本やビデオで学ぶ人気バンド再結成術 ①KISS
ロック誕生以降、数多くのバンドが解散~再結成を行ってきているが、成功するためにはノウハウが必要。
私も過去にロックバンドのマネージメントをし、数年後に再結成も担当、様々な問題・課題を解決・克服して幸いにも成功を手に入れた。
その時に参考になったのは私がこれまでに見て・読んでいたビデオや書籍であった。
ここではバンド再結成を担当する読者に向けて、私が有益だと感じた情報をお届けしたい。
【パターン別】どんな再結成なのか?
ひとこと『バンドの再結成』と言っても様々なパターンの再結成があり、それぞれアプローチは異なる。
ここでは再結成の主なパターンを紹介しよう。
期間限定
このパターンの多くは何かの目的があり、そのための再結成である場合が多い。
活動期間を決めている事で全体のスケジュールが決めやすく、集中力を保った活動ができる。
このパターンの多くはもともとのレコード会社やスタッフの協力が十分にあり、再結成の成功率は高い。
<このパターンの再結成例>
■レコード会社創業者トリビュートとして2007年1夜限りの再結成をした英国のバンド”LED ZEPPELIN”
■2011年、東日本大震災チャリティー時に2日だけ再結成した”COMPLEX”
■2012年、東日本大震災の復興支援のために期間限定で再結成した”プリンセス プリンセス”一部メンバー限定
オリジナルメンバー全員ではなく、一部のメンバーがバンドの名前を使ってバンド形式で活動を再開するパターン。
物理的に参加できないメンバーがいる場合もあるが、時には他メンバーの承諾を取らずに活動を始めてトラブルにばる場合もある。
<このパターンの再結成例>
■2020年 米国のバンド”ジャーニー”はメンバー間でバンド名の使用権で争い、現在は別のメンバーを入れて活動再開した
■2016年 米国の”ガンズ・アンド・ローゼズ”はオリジナルメンバー3人で再結成。他パートはサポートミュージシャンによる。オリジナルメンバーによる再結成
死別など物理的要因を除いたオリジナルメンバー全員による再結成のパターン。(活動期間中のメンバーの脱退・加入などもあり、どのメンバーを指すかは流動的であるが、その場合は主に第1期、第2期などと称される)
活動期間や条件などの制限を設けず、解散した当時のメンバーで再び活動を再開させるパターン。
期間が長いので、全国ツアーなど活動エリアが広く、ファンからの支持率も最も高く、再結成の成功率は高いが、思うような活動ができていない場合もある。
<このパターンの再結成例>
■1996年 米国バンド”KISS” 17年振りにオリジナルメンバーによる再結成。その後2人のメンバーが脱退、後任メンバーを入れて活動を継続。
■2007年 ”JUN SKY WALKER(S)”が再結成。※当初は当初は期間限定の予定だったが、東日本大震災の復興に”何かできないか”と無期限での活動再開。
■2016年 ”THE YELLOW MONKEY”がオリジナルメンバーで再結成。
プロで活動する<バンド>のメンバーは契約書ではどう考えられるか?
アマチュアだったバンドがメジャーレーベルから作品をリリースし無事プロデビューを果たした場合、(規模は様々であるが)グループのほとんどはいずれかの音楽プロダクションとマネージメント契約をする場合が多い。
スケジュール管理、ギャラの管理、音楽著作権、マーチャンダイジングなど、プロらしい活動のほとんどはこうしたプロダクションか、プロダクションが発注した業者によって成り立っている。
そんなプロダクションとバンドの間にはアーティスト活動に関する契約書が必要だ。一般的な契約は相手と自分を指す「甲」と「乙」という言葉を使うが、バンドとの契約書でもこの言葉を使った場合、仮にプロダクションが「甲」だとするとバンドは「乙」となるが、ここに問題が発生する。
会社は法人格なので、会社名義で契約できるが、バンドの定義はどうなっているのだろう? メンバーが1名欠けた場合でも「乙」と定義できるのだろうか?
