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長年書道を学んでいたにもかかわらず、なぜキレイな字が書けないのか

「書道〇段だけど硬筆では整った字が書けず、書道経験を隠すようになった」
「お手本があれば上手に書けるけど、手本がないと書けない」
「お稽古をやめたら元の字に戻ってしまった」

という声は意外と良く聞かれ、

「習字は習わせても意味がない」

と言う人さえ居ます

私は8歳から40年以上、書道を学んでいます。
高校生くらいから「書道やってるんだよね。ちょっと書いて」と言われるようになり、全く思うように書けないことに衝撃を受けました。

1. 文字を書くということ

文字を書くということは、脳にインプットされた字形イメージを筆記具を使って紙などにアウトプットすることです。

2. 習っていたのに書けない3つの理由

(1)  手本をコピーするだけの練習をしていた

毛筆を学ぶ時、私はただ手本を模写(コピー)していました。

子どもの頃から「お手本をよく見て書きなさい」という先生の言葉そのままに受け取り、手本にある線画の出る位置・長さ・角度などを都度一生懸命正確にコピーして、目印をつけ、その場限りでお手本そっくりな字を”見て書く”よう心掛けていました。

そして先生に褒められ、上手に書けた!と喜んでいました。

模写する学習が間違っているわけではありませんが、それだけでキレイな字を書けるようになるにはとても時間がかかりますし、結局書けるようにならないケースも多いです。

例えば動物の絵を書く時、絵や写真を見て書いた場合と、何も見ずに書く場合では全然違うと思います。

頭の中にイメージとして定着しているか。
「こんな感じ」という漠然としたイメージしかない人は、”こんな感じ”の字しか書けません。

私が長年やっていたのは「模写」だけでした。
何も考えずに写しているだけでなく、キレイな字を書くためには頭を使わないといけないんだと気づいたのは、かなり後になってからのことでした。

漠然とお手本をコピーしていただけなので、お手本がなければ上手に書くことはできず、応用も効かないので、日常では思い描くような字を書くことはできませんでした。

身に付いたのは、「それっぽい字が書けること」と「模写力」だけでした。

(2)  筆記具の違いを理解していなかった

硬筆・・・ペン先が固く、一定の太さや濃さで安定した線を書くことができる。文字の骨格のみを書く。
毛筆・・・動物の毛を束ねたもの。弾力があり、線の太さや強弱に変化をつけられる。文字の骨格に「肉づけ」を加え、運筆の勢いや動きを表現する。

筆記具の性質が異なるので線質(太さや強弱)も異なります
線質が異なるということは、間隔やバランスの取り方も変わってくるということに気づいたのも大分あと。

(3)  字を書く時に使用する体の部位の違いを理解していなかった

毛筆と硬筆は、「字を書くこと」というカテゴリーでは同じですが、厳密には別物だと考えています。

硬筆・・・手・指を動かして書く。腕・肘は付く
毛筆・・・腕・体全体で書く。腕・肘は付かない

脳に正しい字形がインプットされていても、思うように手指が動かせないとイメージ通りの字をアウトプットすることができません。

ペンの持ち方については、一般的に教科書なので提示されている持ち方がベストですが、これでなければキレイな字が書けないというわけではないと思います。
ただ、指がしっかり使えていることは大切です。

3.毛筆から硬筆に生かせること

「習字を習っても字はキレイにならない」という人も居ますし、習字を習っていたからといって皆ペン字もキレイに書けるわけではありませんが、当然身に付くこともあります。

(1)  正しい字形をしっかり学べること

毛筆は一画一画ゆっくりと丁寧に書きます。
一字一字大きく丁寧に書くことにより、正しい字形をしっかりと脳にインプットすることができます。
(※ここでお手本コピー作業のみをしてしまっている人は脳にインプットされていない可能性があります。←私
ちゃんと教えてくれる先生に習いましょう。)

(2)  筆圧やリズム、強弱

毛筆では線の太さや強弱に変化をつける必要があります。したがって、毛筆経験者が硬筆で字を書くときにも自然と線にリズムや強弱がつきます。
このリズムや強弱はペン字にも表れます。
文字にリズムや強弱があると、メリハリがつきますし、人間らしさが感じられ、その人らしい魅力ある文字になると思います。

(3) 筆脈・気脈

毛筆では線の繋がりなども意識して学びます。
この筆脈や気脈は硬筆にも表れます。
筆脈や気脈があることで、文章に一体感が生まれ、美しく見えます。


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