本やビデオで学ぶ人気バンド再結成術 ④Chuck Berry 「Hail! Hail! Rock 'N' Roll」
ロック誕生以降、数多くのバンドが解散~再結成を行ってきているが、成功するためにはノウハウが必要。
私も過去にロックバンドのマネージメントをし、数年後に再結成も担当、様々な問題・課題を解決・克服して幸いにも成功を手に入れた。
その時に参考になったのは私がこれまでに見て・読んでいたビデオや書籍であった。
ここではバンド再結成を担当する読者に向けて、私が有益だと感じた情報をお届けしたい。
この作品は
ロックンロールを作ったと言っても過言ではないチャック・ベリーの60歳を祝うライブとそのドキュメント映像。
1986年、60歳になるチャック・ベリーはロックの殿堂入りを果たし、当時43歳だったローリングストーンズのギタリスト キース・リチャーズが中心となって60歳を祝うライブを開催するのだが、このチャック・ベリーはかなりのケチで偏屈な人であり、キースを始め、周りの人たちが振り回されるのも見どころである。
あなたがもし音楽関係者で、バンドの再結成を請け負う立場であるならば、ぜひこの伏魔殿のような、妖怪達が集った”シニアのわがままミュージシャン達”をどうやって束ねてゆくことができるか?参考にしてもらいたい。
日本に変わり者のミュージシャンは大勢いるが、海外の変わり者ミュージシャンは規模も言動も桁違いなのである。
チャックベリーという人は・・・
2003年、赤坂BLITZでチャック・ベリーの来日公演があり、私の知り合いが関係したのだが、チャック・ベリーはまさに想像を超えるいわゆる”変人”であったようだ。
チャック・ベリーは金に細かい(うるさい)と聞いていたが、それは本当のようで、アンプは指定された物をプロモーターが用意、チャック・ベリーが持ってくるのはギター1本のみ。
来日したのは本番当日の空港から直接会場入り(それも開演直前だったので関係者をヒヤヒヤさせていた)、ステージの演奏時間も契約で決まっており、その時間になったら目印となる人間を客席の見える所に立たせ、チャック・ベリーがその人を見つけると最後の曲を演奏してステージは終了となる。
バックバンドは連れて行かず、主催側が用意するのが彼流のやり方らしい。(なのでアメリカのプロモーターは各地の若手バンドに声をかけ、バックバンドとしてステージに上げていたらしい。ブルース。スプリングスティーンや、ブライアン・アダムスなど、大物になるミュージシャンも若手時代にチャック・ベリーのバックを努めたことがあると何かで読んだことがある)
こうすることでミュージシャンのギャラを低く抑え、その分チェック・ベリーのギャラが高くなる仕組みだ。
マネージャーも付けず、どこに行くのも自分一人。大きなオフィスを構えず、電話番の女性が一人雇われているだけで、交渉は全てチャック・ベリー自身が行うのが彼のスタイルらしい。
事実、この来日中にチャック・ベリー自身が街中にある旅行代理店を訪れ、飛行機の変更手続きをしている所を知り合いが見かけていた。本当に全部自分でやるらしい。
ギターもローディーなどのスタッフを付けていないので、だんだんと不具合が出てくる。なので、数年に1度新品のギターに買い替える。その方がローディーにギャラを払うより安くつくからだそうだ。(事実、この来日公演の際に、成田から到着したチャック・ベリーの楽屋に挨拶に行った前座のミュージシャンによると、真っ先に言われた言葉は「シールドを貸してくれ」だそうだ。(シールドすら持ってきていないらしい)
このドキュメントの撮影も撮影している期間中、毎日ギャラを現金で要求し、払わなければ撮影を許可しなかったらしい。そんなケチで自由奔放なのがチャック・ベリーである。
イベントの幹事 キース・リチャーズ
1943年生まれのキースはこの当時43歳。ローリングストーンズのギタリストで、この年にアルバム「ダーティー・ワーク」を発表したが、ヴォーカルのミックジャガーとの仲は最悪の時期。
バンドとしての活動は無く、あこがれていたチャック・ベリーの還暦イベントをプロデュースすることになった。
この後、この時に組んだドラマーのスティーブ・ジョーダン達とキースのソロ・プロジェクトとなる「エクスペンシブ・ワイノーズ」としてソロ活動を始めた。
60歳のチャック・ベリーからすれば、43歳のキース・リチャーズはただの小僧のような存在に見えているのだろう。
映像にもあるが、とある曲のチョーキング1つでキースはチャックからコテンパンにやり込められる。
不確かだが私達がこの映画を初めて観たのは1987年か88年だと思う。1990年に日本中が大騒ぎになったローリングストーンズ初来日前に開催されたこのライブで、『あのキースをこんなにコテンパンにする人間がいたなんて!』とかなり驚いたことを覚えている。
当時、24、25歳の私からすると43歳のキースは貫禄十分な怖い顔をした”ジーサン”で、そのジーサンに文句をつけるさらに怖い顔をした”オジーサン”とチョーキング1つで揉めているという絶対に同席したくない空間が映し出されていた。
それでもキースはキレれることなく対応し、晴れの舞台を素晴らしい演奏で楽しませてくれている。
そんな記念のライブは
チャック・ベリーの故郷セントルイスで開催されたこのライブ。ゲストにエリック・クラプトン、リンダ・ロンシュタット、ジュリアン・レノンなどが出演するが、この2日前にチャック・ベリーがオハイオで自分のコンサートをやると言い出し、結果、この60歳のお祝いライブ当日は喉がかれているという最悪のコンディション。(それが原因で映画のヴォーカル部分は後日、全て歌い直したそうだが、その時にもチャック・ベリーはギャラを要求したらしい)
ライブとしてはチャック・ベリーに影響を受けたミュージシャンが次々と登場し、チャック・ベリーの曲を歌っていくという直球なライブであった。
ライブシーンの後、部屋で一人、ギターを弾いているチャック・ベリーを映していたカメラがどんどん離れ、建物の全景が映るまで離れる映像で見せるチェックは”変人”だが、”素晴らしいミュージシャン”である事を感じさせてくれている。
ロックンロールの源流を感じさせてくれる映画である、ぜひチェックして欲しい。
こちらもぜひチェックを。
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