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バッテリーリサイクル新興;Cylibの高効率リサイクル事業化

バッテリーリサイクル企業に注目が集まる昨今ですが、ドイツ発祥でリサイクル効率90%をたたき出す新興;Cylib社がPorsche-VCのリードで5500万ドルを調達しました。
同社はドイツでも有数の資源系大学からのスピンアウトでエネルギー利用の少なさも売りとし、今回の資金で本格加工拠点の建設を行うとのことです。

1;Cylib社による調達

 5月初めに、バッテリーリサイクルを手掛けるCylib社がSeries-Aで5500万ドルの調達に成功。Porsche-Venturesリードで、他にはBosch-Ventures/Deeptech&Climate-Fund/NRW.Ventureなども参加
  調達資金でドイツ西部のアーヘンに加工処理施設を建設し2026年に稼働させるとともに、チームの業容強化に用いられる

 Cylib社の共同創業者/COOのGideon Schwich氏は下記のようにコメントして技術の可能性の高さを強調
 -[Seedで760万ユーロを調達して実験施設を建設、そこではEVバッテリーパックを1日1個(300-600Kg)リサイクルすることが可能となっている]
 -[バッテリーパックはTeslaでは300Kg、Porscheでは600Kgの重量となっている]

2;Cylib社とは

 Cylibは、バッテリー搭載モビリティ(EV/マイクロモビなど)や製造スクラップから重要鉱物を競合より30%低いエネルギーで回収可能
 創業者のLillian Schwich氏はバッテリーリサイクルで有名なRWTH Aachen Universityで10年近く資源抽出/循環方法について研究。当社技術での[リサイクル効率は90%以上]で、リサイクルプロセスの環境フットプリントも競合他社に比べて30%削減可能とのこと

 創業者のSchwich氏は抽出した重要鉱物の品質向上(バッテリー耐用レベル)に強みを持ち、この部分での付加価値提供に尽力するとのこと
 -[抽出原材料をすぐに新しいセル製造に利用できるわけでなく、複数ステップが必要となるためパートナーと組んで研究している]
 -[将来的に正極活物質を再利用品から生産する計画はあるが、当面の重要事項ではないと認識している]

 リサイクル原料の調達にむけてCylib社は自動車OEM/Tier1/リチウム精錬所などと関係を構築/強化に動いている。特に中古EV/EV製造過程で排出されるバッテリーのスクラップ/使用済み品へのアクセスは優位性に繋がる

3;バッテリーリサイクル

 多くのOEM/VCがバッテリーリサイクルに注目するが、本当に期待するのは[将来的な正極活物質の生産計画]にあるといわれる
 バッテリーの中でも正極材部分が最も価値が高くマネタイズしやすいため、投資家は[バッテリーリサイクル/材料精製を超えて正極材の再生まで踏み込む]べきとする。ちなみに現段階でリサイクル企業は[スクラップなどから重要鉱物抽出]→[中国などアジア諸国に輸出]→[アジアでの加工品は完成品メーカーに返送]という流れを取っている…

 投資実績/知見を持つTDK-VenturesのMDであるAnil Achuta氏は
 -[バッテリーリサイクルのの原料拠出/能力はニワタマ問題となっており、生産/加工能力が無ければ原料調達が困難となっている]
 └TDK-VはCylibの競合たるAscend Elementに2021年に投資し、能力構築/原料購入に多額の資金を投下することを後押ししている

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