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失恋がツラい理由、その平均期間、そして科学的な乗り越え方

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失恋に関する研究って意外に多い

失恋した苦しみは“今”失恋しているひとしかわからない。「感情移入ギャップ」

失恋関連の学術論文を検索するとけっこうあったりします。おもしろい。でもこれ、考えてみたら人間の本質として、金銭的な損失や社会的地位の喪失を伴うわけでもないのに、なぜこれほど人間は失恋に苦しむのか?というテーマに踏み込まない手はないとも言えます。数多くの文学などの表現フィールドで、これほど扱われるテーマもないほどです。ヒットソングの半分くらいは失恋についだったりしません?(その他は恋愛と人生頑張れ?)

ところで、わたしたちは失恋している最中しか、失恋している感覚や感情をリアルには理解できません。わたしたちは5分後の自分の感覚すら見過うものです。たとえばお腹が空いたとき、レストランで食事をオーダーしすぎたりしませんか?あれはお腹がいっぱいになったときの自分をうまく想像できないからしてしまう行為です。これを感情移入ギャップと言います。


自己概念

失恋関連の論文のなかに自己概念(Self concept)という言葉がでてきます。これは文字通り自分という存在に関する概念です。自分が何者なのか、という概念です。国籍、性、所属、地域、職業、友人、恋人などの関わりや属性が、この自己概念を形成するようそになります。

職場や職業など自分と社会をつないでいる場所もまた自己概念を形成する場です。ゆえに失業もまた金銭的な課題と同時に自己概念の喪失に苦しむイベントです。国や地域も自己概念を形成するものですが、職業や学校、家族、恋人や伴侶よりはゆるい存在です。

いずれにしろ、わたしたちは、自分ひとりで自己概念というものを形成できません。それは陸や島が何も見えない海原にいるようなものです。係留できる場所がないわけです。この「係留」という言葉が、自己概念を理解するわかりやすい喩えです。わたしたちは、自分という存在をとらえるために、何かに自分をつなぎとめる必要があります。

パートナーがもっともしっかり自分というイメージをポジションできる存在

もっとも強力に属することができる他者が“恋人”

なかでも恋人や伴侶は、もっとも自分を世界のなかでポジションさせてくれる存在です。「あなたの居場所はここ」というサインであり、島となるのが、パートナーです。性衝動の解消や共有、経済的な支え、出産などとわかりやすいベネフィット以外にも「世界のなかで自分がいる場所」を作ってくれる存在でもあります。


独り身なら?

パートナーがいない人たちは、自分たちの居場所がないかといえば、もちろんそんなことはありません。パートナー以外の係留場所を見つけて自分という概念を形成します。社会のなかで他者と関わっていれば、生きていれば、係留する場所はあまり困りません。

苦痛は、自己概念の崩壊

失恋による苦痛は、一度形成して安定した自己概念が、パートナーが自分と関わりのある存在ではなくなることで、崩壊してしまうことで生じます。「胸にぽっかり穴が空いたような」という表現を失恋などに関連してする場合がありますが、まさにそのイメージが近い。「恋人や伴侶を失ってツラい」は、言い換えると「自分が何者かがわからなくなってツラい」とも言えるんです。

どうやって失恋から復活できるのか?

苦しみの本質が自己概念の崩壊だということはわかった。では、どうしたらそこから抜け出せるのか?ノースウエスタン大学における研究で失恋からの復活のヒントになるものがあります(※2)。この研究は、失恋したばかりの若い男女210人を対象(よく見つけてきたなぁ)にしており、このような実験をしました。失恋した方々を2つのグループにわけて、定期的に実験室を訪れさせて異なる2つの対応をさせました。

(A)「どんな別れ方をしたのか」「なにが原因だったのか」などを細かく説明する
(B)数回の心理テストを受ける

9週間後に全員のメンタルヘルスをチェックしたところ、(A)のほうが失恋の痛みから復活しやすかったことがわかりました。つまり、失恋から目をそらすより、失恋や別れた相手のことを考え抜いたほうが、失恋から復活しやすくなるということです。

失恋や別れた恋人のことを考え抜くというプロセスが「新たな自己概念の形成」になる

失恋を直視し続けていると「自分っていったいなんだなんだ?」という課題が発生します。なぜ別れることになったのか?何が悪かったのか?という疑問が行き着くのは、「次の自分のイメージ」だからです。いうなれば、故障した箇所をすごく観察するようなものです。「あー、ナットが緩んでいたのかー、それにオイルも古いままだった。タイヤの交換は夏と冬でしたほうが良いな」という具合に、観察は修復につながっていきます。こうして気がつけば、「新しい自己概念」を形成し始めています。これを

自己概念修復(Self-concept recovery)

と言います。具体的には、友人に別れた理由や別れてどう思ったのかなどを詳しく説明する場を設けて、話しまくるというのが実験室の外でできる対策です。聞いているほうがまあまあしんどいので、ごちそうしたり、高いシャンパンかなにかを手土産にして埋め合わせをするとより良いでしょう。

ドン・ペリニヨンこんなに高くなっていたの!?これじゃちょっと高いからボランジェとかで。


失恋期間は10週間(2.5ヶ月)

アメリカ合衆国のノースウェスタン大学の論文(※4)によれば、多くの人たちは、失恋の痛みがやわらぐまで20週間はかかると予測したのに、実際は

失恋から10週間でメンタルが回復した

そうです。


まとめ

失恋に苦しんでいるときには、その辛さを信頼できる友人に喋りまくるのが良いようです。なんにしろ10週間くらいで復活するはずなので、カウントダウンアプリでその日を設定してしまえば、「あと何日で元気になるし、まあいっか」となるかもです。たとえばこんなアプリを使って。


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参照

※1:Who Am I Without You? The Influence of Romantic Breakup on the Self-Concept (2009)

https://www.researchgate.net/publication/40686681_Who_Am_I_Without_You_The_Influence_of_Romantic_Breakup_on_the_Self-Concept



※2:Participating in Research on Romantic Breakups Promotes Emotional Recovery via Changes in Self-Concept Clarity



※3:Facing a breakup: Electromyographic responses moderate self-concept recovery following a romantic separation


※4:



※5:

https://yuchrszk.blogspot.com/2016/12/blog-post_19.html

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