【真実】意識高い系スイーツ
最近めっきり暗くなるのが早くなって、あぁ地球は軸が傾いてんだな。と実感する。春夏秋冬が地軸の傾きによって生じていることを知った時は感動した。逆にロジックを知り過ぎて風情が無くなった。
まぁそんなことはさておき「秋の夜長」は確かに長いんだけれども、それよりも何よりもこの季節は中華まんやおでんを中心に食欲をそそる食べ物がたくさん出てくる。食欲の秋だ。
代表格は栗とかぼちゃ。マロンとパンプキン。秋を代表するというより、カタカナになると途端に品格が上がる部門の代表格であるこの2つの食べ物は、一方でスイーツの代表格でもある。
中でもトップオブ秋のスイーツと言えばそう、モンブランをおいて他にはあるまい。
■想い出
モンブランは好きだ。
あの紐状クリームを擁するビジュアルに感激した古き良き思い出が大人になった今もそのまま引き継がれているからかもしれない。
真っ白い生クリームの上に真っ赤なイチゴの乗ったビビットなショートケーキがいかにも子供騙しな中、モンブランは少しカッコよかった。「自分、ショートさんより地味ですけど」みたいな謙虚さがあった。
「オレこれがいい。」というと、大人たちが「あら、モンブランは大人用だったのに」というのも良かった。どうでもいいけど地元で高級の部類に入っていた焼き肉チェーン”モランボン”に名前が似ていたのも良かった。
しかし、だ。
緊急事態が起きている。
■意識高い系スイーツ
”クリ本来の味を追求した”と謳っている高級モンブランがある。確かに代名詞とも言える黄色さは影を潜め、より奥ゆかしさを醸し出している。
紐状クリームのその紐の径がいつもより細く、そして重なりが多い。ピカピカのスプーンを、恐る恐る芸術的な螺旋の中に差し込んでいく。思いのほか繊細な作業だ。
スプーンに少しだけクリームを乗せ、口に運ぶ。まずは舌の上で”追及具合”を確認する。うむ。なるほど。
栗じゃ。
追求しすぎて一周回ってしまっているではないか。
危うく騙されるところだった。栗本来の味を追求したらそれは、栗だ。これなら中華街の天津甘栗を食べた方が良い。大人っぽさを出すために甘さを控えたせいでむしろ天津甘栗より味付けが緩い。
意識高い系の悪い癖だ。本来の味を追求するのは生野菜か鮮魚だけでいい。スイーツなど加工品でそれをしてしまったらそれは逆再生だ。
奥さんに言ったら怒られた。お前は黄色いモンブランでも食っとけ。そういうことらしい。しかし否定は出来ない。気付いてしまったのだ。
オレは安っすいモンブランが好きだ。
そう、真っ黄色の。ディスっているわけではない。安っすいモンブランこそ、モンブランだからだ。生クリームとぐちゃぐちゃに混ざり合って、いつ拾ったかわからない異様にテカテカした栗が乗っている。それでいい。
オレはそんな男だ。
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