NHKラジオニュースで短歌が読まれました
昨晩放送されたNHKラジオニュース『NHKジャーナル』にて、僕の短歌が紹介された。ありがとうございます。嬉しい〜。
真偽を確かめたい方はこちらから。およそ31:06あたり。8月31日まで聴けるそうです。
この『ニュースで短歌』のコーナーは、歌人の枡野浩一さんが選者となって、投稿された短歌の中からいくつかを抜粋して紹介していくもの。今回初めての投稿だったが、応募総数190首の中からありがたく採用していただいた。ありがとうございます。ビギナーズラックは本当にある。
短歌を紹介していただいた後に、選者の枡野さんから評をいただく時間がある。ありがたい。そこでのやりとりが印象的だったので、文字に起こしてここに書き置く。
キャスターの菅野真美恵さん、岩本裕さん、歌人の枡野浩一さん。その3人によるやりとり。以下敬称略。
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菅野「続いては、鈴木ジェロニモさんの作品です。『首振りに遅れてやってくる風をすこし迎えにいくくらい夏』。」
枡野「これはちょっとね、分かりにくいんですけれども。たぶん、首振りの扇風機だと思うんですね。」
菅野「はあ、扇風機。」
枡野「扇風機の首振りの風が、ちょっと、なんかまどろっこしいから、自分から顔か何かで迎えにいってるみたいな気持ちの短歌だと思うんですけど。この短歌のポイントは、『迎えにいくような夏』とかだったらすごいつまんないんですよね。」
菅野「ほお。」
枡野「『迎えにいくくらい夏』っていうところに、何か夏らしさというか、能動的な感じが出ていて、良いと思いました。」
岩本「これ首振りをやめちゃダメなんですかね?」
枡野「なんでしょうね。これでも、ちょっと状況が分かりにくいところもあると思ったんですけども。でも何となく、面白味があったので、選んでしまいました。」
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枡野さんの評が見事に全てを言い当てている。
枡野さんはリスナーの目線に立って「分かりにくい」と見方を提示してくださっている。コントのダメ出しでも「何となく面白味は伝わるんだけど、分かりにくい」と作家さんから言われることが多々あるので、この評が鈴木ジェロニモの全てであると言っても過言ではない。
初投稿にして手の内が全てバレたような、丸裸にされたような感覚。僕はラジオを聴きながら「そうなんですよねー、すみません」と虚空に謝っていた。そしてふと、自分について考えた。
そもそも「鈴木ジェロニモ」って何だ。変な名前。どんな人間なのか全くわからない。お前は誰だ。
自分で自分が怖くなり始めたので思考を放棄し銭湯に行った。銭湯の脱衣所には巨大な扇風機があった。黒いボディにオレンジの羽が回っていて、ひまわりの化け物に見えた。
その扇風機は脱衣所にいる全ての利用者に向けて設置されているため、右へ左へ大きく首を振っていた。暑がりな僕は扇風機に近接して首振りを止め、涼風を独り占めしたいと思った。しかし自分勝手に首振りを止める人間として近所の銭湯で名を馳せても構わず通い詰められるほどのド根性と肝っ玉はあいにく持ち合わせていなかった。
アンバランスな心と体が出した結論は、扇風機の首振りから涼風が来るタイミングを読み、わずかに顔を動かしてすこしでも風を浴びる時間を増やすというものだった。これなら他人に迷惑をかけることなく涼風を満喫できる。我ながら名案と言わざるを得ない。その銭湯ではしばらくの間、巨大扇風機と扇風機に合わせて首を振る男が同時に観測できるだろう。
他者と自分の折衷点を探るうちに「分かりにくい」行動をとっている。それが鈴木ジェロニモという人間なのかもしれない。自分で自分が分からない人間にとって、他己分析は何よりの救いである。この流れで触れるのもよく分からないが、改めて、この度は僕の短歌を採用していただき、ありがとうございました。
首振りに遅れてやってくる風をすこし迎えにいくくらい夏/鈴木ジェロニモ
大きくて安い水