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なぜ、栄養価の高い食事は、人間の背を高くするのか?

健康に役立つエビデンス

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わたしたちはどんどん背が高くなっている

1914年から2014年の100年のあいだに、韓国の女性の平均身長は20cm以上伸び、イランの男性は16cm以上も背が高くなっています。食べ物の質が良くなるにつれて、人間の身長はどんどん伸びてきています。(狩猟採集生活をやめて農耕生活を始めた結果、人間は背が縮みました(※1)。しかし、体がどのようにして栄養の量を感知し、その情報を使って成長を指示するのか、正確にはわかっていませんでした。

英国と米国の大学の研究により、このプロセスを司る脳内の受容体が特定されました(※2, 3)。

これらの研究によると、メラノコルチン3受容体(melanocortin 3 receptor、MC3R)は、成長と性的発達を制御する重要なホルモンを放出する役割を果たしています。サー・スティーブン・オラーリー(Stephen O'Rahilly)教授は、
「ホルモンは、私たちはここで素晴らしい生活を送っている、食べ物もたくさんある、だから早く成長して、すぐに思春期を迎え、たくさんの赤ちゃんを作りなさい、と体に伝えているのです」とBBCの取材に対して語っています。


せっかちな遺伝子が子どもを作れと催促している

つまり、良好な環境なのだから、さっさと成長して、思春期を迎えて、恋をして子どもをどんどん産んじゃえ!という遺伝子のわがままが、わたしたちの身長を伸ばしているということです。オラーリー教授の説によれば。心の成長なんかは、遺伝子には関係はないようです。遺伝子の都合には、知恵を絞って振り回されないように工夫していくほかなさそうです。

身長が低くて思春期が遅い人の原因

研究チームは、英国の50万人の遺伝子情報を調査し、MC3R遺伝子の2つのコピーのうち1つに変異があり、受容体が正常に機能していない人を特定しました。これらの人々は、これらの変異を持たない人々に比べて、平均して身長が低く、思春期の開始も遅かったのです。ある参加者は、MC3Rの遺伝子の両方に珍しい変異があることがわかりました。この人は、「とても背が低い」と表現され、20歳を過ぎてから思春期を迎えたという。

この受容体の機能の発見は、人間の成長を説明するだけでなく、成長や思春期に遅れのある子供たちを助けることにもつながる可能性があります。オラーリー教授は、MC3Rを活性化する薬剤の研究が、慢性疾患による筋肉の減少に悩む人々を救う可能性さえあると述べています。


参照

※1:ユヴァル・ノア・ハラリ(著)『サピエンス全史』


※2:Scientists discover how our brain uses nutritional state to regulate growth and age at puberty


※3:The long story on melanocortin regulation of growth and age at puberty: how we did it


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