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それは本当に魔法のシューズなのか

ちまたで噂のヴェイパーフライNext%、世界陸連が動き出したことで、日本では年末の高校駅伝や年始の箱根駅伝以上に注目される形になってしまったのではないでしょうか。
Twitterで普段から走っている人もそうでない人も、このニュースが広まってからは何かしら言及している印象です。

普段から趣味で走っている貴方はどうなんですか?と、今のところは誰からも聞かれてはいないんですが、Twitterで書こうとすると140字以内では到底納まる気がしないのでこちらにつらつらと書いていきます。

とはいえ、私はヴェイパー持ってないし、近所のスポーツオーソリティーにも売っていないし、そもそもフルマラソンで3時間半切るようなタイムを持っているわけではないし、ということで偉そうに言える立場ではありません。

じゃああのシューズに全く興味がないのか?というとそんなわけはなく、似たような構造の「ズームフライ3」を年末に入手しました。最上位モデルではないけれど、お手頃価格で入手できるとなればどんな性能なのか試してみたくなるわけです。走ってみた結果はというと…

・30kmの距離を、普段なら3時間近くかかるところを2時間40分で走破できた
・ハーフマラソンのレースで走ったら、それまでのベストタイム(1時間38分)から2分短縮できた。
 ちなみにスタートラインからゴールラインまでのネットタイムだと1時間35分。

初めの1キロを過去のどのレースよりも飛ばして(駅伝界隈では「突っ込んで」と表現するアレ)も、足に疲労がそんなに来ないので最後までハイペースで粘り切ることができるのですが、じゃあ「魔法のシューズ」かと言われると、そんな印象を全然持つことができませんでした。

今までのシューズと同じ感覚で走ると100mあたり1秒縮まればいいほうという感じで、それが1キロで10秒になり、10キロで100秒になり…と、積もり積もってタイムが縮まるという印象です。特に削り出すわけではなく。

長い距離を長い時間運動すれば疲れるものはやっぱり疲れるし、足に疲労がこないからといっても、ハイペースで走り続ければそれだけ心肺を酷使することになるわけです。

いくらクッションが厚くてカーボンプレートが入っているからといってもそれは足元の話。カーボンプレートに怪しげな化学品を仕込まれているわけではないので、心肺の疲労までは取り去ってくれません。

なので、駅伝の記録向上の要因が、単に「ナイキの厚底シューズによるもの」だけとは言えないと思います。あの「いだてん」の金栗さんだって「体力 気力 努力」なわけです。シューズの努力の前にまずランナーの体力だと思うのです。

というのをどこかで聞いたなあと思ったら…

川内選手でした。私のような素人が言うよりもよっぽど説得力ある気がします。

そして最近こういう本を買ったんですが、ストレッチ運動ひとつにしたって、私が現役で陸上競技をしていた20年前には知らなかったことばかり。少なくとも、今の青山学院大学の長距離ランナーの基盤を作っているであろう「青トレ」という固有名詞、20年前にはありませんでした。

体幹を鍛えるのはもっぱら2~3種類の腹筋と2~3種類の背筋で(これは自分の興味の及ぶ範囲が狭いだけかもしれないけれど)、コアトレーニングのコの字もありませんでした。20年経てば速く走るためのトレーニングだって進歩しているわけです。

仮にここでヴェイパーフライ系統のカーボンプレート入り厚底シューズを使用禁止にしたとしても、フルマラソンで2時間を切る記録だっていつかは公認されることでしょう。ただ、そこに至るまでのペースは大幅に鈍化するでしょうけれど。それが果たして「いいこと」なのどうかと言われるとわかりません。

そしてヴェイパーフライ系統を規制するにしても、どこまでをOKにしてどこからがNGにするかという線引きは、ナイキのみならず他のシューズメーカーにも少なからず影響を及ぼすのではないでしょうか。

カーボンプレート入りランニングシューズを製品化してるメーカー実際にもありますし、ミズノはプロトタイプを箱根駅伝の選手に履かせていたといいますし…。

…でも逆に「調査の結果、ヴェイパーフライには何の問題もありませんでした」となると、今度のオリンピックでフルマラソンを走る選手は全員同じシューズになりそうな気もします。それはそれで複雑な思いを抱えながら観戦することになりそうです。

どう転んでも何かしらの影響が出る(気がする)今回の騒動、どんな決着になるのでしょうか…。

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