「サラリーマンだからこそ『節税大家さん』で儲けなさい!」(加藤隆著、東洋経済新報社刊)

 本書は、サラリーマンという定収入のある環境を活かして不動産投資を手堅く進めるやり方について説いたものである。ここでは、ワンルームマンション投資の有用性が強調されている。

 私はこれまで、ワンルームマンション投資というのは不動産屋が儲けるために作り出したビジネスプランだと考えてあまり考慮していなかったが、この本を読んで少々違ったアイディアを得た。少額なワンルームで場数を踏む、ということである。以下、内容をおさらいしていく。

 まず必要なのは、勉強。勉強を始めると同時に資金準備。ローンで物件購入するにしても急な支出等を考えると、少なくとも100万円は用意しておく。勉強、資金準備、と同時に実際に物件を見に行くという作業を繰り返す。そうしている間に、資金は増えて整っていく、はず。

 物件を選ぶ際、初心者向けの選択方法として5つの基準と言うものがあり、それは、

①自宅近くの土地勘のあるエリア

②駅から徒歩圏

③居住用物件

④新築もしくは築浅

⑤区分所有ワンルーム、

 というものである。この点、新築については多くの経験者が否定的に捉えていて、選択基準として新築を挙げているこの著者自身、新築は殆ど購入していないことに注意。著者が強調するのは、初めての物件は出来るだけリスクの少ないものを選ぶ、ということである。土地勘のあるエリアで少額なワンルームを選べば、リスクはかなり抑えられる。

 著者の基本戦術は「小額物件を数多く購入し、売却をしない」というややユニークなものである。大抵の不動産投資家は、値上がり益が見込める時点で物件を売却する。ごく一部の投資家が、所有し続けることをルールとしているだけだ。これは各個人の考え方によるところも大きいのだろう。個人的には、所有し続ける方が性に合いそうだ。

 初期の物件選択では土地勘のあるエリアを選ぶが、慣れるに従い有望そうなエリアを選んで物件を購入していく。おすすめは人口増が見込める地方中核都市だという。例として札幌市が挙げられており、東西線・南北線・東豊線が交差するエリア、最寄り駅から10分以内、と具体的に説明している。

 さて、不動産投資を進める上でのもう一つのポイントとして面白いと思ったのは、著者はマイホームの購入に否定的ということである。彼が不動産投資を経験してきた中でそう結論付けた、ということのようである。

 多くの不動産投資家が、同様にマイホーム購入には否定的である。マイホームそれ自体は賃料などの経済的利益を生み出さないし、のちのち、金融機関からなんらかの融資を取り付ける際には「借金」という足かせとして立ちはだかるからである。

 その一方で、俗に「ヤドカリ戦術」と言って、マイホームとして購入した物件を賃貸に出し、さらにマイホームとして次の物件を購入していくという戦術もあるくらいだから、すべての不動産投資家がマイホーム購入を否定するわけではないが、ヤドカリ戦術では物件にかかる修繕費などを経費として処理できないなど、デメリットも多い。すなわち、あくまで不動産投資という形でビジネスとして捉えるなら、マイホームは購入すべきではない、ということになるわけだ。

 本書のタイトルにも書いてある通り、サラリーマンにとっての最大のメリットは「節税」だという。

 具体的に言うなら「所得税の減額」だ。給与収入と不動産所得と合算して確定申告が可能で、損益通算することが出来る。

 サラリーマンを辞めて専業大家としてアーリーリタイヤ、あとは悠々自適な毎日、を強調する投資家は多い。専業大家になってみたものの、サラリーマン時代にはほとんど気にならなかった各種税金が高くなり、実際は不自由しているのだが、ブログなどではフリーな生活を満喫しているかのように虚勢を張る専業大家もいると聞く。

 張り子のトラではないが、不動産投資は本来堅実さが魅力のはず。サラリーマンの副業として地味にやる不動産投資もまたいいのではないか、と思う読後感。

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