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ジャニー喜多川の膝の上: ファンの責任とジャニーズJr.というビジネスモデル

テレビ初登場!の謎
昭和の頃の歌番組で不思議だったことがありました。観客を入れる歌番組にデビュー直後のアイドルがテレビ初登場!や番組初登場!で出演したとき、デビュー直後なのに熱狂的なファンが既に沢山いたんです。人気ものになりそうなタレントだからデビューできるわけであって、デビュー時点のアイドルはこれから人気が出るはず。なのに、はためにも常軌を逸して夢中なファンがデビューのタイミングで大勢いるのが何故なのか分からなかった。

それが、ジャニーズ事務所関連の情報が色々と明らかになってやっとわかりました。10月2日の社名変更会見でのジャニーズファンというジャーナリストの方の質問/発言で、ひととおりなにが起きてるかが説明されていました。
「いろんなグループのファンクラブに入っておりまして」
「ジャニーズのスターシステムは応援システム」
「ジュニアが成長するのをファンが支える」
「ファンが手紙を出したりリクエストしたりしてデビューしていく」
「ジャニー(喜多川)さんが気に入った人が全員デビューしているわけではない」

要は、ファンがジャニーズJr.の子たちをファンクラブ会費などによる費用負担で勝手に育てるのがビジネスモデルなんですね。

育成ビジネスモデル
まとめるとこうなります。
① アイドル志望の男の子たちを大勢集める。レッスン料はなし。
② ジャニーズJr.のメンバーから、ファンはよりどりみどりでそれぞれお気に入りをみつけて推し始める
③ Jr.の育成費用はジャニーズJr.ファンクラブ会費を充当することが可能で、かつレッスンスタジオはテレビ局が提供してきた時期もあるとの報道も有。なので何十人かを育成のために抱えても事務所の費用負担は限定的(既に黒字?)
④ 放っておいてもJr.の段階でファンが選別・淘汰してくれるので確実に人気の子をみつくろってデビューさせることができる
⑤ デビュー前の時点で既に人気があるので、出演と稼働に関して全ての媒体に対して事務所の発言力が強く、理想的なデビューとなるので一層成功する。
⑥ 多くのタレントが成功するのでアイドル志望の男の子たちが一層集まる → ①に戻る

…原油が湧きだすみたいに、アイドル候補がファンの費用負担で湧いて出て、ファンが精製してくれるとこまでの仕組みが継続するしくみです。育成としてはLDHスクール(とか吉本興業NSCとか)の場合は授業料を取って教えるので、そこまで洗練されていないですね。

徴税ビジネスモデル
収益面においては複数口のファンクラブ会費徴収が核になっています。ファンクラブ会員に優先的にライブのチケットを販売するシステムで、年会費を税金のように徴収するというのは、他のJ-POPでもなんなら国立劇場でもやってることなのでよくある仕組みです。ただ、ジャニーズの場合はジャニーズ事務所のファミリークラブ(=個別タレント分)x複数口+ジャニーズJr.情報局…みたいな感じで複数のファンクラブに入ります。
チケット当選確率を上げるために同じタレントのファンクラブに家族名義などで複数入会するのは理解できるとして、なぜジャニーズJr.情報局に入るかというとジャニーズJr. がバックダンサーなどで出演するコンサートならJr.にもチケット抽選枠があるからです。更に可愛い男児たちの情報が入るので先物買いもできる。
このような仕組みで特盛~メガ盛りで”課税”されるのがユニークなところで、会員数はのべ約1300万口だそうです。毎年4000円x会員口数+Jr.情報局2500円を会費として支払い続けているファンが結構いるわけですが、この仕組み自体に特に違法性はないと思われます。
ファンクラブ会員になってかつ抽選で当選しないとコンサートのチケットを買うことが出来ないというのが現状なので、実質のコンサートのチケット代は年会費総額+チケット代となってしまいます。ただ、米国ではビッグネームのコンサートチケットが少数の良席については定価で1枚5000ドルという例もあり、これもそこまで不当なこととは思われません。

ただ、ここで、ひとつ論点が出てきてしまいます。
ファンの方々の多くはジャニー喜多川の悪業が確定した後もジャニーズJr.に税金を納め、大人数のアイドル候補たちの育成費用を継続的に負担していたことになります。厳密な時期はともかく、在籍が特定できた人数で150人、連絡があった人数で325人(10/2発表数字)という想像を絶する人数の被害者がでています。ジャニー喜多川は自分の膝の上にジャニーズJr.のお気に入りの男児をのせていたそうですが、膝の上の男児を支援しあやし続けていたのはファン達です。
だからファンクラブ会員も加害者!…かどうかは置いておいて、ジャニー喜多川が悪事を続けるためのプラットフォームであったジャニーズJr.を資金面で直接バックアップしていたのがファンクラブ会員だった、というのは言えるんじゃないでしょうか? ジャニー喜多川の男児性加害は、ファンクラブ会員の資金と応援の”おこぼれ”をもらっていた行為だった。

ファンクラブ課税の顛末と展望
…と考えると、平野紫耀/岸優太/岡田准一等 映画俳優で客を呼ぶことが出来て、必ずしもコンサートを活動の中心にする必要がないタレントたちの逃げ足が速い理由も説明できると思います。ファンクラブ依存でコンサートチケットの実質代金を高騰させる以外の活躍の方法がある。

また、ジャニーズ事務所の中で最も人望が厚い井ノ原 快彦をジャニーズJr.の育成に充て、かつ新設エージェント会社の社名はファンクラブ公募というのも、納得できます。ジャニーズJr.+ファンクラブモデルがジャニーズ的なビジネス存続の核になるからなのでしょう。ファンクラブ会員に「次の社名は何がいいか?」と大きな課題を与えて、ファンクラブを辞める/辞めないという疑問を持つ隙を与えないという洗練された作戦です。

繰返しますが、ファンクラブ特盛課税モデル自体には違法性もなければ、不適切なところもありません。ジャニーズ事務所が被害者への賠償を終えて廃業する頃には、いまのジャニーズJr.所属の誰かがまた上記⑤に到達して華々しくデビューするのかもしれません。


【引用】トップ画像は現在ジャニーズ事務所が保有している商標登録検索情報の一部。