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別れと次の旅路|通過点は奈良と伊勢
7th.May.2023
初めて降り立つその場所に到着したのは
午前8時のことだった。
そこは5月の雨が滴るせいかどこか
神秘的で神聖な雰囲気を漂わせていた。
10年前の修学旅行で訪れた色褪せた記憶は
ぼんやりと。
その駅は同じ場所ではあるが、懐かしさと共に私の肉眼には全く別の色として映った。
短い歳月にしても
自分が恋して馴染みのある土地から
離れることは想像以上に感極まりなかった。
安心する土地。
互いに希望や勇気を分かち合える仲間。
ふと目にした時胸が高鳴る風景。
その全てを愛していた。
そしてその全てを創造した。
私は何も持たないロボットだった。
別れはいつも切なく美しい。
初春の優しい雨のように自然と雫が頬を伝う
その刹那−
ゆっくりと時間が動き出す。
その瞬間に生まれた新しい時の流れと共に
深夜のフェリーで次の目的地に向かった。
枠に収まりきらないパンパンに膨れた荷物を
私は小さな小さな身体で懸命に支えながら。
このような状態で電車とバスを使った旅路は
慣れていると思ったが、あまりにも重すぎた。
通りかかるおばあちゃんが「大丈夫かしら」と
心配そうに見つめる。
そうして向かった先が奈良の春日大社だった。
春日大社
雨は嫌いだが昔からなんとなくどこか好きだ。
その日はピンポイントで土砂降り雨。
気持ちは落ち込むと同時に
雨でしか捉えられないその目の前に現れる空気感と雰囲気に息をのむ。
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周りを見渡すと目に飛び込む鮮やかな緑。
小鳥の囀り。
静かに耳から体内へと入り感じる
水の滴る音。流れる音。
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潤んだ瞳。
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午後13時頃
歩いて行くと食事処が見えてきた。
当初からの看板メニュー「万葉粥」。
一番のこだわりは出し汁だそうだ。
北海道産昆布をじっくりと時間をかけて
旨味を引きだし、奈良県産の白みそで
まろやかに仕上げている。
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お腹を満たし、雨の影響で霧が道を塞ぐ中
一歩一歩前へ足を進めていく。
春日大社、本堂がみえてきた。
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神社や日本の歴史について
全く詳しくないけれど
こういう場所を訪れると肌で感じる。
ちゃんと見守っていただけてる気がする。
私はその今までの感謝を誠実に丁寧に
心の中で深く表現した。
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今回の奈良「春日大社」はあくまで
寄り道ではあったものの
このような素晴らしく神聖な場所に
出会えたことに深い感覚があった。
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気持ちが温かく満たされた感覚で
次の目的地の為にと2000円でと節約した
ホステルへと向かった。
値段に対して個室を用意されており
かなり気持ちも心も休まることができた。
部屋の中で今までのことを振り返りながら
静かに休んだ。
明日またあの巨大な荷物を持ち
次の通過点へ向かわねば。
感謝と期待を持ちゆっくりと眠りに落ちた。
次の旅路へ続く-
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