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【読書感想文】書くことに行き詰まっていた時、道しるべとなった一冊~『書くことについてのノート』



私は会社員のかたわら、文章を書く活動をしている。住民発のローカルwebメディアに取材記事を書かせてもらったり、友人たちとの創作ユニットでエッセイを綴ったりしている。

初めは趣味の延長で、楽しくやっていた。提出した原稿にたくさん赤入れがあっても、「自分の文章がより良くなるのなら」と前向きに捉えられた。いざ公開されて取材先や読者からの反応をいただけることもあり充実感があった。

しかし、書き続けるうちに、大好きだったはずの「書くこと」がしんどくなる時期がやってきた。

取材で聞いた話が素晴らしいのに伝えられない自分の力不足を痛感したり、文章の構成が上手くいかなくて話が前後し、スムーズに読めない点を指摘されて凹み、いつまで経っても変われない自分に不安を感じた。

さらに、読みやすくて面白い記事を書ける人やアクセス数が多い人が羨ましくなったり。初めは定期的に書ける場を得られただけで嬉しかったのに、だんだん欲が出てきて、人と比べるようになってしまっていた。
書くことに行き詰まってしまったのである。

にもかかわらず、書いて伝えることは好きで、辞められずにいた。書き続けるための心の持ち方を知りたかった。

そんな時に知った本が『書くことについてのノート』だ。

著者は作家・ライター・編集者の太田明日香さんである。
私が太田さんを知ったのは、彼女が講師を務めたエッセイ講座を受講したことだった。その後、著書『愛と家事』を読み、自身の気持ちに丁寧に向き合って綴られた文章が素敵だと思った。

以来、好きな作家の一人である。なのでSNSで『書くことについてのノート』発売を知った時、今の自分が求めている本だと直感した。もちろんすぐに申しこみ、届いたときは一気に読んだ。

結果、私の直感は当たっていた。
この本の内容は、太田さんが紆余曲折を経ながら書き続けてきた経験をもとに「(書くことを)楽に、持続可能にやっていく方法を提案」している。

私が印象に残ったのは、「嫉妬」の感情との向き合い方だった。

「嫉妬」。同じ時期に同じ媒体に書き始めた人がどんどん活躍の場を広げていったり、自分は成し遂げられなかったことを実現するのを見ると沸いてくる感情だ。
一方でそんな感情を抱く自分が嫌になってしまう。

そのことについて本書では、嫉妬は止められないが、沸いたからといって自分がダメ人間ではない。ただ、嫉妬は人間関係を崩してしまうことがあると述べられている。

その感情にのみ込まれないために、自分の境界線をひくことを提案している。

自分を責めるんじゃなくて、ただ“(あなたは)よかったね”と思い、私とは関係ないと切り離すのが大事だったのです。

『書くことについてのノート』より

境界線を引くことで、人の成功が自分とは関係ないことだと線引きでき、嫉妬の感情にのみ込まれずにいられるということだ。

冷静に考えてみると、それぞれの経歴や書いているテーマも違うのだから、比べようがないことに気がついた。

そして、書くことだけにとどまらず、日常生活にも生かせることだと思った。

そのように本書では、健やかに書き続けるための心の持ち方について、太田さんの経験に基づいて語られている。節目節目で真剣に自身の感情と向き合ってきたことを感じさせられた。

私は今後も書き続けていくだろう。『書くことについてのノート』は、悩んだときの道しるべになりうる本だと思っている。

◆夜学舎ブログ









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