そこで、バンドをどう定義するか?という問題を解決するために「構成員」という言葉を使う場合がある。メンバーそれぞれをバンドのピースと捉える考え方である。 プロダクションはバンドと契約するが、バンドはメンバーチェンジでの脱退・加入もあるので、看板としてのバンドと契約するのである。これは、バンドを複数のプロダクションに所属するメンバーで結成している場合などにも用いられる解釈で、最近では○○46などの女子グループも複数のプロダクションに所属しているメンバーで構成されている場合が多い。
バンドと契約したプロダクションはメンバーとは構成員としての契約を結ぶことでバンド全体のマネージメント権を行使できるようになる。
海外グループでのメンバーの契約はどうなっている?
海外のバンドの場合、「プロダクション」「バンド」「メンバー」「構成員」などの関係性はどうなっているのか? その答えは私が担当するバンドの再結成になる前から私はこの本で手に入れていた。
私自身がKISSを好きという事も関係するが、KISSというバンドは『音楽』『ルックス』『グッズ』『ライブ』など、エンタメ・バンドとしてのすべての要素で楽しませようとしている360°なバンドで、その中心人物であるジーン・シモンズが書いた自伝で1996年のオリジナルメンバーによる再結成の内幕も書かれており、非常に参考になった。(興味ある方はぜひ購入してお読みください。詳しい説明はここでは行わないことをお許しを!)
まず、海外と日本ではマネージメントのやり方・考え方に大きな違いがある。
海外はアーティスト側がマネージャーを選び、決定権もアーティスト側が持つ。アーティストがNOと言ったら絶対NOなのである。(ゆえに来日公演で気分が乗らないから舞台に出てこないなど伝説が多い)
しかし、個人事務所の場合は別だが日本はプロダクションとバンドが契約するので、プロダクション側から契約書が提出され、アーティストがそこにサインする。なので、プロダクションの社長が偉い人となる。
なので事務所の意見が大きくなる傾向がある。
一般的にバンドの中心メンバーは元々のプロダクションに残っている場合が多く、そうでない場合も再結成後の活動の中心になるプロダクションに所属している場合が多い。
再結成はこうした中心になるプロダクションが全体をコントロールし、契約条件を決め、書面でも締結などを行う場合が多い。
一方、途中脱退したメンバーや、解散後の他のメンバーは他のプロダクションに所属して活動を続けているか、プロの音楽活動は止めて別の道に進んでいる場合がある。その場合は再結成をオファーしてきた中心プロダクションが出してきた条件を交渉し、締結することで契約上はバンドが再結成するのである。
この本を読むと楽曲の著作権以外にも「バンドの命名権」「メイクの権利」「バンドロゴの権利」など、多岐にわたって権利を定義していることが分かった。(日本でどこまで定義することが必要かは置いとくが)
感心したのはメンバーの家族へのケアも契約に含まれ、ライブゲストの規模やギャラの支払い方法なども細かく定義され、ライブを飛ばした場合はファイトマネーは受け取れない仕組みができている。
こうした事前に様々な項目を契約することでトラブルを未然に防いでいるのがアメリカのビジネスなのだが、一方の日本はこうした細かい項目への契約が無く、小さいトラブルになる場合が散見される。
時間があったら一読されることをお薦めするが、中盤のジーン・シモンズのワールドツアー時の世界各地でのお色気話は何も参考にならないので割愛すると早く読み終えることができる。(ジーン・シモンズはプレイボーイと言うより女子ならなんでもOKらしく、恋話として読むほどでもないのである)
<バンド結成>と<再結成>の違いは?
バンドがプロとして活動する際に<バンド結成>と<再結成>にはいくつもの大きな違いがある場合が多い。読者はお分かりだろうか?
先ほども書いたメンバーの構成員としての違いがある場合だ。解散後もメンバー全員変わらず同じプロダクションである場合は問題ないが、別のプロダクションや音楽を離れていた場合、再結成時にどう契約できるのか?
