見出し画像

短歌 新作7首 『バースデー』

画像1

目に見えず、手に触れられず、形にできない愛情。

そんなあやふやで、曖昧で、不確かなものを手綱にして、僕らは信じ合ったり、傷つけ合ったり、いがみ合ったりしている。

そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

『バースデー』 鈴掛真

陽当たりの悪い家だから掴みたい雲さえ見えない北向きの窓

俺が夏を終わらせるんだベランダで瀕死の蝉を握り潰した

これ以上成長なんてしたくない意志に反して増えていく肉

乱暴に抱かれるたびに血を流すどうせ命を生まない身体

教会の掟に背き夜明けまで俺は男の形を握る

愛はまるで真水のように満たしてもすぐ揮発して埋まらない穴

誕生日を思い出せなくなったから君とはぜんぶ終わったんだね

あらゆる言葉が無料で読める時代。 それでも、もしも「読んでよかった!」と思っていただけたら、ぜひサポートお願いします。 また新しい言葉を書くために、大切に使わせていただきます。