ジョギング、早寝早起き、自炊、朝食を摂る、ダイエット、快食快眠、気配り、綺麗な字を書く、笑顔、挨拶、体にいいもの食べる、チャレンジする・・・・

「それって習慣か!?」というものも含めて、まあ、悩める青年達なわけである。

unconscious bias

ちなみに、習慣化の邪魔をしていること、原因と思われることについてあげてもらった。

タイムマネジメントの欠如、無計画な行動、口だけ、YouTube、TikTok、Instagram、ネットゲーム、漫画・アニメ、疲労、寝不足、面倒くさがり、ルーズ、だらしない、意志薄弱、甘え、気まぐれ、悪友(人間関係)、周囲の人が凄すぎる、自信喪失、悪習慣の習慣化、意識低い系、何かの障がい、夢ばかり見ている・・・・・

以上のことを踏まえ、私自身のことも含めながら次回の講義へ向けて整理することにした。
noteを検索しただけでも、「習慣」をテーマにした記事は驚くほど多い。
テーマとして成立しているということは、「習慣化」は多くの人にとって乗り越えたい課題なのだろう。

以下の事項は、習慣化コンサルティング株式会社代表取締役の古川武士氏の著書を参考にした。

■習慣化するための3つのステージ

(1)反発期(1~7日間) 挫折率42%
100人中42人が脱落する期間だ。3日坊主症候群があふれかえっている。
だから、この手のハウツー本や啓発セミナーがあるのだろう。

心の中は、新しい習慣に抵抗する力が強く働き、不安感が増幅し、挫折感、自己嫌悪感が強くなる。

うーん、確かにそうだなあ。
ひたすら、step by step! little by little! bit by bit! day by day!

この期間は、ほんの少しの時間やるだけでいいから「続けること」に 意識を集中させる必要がある。
私は「セルフマインドコントロール強化期間」と名付けた。
ひたすら、自分を洗脳するんだ!

(2)不安定期(8~21日) 挫折率40%
生き残り58人から23人が脱落する期間。
アクシデントや想定外の出来事によって習慣がストップする時期だ。

「今日だけはいいかな」という気の緩みが最大の敵。
私のケースで言えば、「今日一日ぐらい好きなおはぎをいっぱい食べたっていいじゃないか」と思うのである。
それは、命を削る恐ろしい行為だと、改めて自分に言い聞かせなければならないターニングポイントである。

(3)倦怠期(22日~30日)挫折率18%
生き残り35人から6人が脱落する。
ここまで来ると成功の確率が飛躍的に高くなる。
あと少し!
しかし、習慣化に近づくにつれ刺激が少なくなり「飽きた」と感じたり、「効果が上がっていないんじゃないか?」という懐疑心も芽生え、モチベーションを維持する対策が必要になる。

マンネリを避けるために、意識的に変化を付けたり、次なる新習慣を思い起こしながらワクワク感を演出したい。

【習慣化に必要な期間】
(1)行動習慣(勉強、片付け、読書、食事、節約)は30日間

(2)身体習慣(運動、食事・ダイエット、禁煙)は90日間

(3)思考習慣(ポジティブ思考、論理的思考)は180日間

■ホメオスタシス

人間の脳は優秀である。
「いつもどおり」を維持するために外部環境の変化を遮断しようとする。
いや、それがよい場合と悪い場合があるということだろう。

人の体には体外環境が変化しても体内の環境を一定に保とうとするしくみがある。
この機能を「ホメオスタシス(生体恒常性)」と呼ぶそうだ。

気温や気圧など、場所・時間によってさまざまに変化する体外環境はいくつも存在するが、その影響は細胞レベルにまで及んでいるという。

例えば、暑い時は体温を下げるために汗をかく。
寒い時は体温を上げるために体を震えさせる。
私は授業で上手く説明できない時、いやな汗をかく。
妻に𠮟られたら泣く。

このホメオスタシスは体内環境に作用するだけでなく、心にも作用している。

脳は、新しい環境変化に遭遇すると「いつもどおり」を維持しようとして、環境の変化に応じて精神状態を一定に保とうとする。

習慣化のプロセスでもホメオスタシスが働く。
「新習慣」は心の中の安定を脅かす存在となり排除する対象となる。

「やめて!新しい習慣、私の中に入ってこないで!」となるわけだ。

私たち人間にとって「いつもどおり」であることは、心地よく安全なことであり、変化は脅威でしかないということだ。

納得。

■マインドフルネス

現在、GoogleやAppleの社内研修において導入されている能力開発のアプローチ方法として、マインドフルネス(mindfulness)が注目されていて、日本でも導入する会社が増えているらしい。

これも「習慣化」を考えるうえで重要な材料だと感じた。

私たちは、今この瞬間を生きているようでいて、実は過去や未来のことを考えて、「心ここにあらず」の状態が多くの時間を占めている。

確かに、過去の失敗や未来の不安といったネガティブなことほど、あれこれ考える時間が長くなりがちである。
つまり、自分で不安やストレスを増幅させてしまっているということである。

「どうせ私なんて・・・・」
「俺は何をやっても長続きしない」
ネガティブ思考の無限ループだ。

こうした状態から抜け出し、心を"今"に向けた状態にすることをマインドフルネスという。

心をよりよい方向、Well-beingな状態へと導くためには、物事を一段高い視点から冷静に俯瞰する認知能力(メタ認知)が不可欠となる。

「認知していることを認知する」という状態から、さらに一歩進めて「認知していないことを認知する」ということか。
難しいな・・・・と思うこと自体、認知バイアスである。

「私が知らない私」「私が気付いていない私」を知ること。
「目に見える現象だけでなく、見えていない事実を知る」ことが必要なのだろう。

変化の激しい時代には、世の中の状況を事実として迅速に認識することが必要だ。

私たちは、見えていることだけを捉えて、それが正解(動かしがたい事実)と思いがちである。
角度を変えて縦横上下、斜めから眺めたり、地面を掘り起こしてみたりすることも必要だろう。

見えていることだけで評価・判断することは、誤認につながる可能性がある。

自分の中にある認知バイアスを認知したり取り除こうとする姿勢は、刻々と世の中が変化する中では極めて重要な生きる力だといえる。

物事を客観的・俯瞰的に認知すること、事実情報と主観情報を切り分けることは重要である。

■モノローグからダイアローグへ

自分と向き合い、独り語りすること(ダイアローグ)も大切だが、無限ループにハマる可能性がある。
そんな時は、他者との対話(ダイアローグ)から気付きを得ることが有効だ。

そう、「習慣の確立」の話だった!
習慣を確立するためには、時として他人の力を借りることも必要だ。
生きる力とは「助けて!」と言える力でもある。

ネタを提供し考えるきっかけを与えてくれた学生たちに感謝。
では、次回もみんなでワイワイガヤガヤトークを。