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ヤリスハデス
2022年6月12日 23:12
ここは、窃盗が合法化された近未来のとある国。どうやら、資本主義が進みすぎた結果がこれらしい。しかしなぜだろう、私はまだ被害に遭ったことがない。社会の犯罪率も低下しているらしい。不思議だ。合法なんだぞ、窃盗が。玄関先に置いてある趣味のガーデニングの植木鉢は今日も何事なく、青々と緑を茂らせている。今日も仕事に向かおう。鍵は閉めた。
2022年6月10日 11:04
月曜の朝。憂鬱な朝。朝の情報番組を見ながら、朝ご飯を食べてスーツに袖を通す。なぜ週末はあんなにも時間が過ぎるのが早いんだ。きっとこれは政府の陰謀だ。土日の感覚を短くさせる超音波を秘密裏に発しているんだ。なぜこんな生活をする羽目になった。無論、学生時代から周りに流され、自分の意見を持たず、生きてきた結果だ。私は自由な生き方に憧れていたのだ。なのに、どうして。「スーパーヒーローさん!
2022年6月9日 08:26
辺りは緊張に包まれていた。今回のミッションでは一つのミスも許されない。周りには、自信のなさからだろうか感情を失っているように見える戦士もいる。さて、私はどうだろうか。この種の戦いは得意ではない。しかし、できるだけの努力はしてきたつもりだ。私がやらなければここまで私を支えてきた人たちに合わせる顔がない。私はやらなければならない。一つでも多くの敵を討伐し、スコアを稼ぐ。私の頭の中
2022年6月8日 08:23
通勤は憂鬱だ。最寄り駅まで徒歩10分、近くもなく遠くもなく感じる距離だ。駅のホームには人が溢れかえっている。ここで事故・事件が起きたら一たまりのないんだろうな。電車に乗っても席に着くことなんてめったにできず、冤罪防止のために常に気を張っている。ある意味、この場が最も集中力を研ぎ澄ませる空間だ。会社に着くと、上司の目線に気を遣いながら、やりがいもない事務作業をこなす。午後からは外回りが
2022年6月7日 06:33
寝ぼけ眼で目覚めると、陽に照らされた君がいた。ワンルームを支配するセミダブル。僕の枕に君の香りがこびりつく。梅雨入り前、最後の晴れ間だった。君とこうして出会うたび、僕はなぜ思春期時代の母を思い出すのだろう。君が寝返りを打つと二、三年前に流行った香水の香りが広がった。ごぉぉっと外からヘリコプターの飛ぶ音が聞こえた。外に目をやると、向かいの家の屋根から黒猫がこちらを覗いていた。今
2022年6月6日 06:36
天気予報が外れた水無月の日曜日。流れてしまった。ぐーるぐる。ぐーるぐる。珍しく詰まりは無かった。一度外れた栓を止めようがなかった。どうしてこんなことになってしまった。低気圧はどこまでも私の人生から華やかさを奪っていく。しかも明日は月曜じゃないか。久々にゆっくり寝ていよう。私は鍵を閉め忘れた玄関に向かった。チェーンをかけた。私の新しい人生の始まりだ。
2022年6月5日 06:41
「カラフルでオーバーサイズの服ばかりを好んでいたのに、今じゃ白のインナーに灰色のアウターを着てる。なんか、かた苦しいわね。」君は僕に向かってそう言った。言われてみれば、窮屈だ。しかし、今の自分にはこの格好が相応しい。だが、どうだろうか。今の彼女は全身真っ黒で僕より地味だった。そう見えた気がした。「私はもっと長い時間、あなたの世界に寄り添えると思ってたわ。」天を仰ぎながら飄々とした声
2022年6月4日 06:06
踏まれる。私はただ踏まれる。足蹴にされ、温もりを感じる。それでいい。それがいい。生まれる。私はただ生まれる。私には運命を共にする者たちがいる。例外なく皆が、自ら動かない。草臥れる。私はただ草臥れる。醜く、色変わる。それでいい。それがいい。私はこの為に生まれたのか。そうだろう。私がこうしていることで、あなたが上に上がれるのだから。私はこうするしかない。そうだろう。