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【人生】フォークダンスとHIP HOP

その昔、フォークダンスDE成子坂 というお笑いコンビがいた。

面白かった。

成子坂のコントにはセンスが溢れていたし、笑われるというより確実に笑わせていたし、なんていうか脱力感の中にもちゃんとエッジが効いていて、ポップでキャッチ―で、パンチラインがセクシーで、

とにかく面白かった。



■ノリ

先輩の部活引退の時。後輩がネタやれーみたいな流れになった。よくある展開だ。

そこで2年の私は何となしにキョータくんを誘ってコントをやることにした。

何を隠そう成子坂フリークの私はそのころから漠然とコントのシチュエーションを思い描くようになっており、すでに数パターンのショートコントを脳内に蓄えていた。

トイレで簡単に打合せして、そのうち数個のコントを披露した。王道のヤンキーネタから内輪受けの先生ネタなど、チョイスが良かった。

最高沸点こそ身長150センチ台の色白バスケ部員トモユキのセーラー服女装に譲ったが、我々のコントは、そこそこ受けた。


■文化祭

新学期、調子に乗った私とキョータくんは新ネタができると定期的に部活終わりに部員の前でコントを披露した。

ネタは私が考えて、キョータくんが突っ込んだ。

正直イタイ先輩だが、そこは体育会系。入部したての後輩も一緒に見てくれた。キョータくんの突っ込みは今思っても間が良く、全く照れがなく、おかげでそこそこ受けた。

私は超気持ちよくなっていた。

気持ちよくなった勢いで調子に乗って生徒会室に乗り込んだ。文化祭の体育館ステージでコントをやらせてくれ。と直訴したのだ。


我が校の文化祭の体育館はバンドの独壇場だ。コピーを中心に毎年5組ほど演奏を披露するが、夜と言うこともあり大勢の生徒が詰めかける。

先生も大目に見てくれる、年に一度の開放タイムだ。

毎年どのバンドがトリを務めるかで揉める中、超気持ちよくなっていた私は勢いそのままにトリの前座、つまりボルテージが最高潮に達したところでのコント披露という、文化祭史上初の立ち位置をGETしたのだ。


しかしまぁ青春と言うのは恐ろしい。今だったら絶対に勝負しない完成度でものすごい立ち位置を確保してしまった。怖いものなんて何もない。私はただただ、目立ちたかった。

今思えば青春の使い方を間違えたとも言える。もっとモテる方法はいくらでもあった。私はなぜかコントを選んでしまった。いや、それでいい。それでいいのだ。

私は当時、コントをすることで、超気持ちよかったのだ。


■後輩

日中の文化祭本編が全く記憶にない。私は緊張していた。

彼女には言ってなかったが、当然バレた。スベったら一貫の終わりだ。本格的に青春の使い道を間違えたと思ったが、時(夜)は来た。

生徒会が用意してくれた感じの良い出囃子で、私たちの時間はスタートした。


ステージに出た瞬間、嬉しい誤算があった。後輩だ。バスケ部の後輩が、大声援で迎えてくれた。

ありがとう。今思い出してもありがとう。部活終わりの披露が活きた。彼らは”例のやつ”というノリで盛大にサクラをしてくれた。

事前披露でウケの良かったものを中心に、学校あるあるを盛り込み、10ネタぐらい披露したショートコントはどれもウケた。キョータくんが良かった。彼は全く緊張していなかったし、いつも通りの照れの無い突っ込みと、相変わらず声も出ていた。まさしく、村田渚だった。

おかげで私たちのコントは場の空気を湿らすことなく終えた。最高の文化祭だった。彼女とも別れる必要は無かった。

そんな彼女には内緒だが、次の日知らない1年生の女の子から、「一緒に写真撮ってください」と言われた。勝った。オレは勝った。大勝利だ。みんなありがとう。これが青春だ。


■上京、そして

大学生になり上京した私は、HIP HOPのダンスにはまった。

コントの件は忘れていた。私は目立ちたかったし、私はモテたかったのだ。

モテると言えば、ダンスだった。


渋谷・六本木、ブラックカルチャーの中心で、静岡産まれ静岡育ち、悪そうなやつらは大体友達の友達、ぐらいの距離感でほどよく調子に乗っていた。


そんなある日、渋谷のクラブでたばこを吸っていた私のもとにガタイのいい少年たちがやってきた。私はとっさに目をそらし、マルボロを深く吸い込んで気をそらしたが、どうやら彼らの目的は私だったようだ。

「こんちわっ。」

B・BOYらしからぬ歯切れのいい挨拶をかまされて唖然としていたら、

「鈴木さんっすよね!」

「自分バスケ部です。コントやってましたよね!」


後輩だった。あの時さくらをしてくれた、後輩だった。


かくして渋谷の真ん中、最高にイケてる箱で

コント兄さんは見つかった。



DJブースからノートリアスが「アンビリバボ!」とライムをかましていた。

最高にDOPEな夜だった。


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