短歌 新作7首 『他者という名の世界』
東京にはこんなにたくさんの人がいるのに、ときどき自分は独りなんじゃないかと思う。
友達だって少ない方じゃないし、故郷に帰ればちゃんと家族はいてくれるのに、ほんとうはみんな僕のことなんかどうでもいいと思ってるんじゃないかって、たまに考える。
考え始めると止まらないので、そんなことないそんなことないって、飲みの席で不自然に大笑いしながら、友達の肩を強めに叩いてみたりする。
それで、ああ大丈夫だ、って思う。
そうしてまた何週間か経つと、また同じことを考える。
そんなループをぐるぐるしながら、僕らは今日もアスファルトの地面に立っている。
そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。
第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。
トーク&サイン会のお知らせ
第一歌集『愛を歌え』の刊行を記念したトーク&サイン会を、2019年9月22日(日)に下北沢で開催します。
ゲストは、弱冠26歳にしてHello! Projectをはじめとするアイドルへの楽曲提供でも話題の若きシンガーソングライター、山崎あおいさん。
31音で人の心を掴む方法、アイドルに楽曲提供する作詞のポイント、令和時代に言葉をどう届けるか、などなど、「共感されるコトバの書き方」を軸に据え、語り合います。
『他者という名の世界』 鈴掛真
無駄だよとぜんぶ見抜いているような電信柱すっくりと立つ
俺を俺たらしめている繊弱な身体よ大地と平行になれ
駅前の更地は何が建っていたか思い出せなくても夜は明ける
どこで立ちすくむのだろうランニングシューズの底が破れるときは
父になれず母になれずに俺はまだ男の指を咥えて眠る
これ以上わかり合えないなら強く抱かれたまま息を止めたい
まだ眠い君の背中に手を伸ばし他者という名の世界を開けた
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