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【迫真エッセイ】転職と苦悩の話⑬

社内でとある大きなプロジェクトが発足した。

お客様も予算規模も大きい。RFP(要求仕様)を片手に「これ宜しく」といった依頼ではなく、トップ同士の合意により課題の発掘から当社が関わることになる。

期待されている業務改善について当社はとあるノウハウを持っていた。お客様側もそれに大きく期待したのだろう。

しかし、

開発となると話は別だ。これまで当社がしたことのないコンサルティング寄りの仕事をする必要がある。システム開発の1stステップがお客様のやりたいことを可視化する「要件定義」であるならば、この活動はその前段、すなわち要求の定義とも言える。

とにかくこの大きく、手探り感の拭えない難儀なプロジェクト。どういう訳か、私のところの転がり込んできた。


■技術へ

開発部門に圧倒的なリーダーが居ないように見える、という私の感覚はどうやら間違っていなかったようだ。ハード開発であったがそれなりの経験してきた自分を、見る人は見ていたということか。

僕は依頼を受け、とうとう開発部門に異動した

転職してから3年半。当時僕を採用してくれた部長は既に他の部署へ移っていた。

この間にもう一つ大きな出来事があった。僕は既に管理職に就いてた。もともとコストセンター(利益を生まない部門)は人数が少ない。転職して1年後に僕は課長になることが出来た。
不安と地に足のつかない日々の連続だったが、それでもめげずに一生懸命やっていたおかげか、名刺の上では華々しい転職を遂げていたように見えていた。一応は。

そして僕は管理職のまま、先日立ち上がった大プロジェクトのリーダーになった

念願、というほど派手に望んでいたわけではなかったが、やはりこちらの方がしっくりくる感じはした。プロジェクト型組織の縦軸(PM)と横軸(課長)を兼務する不思議な立ち位置にやや戸惑ったが、そんな事よりもものすごくやる気に満ちていた。

こんな高揚感はいつぐらいぶりだろうか。

ネクタイを外してラフなTシャツの上にラフなジャケットを羽織った。来客が無ければジーンズにスニーカーもありだ。僕の心は、いや心だけではない。身に付ける衣服もまた随分と身軽になっていた。

リーダー就任は晴天の霹靂であったし正直かなり荷が重いと感じたが、技術部門への転籍が僕をかなり前向きにしていたこともまた、間違いなかった。


■PMP

PMPという資格を上司から勧められたのはプロジェクトが発足して半年ほど経ったころだった。

PMPすなわちProject Management Professional。プロジェクトマネジメントに関する国際資格である。それなりに高額だが会社から補助が出るという。

僕はこれまで散々開発リーダーを謳ってきたが、所詮それは部門内の独自の方法に則っていたにすぎない。社外の人と話す場合の共通言語には成りえなかった


また新しいプロジェクトはあまりにも難易度が高く、到底社内の人材だけでは内製できなかったため外部コンサルを雇っていた。彼らと話をするうえでこの資格はとても重要だった。

PMPはマネジメントのノウハウなので、開発の対象が何であても通用する。という謳い文句も良かった。ITの基礎知識に疎い自分でもマネジメントを極めれば堂々とこの部門で活躍できるに違いない!!


僕はこうしてPMPを取得した。簡単なチャレンジではなかったが、目に見える何かを自分自身に与えたい、という気迫が勝った。


とてつもなくデカい山に挑んでいた僕はこの上ない武器を手にしたことになる・・・が、もうお分かりだと思う。この冒険はそんなに甘いものではなかったのだ。




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続く。

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