他プロダクションと契約しているメンバーは再結成を進めているプロダクションとの二重契約をしても契約違反とならないか?(たぶん専属契約となっており、二重契約が無理な場合がほとんど)。
現在、どこにも所属していないメンバーはプロダクションに所属する必要があるのだろうか?(期間限定の再結成の場合、主となるプロダクションがアーティスト契約をしてくれる可能性は低い)
もし、個人で活動しているのであれば勝手もわかるだろうし、契約などの事務手続きが自分で出来ればおそらくどこにも所属しなくて問題ないだろう。
しかし、一度シーンから身を引いている場合は色々と確認事や準備が増えて来る。
会社勤めなど、組織に入っている人の場合は退職して再結成に参加するのか? もしくは副業がOKか?
以前使っていたような頑丈なツアーケースに入った何本ものギターやアンプなどをまだ持っているのか?(物が大きいだけに保管するにも限界があり、いくつかの愛用品を手元に残し、ほとんどの機材を手放している楽器が多い)
バンド結成から徐々に増えてきた機材は倉庫で管理・保管しているが、解散と共に各自の手元に戻されるが、大型のギターアンプになると大型冷蔵庫ほどの大きさになる。そんな大型機材や数10本のギターなどを家に入れるとなると置き場所確保の問題などもあり徐々に整理され手元から離れていく。
ドラマーの機材はもっと大変だ。自転車のタイヤほどのサイズの丸いケースに始まって、いくつもの丸いケースとスチール製で重量がある何本ものスタンド類。これが何セットも自宅に戻ってきても、部屋で叩くわけにもいかず、ケースにしまったまま積み上げられ、部屋の大半を占める事となる。(知り合いはスネアスタンドに電気がまを乗せてキッチンで使っていた。あれは良いアイディアだと思ったが・・・)
再結成か否かはこのような差がある。そして、多くの人が考えてしまうのが、解散時まで戻ろうとすることである。
これまでに再結成したバンドの同行を見ているとビジュアル、セットリスト、機材など、解散当時のイメージに近づけるバンドが多い印象だが、手放してしまった機材などがあるとまたそれを用意する苦労もあり、どこまで当時を再現するのが良いのか?悩みどころである。
以前はメンバー全員が同じ契約条件だった関係が、時間が経ち”それぞれの立ち位置”が変わって集まる事になるのが再結成である。
再結成に向けて契約関係はどう進めるのがよいのか?
バンドとしてステージに立つための準備はどう進めればよいのか?
その期間中のメンバーの心境はどうなのか?
私が参考にしたのはこれもKISSだった。
秘密裏に再結成を決め、準備を進めワールドツアーを行ったメンバーを追ったドキュメントはバックステージ、メンバー自宅、リハーサルスタジオなどでも撮影されたドキュメントとライブで構成されておりファンとして鑑賞すると楽しいが、再結成を目指す関係者として観ると参考になる事が多い。
特にKISSはメイクや衣装などの視覚的要素や、ライブの演出など演奏以外のステージでの演出要素が多く、解散から時間が開いているギャップをどうやって埋めるのかという視点で見ると吸収できるものが非常に多かった。
ショックだったのはオリジナルメンバーのギタリストであるエースはギターを弾かない時間が多かったようで、思うような演奏ができない状態であった。このままではステージに出すこともできないので、考えられたのが、KISSのトリビュートバンドのメンバーであるトミー・セイヤーがエース本人にレッスンするという方法である。
エースにしてみれば、まさか自分がレコーディングした曲の演奏方法をトリビュートバンドのメンバーから教わるとは思ってもみなかっただろうが、こうでもしなければいけないほどエースの腕前は落ちていたのかもしれない。
のちにまたもエースがバンドを脱退。何人かの後任ギタリストの後、トミーがKISSに参加している。
このドキュメントは2000年に発売された作品なので現在は生産中止となっているが、中古であればむしろお手頃価格で入手できるようなので、興味がある方はぜひ。
バンドの再結成に興味がある方はこちらもどうぞ!
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