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短歌 新作7首 『デッド・オア・アライヴ』

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たとえば、たったひとつの咳払いが、知らぬ間に誰かの命を奪うかもしれない。
たとえば、プラットホームの縁に立って、自分の体が粉々になるところを想像する。

ちっとも現実味がないけれど、僕らはいつも死のすぐそばにいて、あと一歩ぎりぎりのところで生かされている。

そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

『デッド・オア・アライヴ』 鈴掛真

塀の中にも夏は来る給湯器の設定温度を1℃下げれば

青空に向けた小さな咳きが名前も知らない街へと届く

守りたいものなんてない表札を掲げる場所はもともとないし

生と死の境のようにステレオをPANするピート・バーンズの歌

救済はポストの中にだってあるなんかヤバそうな宗教のチラシ

うそみたいにきれいな色の夕日だね今もどこかで血は滴って

飛び込んでみたなら死への入口は一歩先にもなり得るはずだ

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