迂闊にもお受験の選択をしかけた話
小5の次男が、クラスメイトからこんな問題を出されたらしい。
そのお友達は中学受験をするために塾へ通っていて、上の問題も簡単に解けるようだ。
そんなこともあり、
「これどうやって解くの?」と聞いてきた。
解き方がわからない理由を尋ねてみた。すると、
「条件が足りない」とのこと。
「最初に持ってるお菓子の個数がわかってたら簡単に解けるけど。これだとわからなくない?」と。
生きていく過程で、この問題と同じシチュエーションはほぼない。
解けなくても別に問題ないよ、と言いつつも紙とペンで解放を教えてあげた。
長女を小学受験させようとした思い出
このような幼少期の受験。
もちろん、都心特有の受験事情があることも理解している。
でも、個人的には?であり、歓迎しない気持ちが強い。
普通に過ごせば、嫌でも中学卒業のタイミングで受験を経験する。
なによりも、失敗することで、本人の記憶に「劣等感」が刷り込まれること。
こちらの方が酷であり、子どもの人格形成に損失を与えると感じている。
そんな自分も何を血迷ったのか、お受験戦争に片足を突っ込んだことがある。
それは、第一子となる長女が保育園年長のときだ。
僕は東北の片田舎出身で、都内のお受験について何もわかっていなかった。
たまたま、当時住んでいたところの近くに、国立大学附属学校があったこともあり、公立以外の進学に憧れがあったのかもしれない。
もちろん、受験対策など一切してこないままに保育園年中を過ごす。
そして、年長にあがったタイミングで塾を探し、入塾のための面接を受けに行った。
そう、塾に入るためにも、簡単な試験と面接があることを初めて知った。
入塾試験
長女のことを少しだけ話すと、とても内向的でおとなしい気質。
3歳からピアノを習い、本を読むのが大好き。
当時の印象を言葉にすると「穏やか」というキーワードがぴったりのタイプ。
そんな彼女を連れて、小・中学受験専門の塾を訪れた。
簡単な塾の紹介を受け、1時間程度の試験を受けたあと、親御さんと面談しましょうということになった。
長女の試験中、パイプ椅子に座りながら待っていたのだが、内心は問題なく入塾できるだろうと勝手に思っていた。
でも結果は違った。
認められない理由
試験が終わり、長女を別室に残したまま、塾長との面談が始まる。
開始早々、こう言われた。
「お子さんの能力では希望校に合格する可能性は低い。入塾を許可することは、残念ながらできません。」
平たくいうと、力不足。
これまで何も準備をしてこなかったしな。
いや、その背景も織り込んだ上で、受験までの期間、塾で面倒をみてもらえるのでは?と高を括っていたものの、現実は全然違った。
どんな問題が出されたのか?
・能力が足りていないということはわかりました。
・入塾できないことも理解しました。
・具体的にどのような能力が不足しているのか参考までに教えてほしい。
僕は、上のような質問を塾長に投げかけた。
すると、塾長は長女に出した問題文、答案用紙を見せてくれた。
まず、上のような質問を聞く。
そして、手渡されたA4の解答用紙には、右側に驚いている男の子。
左側には大きな空欄があった。
この空欄に「なぜ驚いているのか?」を考えて、絵を描くというものだった。
小さいクラゲを描いて大きなバツ印
塾長は話を続けた。
この問題で、いかにして高得点を取るか。参考までにと言いながら、下のような模範解答を見せてくれた。
海にいる動物で大きなもの。
なかなか見ることができない巨大なクジラやサメなど。
男の子が驚きを隠せないぐらい大きく描くのがポイント、とのこと。
もう1つは、可能性は低いけどあったら衝撃的なもの。
海賊船が沈没し、積んでいた財宝が詰まった宝箱など。
これも表現したいものを大きく描くのがポイント、ということだった。
何もない空白を、自分で考えたストーリーで、とにかく大きく表現するのが高い得点を取るために必要だという。
じゃあ、当時6歳の長女が描いた解答はどうだったのか。
思い出しながら作図したものがこちら。
解答用紙の中央に、ちょっと微笑んでいる小さなクラゲ。
そこには赤ペンで、大きなバツ印が書かれていた。
塾長は続けた。
・まず、自信を持って絵を描いていない点。
・次に、クラゲという小さな生物。
・大きく描いたならまだしも、小さすぎるため驚きを表現できない。
なるほど。模範解答とは程遠い内容だ。
これ以外にも問題はあったが、代表的なものとして、これを提示しながら説明を受けた。
総合すると「入塾は難しい」と。
なぜ小さいクラゲを描いたのか?
面談が終わっての帰り道、長女に聞いてみた。
「あの問題あったじゃん。どうしてクラゲ描いたの?」
その答えを聞いて、僕は、小学受験のための勉強なんて、長女には毒でしかないなと感じたのを覚えている。
・帰省中に祖母と一緒に海に行った
・砂浜に小さなぶよぶよがあった
・それはクラゲで初めて触った
気持ち悪いのと同時に衝撃だった。
だから、解答用紙に小さいクラゲを描いた。
実際の原体験を元にしたストーリーを、長女は長女なりに考えて、あの問題に解答していたのだ。
大人の考えた答えのある問題。
画一的な解答に満点を与える評価。
もし、これに最大限こたえることが、幼児期の入試に求められるとしたら、それって本当に価値があるんだろうか?と思う。反対に、子どもが素直に感じる感性、まだ言語化できない自分なりのストーリー、そうしたものを奪ってしまわないかと恐れてしまう。
こうした経験もあったため、長女にも下の兄弟たちにも、血迷った受験を勧めることもなく、みんな公立小中高へ進学している。
最初の問題の答え
ちなみに冒頭紹介した問題。
答えは6人。
代数を使って教えてしまったけど、他の教え方がわからない…
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