【ビジネス考察】管理職にまつわる不都合な真実
リモート会議をちょうど終えたところで玄関の扉がガチャッと開いた。
賑やかな声がした。次女が友達を連れて家にやって来たのだ。今日はクリスマスパーティー。どういういきさつかは知らないが、会場は我が家らしい。
妻がどうしても出社しなくてはいけないという。代わりに在宅ワークを頼まれて、スケジュールを確認して、快諾した。
可愛らしい声がリビングで弾ける。
僕はあらかじめ用意していたお菓子の入った籠と、ジュースをテーブルにセットした。彼女たちの声が一層弾ける。その後きちんと「お邪魔します」と言ってお辞儀をしてくれた。
数年前には考えられなかった光景だ。
毎朝早くに家を出て満員電車に乗り、当たり前のように残業して、深夜に帰宅した。子供たちが起きていれば良い方で、ひどい時には翌朝子供たちが起きるより早く家を出た。
それがどうだ。
今、仕事の合間にクリスマスパーティーの準備をしている(笑)。幸せそうな子供たちの横顔を、思わず写真に収めた。
未曽有の惨事は、明らかに僕たちの生活を変えた。
それは必ずしも悪い側面ばかりではなかったようだ。異常なまでの仕事人間だった過去を炙り出し、本当のワークライフバランスというやつを気付かせた。
在宅ワークが無ければ、こんなシーンを眺めることなくあっという間に親離れされ、子供たちの何も知らないまま老いていくだけだった。想像するだけでぞっとしてしまう。
もう昔の生活には戻れない。僕たちは気付いてしまったのだ。
しかし、
これは社会にとっては不都合な真実かもしれない。
通勤の無駄が省けて生産性は向上するかもしれないが、知らなくても良いことを知ってしまった社会人たちは、日本特有の「がむしゃら」(昔の言葉で言えばモーレツ)を馬鹿馬鹿しいとさえ思うようになり、自分を犠牲にしてまで仕事する人が減った。
そして、
それにはこんなワードも拍車をかける。ハラスメントと、コンプライアンス。
今や管理職は上司と部下の狭間にいるのではなく、ハラスメントとコンプライアンスの危険にさらされ、その板挟みに合っている。
管理職は相変わらず忙しい。
「管理」をしっかりとするために出社して残業する。自己犠牲してまで責任を負っているにもかかわらず、ハラスメント撲滅が唯一の目的である人事は”管理職の質向上”を掲げるばかりだ。この結果、人事は次々と研修を課す。
管理職はそれによってまた残業時間を増やしていく。
地獄だ。
しかし責任ある行為を全うすれば、一般的にはそれに見合った報酬が支払われる。そういう意味では管理職のモチベーションは、究極的には金だった。
それなのに・・・今度はその金を国が奪っていく。
税金は増えるばかり。頑張って稼いだ金を奪われて、無作為にばら撒かれる。そしてそれは必ずと言っていいほど自分たちには巡ってこない。
一体どこにモチベーションが眠っているのだろう。
たとえ所得が減っても所得税も減る。つまりあまり痛くない。それどころか「管理」がなくなれば殺人的な忙しさから解放され、生活が充実する。
つまり、
もう管理職に夢など無い。
不都合だけど、これは真実になりつつある。
もう何かが崩れ始めているかもしれない。
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