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米中貿易協議の部分合意(1910)について

 先週末に米中貿易対立に係る閣僚級協議が行われ、部分合意が為されました。本件合意は米中両国が手の付けやすい部分に終始した印象がありますが、自分が属するICT業界(通信キャリア)への示唆といった観点からはキャリア/端末メーカー間の価格交渉力のバランス変化をもたらしうるファクターがあるのではないかと思っています。

【今回の合意について】
<サマリ>
・米中両国は貿易交渉の[第1Phase]につき、部分的な合意を締結。従前の協議で隔たりの大きかった[産業構造改革]等の根本部分は先送り、農産品/通貨政策といった[即効性/PR力/手の付けやすい]分野での妥結を優先。構造改革/ICT分野などの深い問題は継続。米側は「今回は第1Phaseで次Phaseに早々に取り組む」としており、次段階では相当に難交渉となる想定。
 └米国;制裁関税の引き上げ見送り(10/15予定分)/為替操作国の指定解除を検討開始
 └中国;米国産農産品の輸入を拡大(400-500億USD規模)/通貨政策の透明化
<合意の背景>
・農産品は米中両国ともメリットが見出しやすい分野で、第1Phaseとしての打ち出しが早期に可能
 └米国;トランプ大統領の支持基盤である中西部への恩恵
 └中国;豚コレラ等に起因した穀物価格高騰の中、比較的安い農産物アクセス拡大で習指導部への不満を緩和
・通貨政策も両国の景気失速懸念に対して即効性/PR力があると認識された
 └米国;製造業景況感指数の悪化(10年ぶり水準)
 └中国;貿易摩擦の長期化に伴う成長率悪化懸念
 *米政権は8月に中国を為替操作国に認定

【ICT/デジタル分野/他】
・中国の産業構造改革/Huawei制裁の緩和といった分野では合意に至らず。当該分野は米中双方が本丸としてとらえるところで、解決は長期化(不可能??)と想定される
 └米国:[中国製造2025(先端Techで米を追い越せ)]政策を諦めさせたい
 └中国:産業補助/国有企業優遇などの分野は国家原則にかかわる部分で[内政干渉]には強く反対
・Huaweiへの制裁緩和もトランプ大統領は「貿易戦争の終結はもうすぐ」とするが、先送り。上記事案のカードとして最後まで取っておく可能性が非常に高い

【本件の影響】
・第1Phaseの部分合意である点には留意必要で、12月の関税引き上げにSPなどのデバイスが含まれているため、発動に向けたデバイスメーカー各社の動きには注視必要
 └生産の東南アジアシフト(中国→ベトナム等)
 └各社が在庫確保(Xmas商戦/調整分)に走るところ、キャリアによる一定発注で価格交渉力を強化
 └中国製端末の引き受けによる価格交渉力強化(=他キャリア優位性の保持)
・今後は下記の残課題を如何に捌くかによるが、香港問題やチベット問題などがくすぶる中で事態は流動的…更に不確実性はさらに増したとも。
 └米→中;1215からの追加関税措置/IPR保護措置
 └中→米;Huaweiへの制裁緩和/中国企業へのアクセス拡大
 └米/中;協議枠組みの制度化

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