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短歌 新作7首 『安いピアス』

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ひとりでいるのと、ふたりでいるのでは、いちばんに何が違うかと考える。
話し相手がいること?
孤独じゃないこと?

通信機器があれば、遠くの誰かとおしゃべりできる。
家々がひしめき合う都会では、他者の存在が近すぎるから、孤独になる方が難しい。
他者の存在がわずらわしくなって、たまには孤独にもなってみたいと思う。

けれど、ふたりでしかできないことがある。
それは例えば、季節の移ろいの美しい様に気づいたり、自覚しなかった本心を知ったり。
そうして、ふたりでいるのも悪くないな、と思ってみたりする。

そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

『安いピアス』 鈴掛真

野良猫に餌を与えて太らせるくらいに君を傷つけたくて

困ってるときの顔が好きマスカットの種を奥歯で砕いたような

耳元でページをめくる音がしてマンガ喫茶の静寂が止む

ポケットに文庫を一冊差し込んで始める旅のような恋がいい

君の目と同じ高さで俺を見る安いピアスに嫉妬している

「もう風が冷たいんだね」触れていた肌が離れるとき気がついた

何者かになりたい君が帰るのを待ってるだけの人ではなくて

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