急速充電がLiBに与える影響は普通充電と変わらず
長らく急速充電はEVバッテリーの劣化速度を速めてバッテリー寿命を短くするといわれてきました。
今回、米国調査会社が調べたところでは急速充電と普通充電でバッテリ劣化に大きな差はみられず、むしろ急速充電のほうが劣化は進まなかったとのこと。もちろん走行環境や頻度にもよると思いますが一つの示唆というか結果として共有します。
1;SuperChargerのバッテリーへの影響調査
米Recurrent-Autoが米国のTesla12,500台以上のデータを分析、急速充電/普通充電の違いによる劣化影響を精査。劣化度合いはほとんど変わりなかった
今回はSCを使用して90%以上充電したModel-3(A)と、SCを10%しか使用せず充電したModel-3(B)で、バッテリー劣化に統計的に有意な差は見られず
-(B)は(A)に比べてバッテリー容量が減少(=航続距離減少)していた
-Model-Yでも同様の結果が得られた
従来、急速充電の最大懸念は理論的に[エネルギーを過大/急速に車に送り込むことでバッテリーを損傷する可能性があること]だったが、事実は逆だった
Recurrent-Autoは15,000人のEVドライバーが登録、様々なEVモデルに対するアクセスを持ちLiB劣化度合いの調査を行うことが出来る。今回の調査を通じて下記コメント
[バッテリーシステムは複雑で、状態情報を得るには内臓システムに接続しないと分からない]
[LiBに関する厳密な試験のほとんどは、EV全体のシステムでなく個々のバッテリーセルに対して行われており、知見はバッテリーセルに偏重している]
2;通説の問題
問題は、バッテリー劣化に関する多くの研究がバッテリーセルについてで、製造事業者が熱/急速充電の影響を抑制するために行った取組を本質的に無視していること
製造事業者の努力が結実し、[セルは保護][急速充電はバッテリーの長期的な状態に影響を与えない]ことになった。
-[製造事業者が投資してきた堅牢な熱/電圧/BMSは、日常的な急速充電による損傷からバッテリーを守っている]
通説では[EVは急速充電し過ぎるとバッテリーが劣化する]とされてきたが、影響の度合いやBMSの異なる車種間での重要性は常に不明だった。Teslaは[心配無用で必要なだけ急速充電してOK]で[空即充電は長距離運転に最適だが、全てをSCに依存しないことをおススメする]としてきた
3;バッテリーの劣化特性
バッテリーは新品初期の劣化スピードが速く、その後数年間劣化スピードは低減する曲線を描く。Teslaの元役員でRedWoodMaterialsのCEOは[TeslaのEVバッテリーは15年以上にわたって良好な容量を維持(30%以上の容量劣化はない)する]と推定
Recurrent-Autoは実データを用いて下記のようにコメント
-[バッテリー劣化はリニアでなくホッケースティック的(初めに大きく落ちて、その後は長期間に平準化される)な傾向がある]
-[EVバッテリーの寿命は、まだEVが世に出て日が浅いので不明確。今わかるのは走行中EVの劣化を観察することくらいでしかわからない]
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