見出し画像

統合失調症の外国人の彼と私の恋愛:キャンプでの出来事【後半】


キャンプの最終日の夜、
私たちは学校のある唯一のクラブにて、打ち上げパーティが始まりました。
お色気たっぷりな洋服で身をまとう女子たち
男子たちもしっかりと髪を整えて、3日間の気持ちが溢れるかのように、
時間が重なれば。

私はお酒は飲めませんが、踊るのは好きだったのでそれなりに楽しく過ごしましたが、彼らの積極性はなかなかのものです。
キャンプで出会って結ばれたカップルもチラホラ。友達同士でにぎやかに楽しんでいます。

踊っていると目の前にシーラが現れました。
かれは真っ白なTシャツにベージュのショートパンツが基本。
今回の打ち上げでも同じでした。
彼の踊りに目を奪われる私。彼に夢中になる私がいました。
私に対する彼の気持ちもそうなのか確かめたかったけれど、ままならない英語での会話では、気持ちを確かめることはできないまま、彼はまたどこかへ行ってしまいます。

ひとしきり踊ったので椅子に座っていると
またシーラが現れて、今度は
<そこに愛はあるのか?>
と私に聞いてきました。

<うん、あるよ。>
と答えたら、
<それだよ!>
と返され、またその場を去る彼を目で追っていると、
その様子を見た周りの数人が私のところにやってきました。

<何か言われたの?>
と聞かれたので
<そこに愛があるかって、で、うん。って答えたよ>
と言ったら、
<それはね、彼はあなたの事が好きってことだよ!>
と。

え?英語で聞かれて答えたからそんなに難しい質問でなかったけど、
その代わりに、何が言いたいかわからなかった内容でも、
ハンガリー人にはこのニュアンスが何を意味しているのか、分かるというのか?

それを聞いて、一呼吸して、私は彼のところに向かっていきました。
そのころ、打ち上げの持ち上がりはピークとなり、周りはどんちゃん騒ぎ。
泥酔して、我を忘れた様相で音楽に合わせてステージに上がる人もいて、
私たちも腕を引っ張られて、ステージで踊っていました。

私とペーテルは言葉を交わすことなく、ステージの一番奥のカーテンの脇で静かに2人で踊っていました。
私はただずっと、彼のエメラルドの目の奥に集中して体を揺らせていました。
そのうち、私たちの距離はだんだんと近づいて、
彼は私の頬に手をあてて、私はその手を握りました。
その瞬間、私たちは初めてのキスを交わしました。

おそらく私たちのキスの時間は、私の人生で最も長い時間だったかと思います。もちろん2人とも酔っぱらっていましたし、気持ちが昂りながらも、
でもハンガリーに来たてのある留学生が、出会って3日目で現地の男の子と恋に落ちるなんて、誰が考えていたでしょうか。

周りの目も気にせず、おそらく3時間ほどキスを交わして、彼は私の腕を引っ張って
<寮に戻ろう、今!>と言って連れ出しました。

時間はおそらく、夜中の3時を回ったころ。
真っ暗な暗闇の中、手をしっかりと繋いで、数分先の寮まで私たちは全速力で走りました。時に夜中の田舎町の住民が目を覚ましてしまいそうなくらい、大声で笑いながら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?