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AppleCARの開発PJが停止/解散へ

各種メディアでも報じられていますが、Appleが独自に開発を進めていたApple-CARの開発を取りやめるとのことです。
車内体験の高度化において期待が大きかった本件ですが、自動運転とEVの両取りを狙っていたところ、環境激変と社内抗争に耐えきれなかったようです。
これまで積んだ知見を含め、どのように他社と組んでいくかは注目が集まりそうです。

1;Apple-CARのPJ停止

 Bloombergによると2/27にAppleは社内の幹部会議で自動運転EVの開発を中止する決定を下したとのこと。PJは[Titan]と名付けられて2014年から秘密裏に進められ、一時期5000人の従業員がアサインされていた
 この10年にわたって[EV=Tesla主導での開発/市場投下加速][自動運転=Waymoなどによる実証加速]など、環境が激変してピボットを繰り返してきたが、Bloombergによると1月にも[PJ責任者が経営陣/取締役会から、何かをより早く市場に投入する方法を見つけるよう圧力を受けている]と。
 
 PJ中止の決定は大手OEMによるEV投資の修正/自動運転への目線の厳しさが進む中で実行。Appleの自動車分野参入は[デバイス販売停滞][サービス規制強化]の中で新しい事業の柱とすべく進められていた
 PJは現在作業をすべて中止しており、アサインされている数百人は別部署/PJに振り替えられる予定。従業員の一部はアップルの生成AIプロジェクトに異動、その他は[社内の他の役割へのアサイン]に向けた90日の猶予を提供(見つけられなければ解雇)

2;PJ-Titanのこれまで

 Appleは他社にプロダクト先行を許して市場を形成させつつ、デザイン/物流の強みで市場を掌握するのを得意とするがEVに関しては失敗したといえる…
 市場関係者によると[自動運転とEVの両方を狙っていて優先順位付けしなかった]ことが失敗要因。EV撤退後のAppleの重点項目はおそらくVisionPROになるとの推測もされている

これまでのEVに関するAppleの歩みは下記の通り
(2013年)
Appleの経営戦略‣M&A担当者がTeslaのイーロンマスクと複数回会合を持って買収検討をしていると報じられる
(2014年)
密かにPJ-Titanを開始し、OEM/車内から人材を集めて1000人規模のチーム編成すべく権限移譲が為された(クックCEOはBMWの施設訪問したとも)
(2015年)
報道各社は[自動車専門家の雇用][ミニバンEVを開発中][Fordのコンセプトカーのデザイナーを雇用][PJ向けの建物の発見(Code;SG5)]等を報じた
BMWの[i3]におけるEV技術/自動運転技術の利活用について協議が行われ、PJ人員規模は年後半に600名程度まで増加。WSJは[Appleは2019年を出荷目標にしている]と報じた
(2016年)
不協和音がPJ内で広がり、[進捗状況/人材雇用に関してTopが不満]と報じられ、出荷目標も2年後退して2021年になるとされた
FTが[マクラーレンへの買収提案]を報じ、Team人員数も数百人を削減。社内リソース活用から車外リソースの取込に舵を取ったとされる
(2017年)
CA州陸運局から自動運転試験許可を取得、クックCEOも自動運転の取組を認めて自律システムの確立に重点を置くと表明するも、EVについては言及を避けた
従業員向けの自動運転シャトル運行計画や、独自のLidar開発を通じた[優先順位の変化(EV<自動)][出荷期限の再変更]が社内でなされるとの報道も
(2018年)
自動運転試験車両は拡大、チーム人員規模も5000名に拡張。8月にTeslaのDug Field氏を採用したことで自社製造に舵を取ったと報じられた
(2019年)
200人以上の解雇して事業効率化を進めつつ、6月に[Drive.ai]を買収。しかし自動運転車両数は縮小。
(2020年)
COVID-19の影響で報道は殆どなくなったが、EV新興[Canoo]の買収/投資の可能性について協議を開始するも物別れに
年末にReuterが[画期的なバッテリー技術を搭載した乗用車の製造を計画している]と報じた
(2021年)
韓国メディアが[HyundaiにApple-Carの製造を申し入れ]と報じ、両社とも協議の事実を認めた(Kiaが製造パートナーへのアプローチを開始)
AppleCarのLiB調達に向けてCATL/BYDとの協議を開始、[安全な自動運転機能をコアとしてPJを再編成し、単独展開を進める]と社内決定をしたとされる
(2022年)
年末までに[ハンドル/ペダルの無い完全自動運転車の実現が不可能]と認識を変え、[高速道路のみでの自動運転車]に軸足を移した
(2023年)
CA州での自動運転実証を進めるも、多くの幹部は[Apple Car開発の見通しが無くなった]と述べているように社内ではPJの実行力/訴求力が急減
(2024年)
社内でのPJに対する風当たりは強くなり、取締役会/経営幹部によるプレッシャーがかかり始め、決断を迫られたとのこと

3;その他

 PJ-TitanはOEM出身者(多くは幹部クラス)がリードし、かつてはCanooとの受託製造/IP利用/人材登用などで連携しようとしていた。一時期はTesla/Ford/GM/BMWなどから人員を引き抜いてPJ推進、Hyundai/Kiaとの連携も模索していた

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