RX 3章4話 共闘 ♪Up&Up
あらすじ
悪役レスラーRXの壮絶過去 17才の成長物語
1章 病弱な少年は、レスラーの強さに憧れる
2章 事件が起きて居場所を失い、独りで苦悩
3章 ストレスで絶望感に襲われ、精神病院へ
前回はこちら ↓
RX 〜悩める若者への処方箋〜
🟡第3章 ロックボトム 4話 共闘
①
ここは、閉鎖病棟。
病院の出入り口は閉められ、
一般社会から隔離された別世界。
「みなさん食事の時間です」
放送が響き渡り、初めて部屋の外へ出る。
食堂に案内されると、眠気が消し飛ぶほど、
恐ろしい光景を目の当たりにした。
壁に向かってブツブツ話す人や、
体を左右に揺らしている人。
突然、奇声を上げて暴れた男性を、
職員が数人がかりで押さえている。
大変なところに
来てしまったな・・・
患者たちの挙動に驚き、おじ気づいた僕は、
テーブルに着く。
横の人は手の震えでスープがこぼれている。
病院食は味気ないどころか、味がしない。
砂を噛んでいるみたいで味覚を疑った。
食後、彼らは整列して薬を受け取ると、
その場で口に入れ、部屋に帰っていった。
これが日常なのか。
こんな所、一刻も早く出て行きたい。
②
自殺防止のため、衣服のヒモは取られており
ゆるいジャージがずり落ちそうだ。
トイレに行くと、鏡に僕が映る。
死人のような肌色と顔つき、
みじめに変わり果てた姿に意気消沈。
きたえていた体は、筋肉がそげ落ち、
見る影もないほど小さくなっていた。
太かった腕は細く、がっしりした肩幅は狭く。
直視できず、ボサボサの髪をかきむしる。
抜け落ちた毛が、洗面台に降り注いだ。
ちんたら流れる時間を持てあます午後。
娯楽が無いので、
仕方なく新聞を眺める。
"全国の高校退学者数"という記事。
すぐに紙面を閉じた。
未だに現実を受け入れられない。
中退した事も、入院している事も。
こんなはずじゃなかった。違うんだ、
僕は まともだ。精神病なんかじゃないぞ。
そうやって患者たちを下に見ていた僕だが、
気づけば、またパニックになり暴れていた。
③
ある日、患者Aさんに話しかけられた。
「ずいぶん若いね、入院するの初めて?」
一見、健康そうに見えるAさんは、
頭を抱えている僕に優しく助言する。
「精神病院なんて、心が弱い人とか、
頭がおかしい人がいる所だと思ってたけど、
それは偏見で、実際は全然ちがったよ。
みんな一生懸命、たたかってる。
心の病気っていう見えない敵と戦ってるの。
ここに居るのは恥ずかしいことじゃないよ」
僕はハッとして、目からウロコが落ちた。
異常だと決めつけていた世界。
しかし、正常と異常は紙一重だった。
いい加減、現実逃避をやめて認めるべき、
病気という事実。患者の一員である自覚。
みんなも同じだから。
その言葉に苦しめられ、神経をすり減らし、
消耗してきたが、今回は素直に納得できた。
「君ひとりじゃない。一緒に頑張ろう」
差し伸べた手を借りて、僕は起き上がった。
(つづく)
♪イメージソング
落ちこんでも沈みこんでも、時間が経てばまた、自然に浮かび上がれるから大丈夫。
そうやって優しく後押ししてくれる、癒やしや励ましの源は、きっと身近にあるはず。
学校や仕事、家庭、人間関係、そして人生。
アップダウンが激しくて、山から谷に落ちてしまっても、再び上を向ける時が来ますように✨
🟡次回は 3章 5話 真星
8/13(日)に投稿予定です⚠️
↑ インスタもやってます!📷
ご通読ありがとうございました!
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