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隠れた天才

類稀なる才能を持ちながら、世に認知されていないせいで隠れたままの天才がこの世にはたくさんいると思う。

いや、人間は須らく何らかの天才であり、必ず1人1つは才能を持っているというのが自論だ。
その才能が、現代・この社会において持て囃されるものであるかは別として。

才能を持っていたとしても、自分自身でその存在にすら気付かない人がほとんどではないだろうか。

もちろん自分もそうだ。
日本一になれるような得意なこととか、ない。

小さい頃得意だったことがあなたの才能だ」とか「息をするようにできちゃうことがあなたの特技だから当たり前すぎて気付かない」とか
昔から散々言われていることではあるが、
その特技にも「それが何の役に立つのさ?」で蓋をしてしまう人間の多さたるや。

「自分の才能を見つける方法」みたいな本が今だに出続けて爆売れしているのがその証拠だろう。

それだけ、みんな自分の才能に無自覚なのだ。



さて、そうして世間から認められないままに隠れてしまった天才を、昔1人見つけたことがある。


ある日、暇を持て余していた自分は、X(当時Twitter)で規則性もなく数珠つなぎ的につらつらと色んなアカウントを眺めて回っていた。

フォロワーのフォロワーのフォロワー……という具合に、法事に来たもはや他人レベルの親戚みたいな遠い人たちをぼーっと見ていたのである。


ある程度まで行き着いたとき、自分は1つのブログに導かれていた。

誰のアカウントからどうやって辿り着いたかはもう全く分からない。


そのブログは、21歳の引きこもりニートの男の子が、ニートの生態みたいなテーマで記事を書いているものだった。


幼い頃心身症を患って社交恐怖症になり、不登校→引きこもりの現在に至るというような経歴が書かれていた。
(ついでに童貞らしい)


そのブログは…まさに才能の塊だった。


決して文が上手いわけでもない。
知的なわけでもない。

だが語られるエピソードが強烈すぎて、この人をもっと知りたいと強く思わせる魅力があった。


まずプロフィール。
小学生の頃、テストの名前欄に「僕ドラえもん」と書いて先生に没収される。
長所は高速指パッチンができること。でも、指パッチンが速く出来ても何も偉くないし、何もすごくない。というか気持ち悪い。


この時点でヤられた。
腹筋崩壊した。

長所に高速指パッチンを挙げるセンス。
感性が独特すぎる!!



肝心の記事だが、
「童貞を卒業し損ねた話」では、
出会い系で知り合った女の子と会う約束をして、久しぶりに外に出たが、約束の5時間前に着いてしまい、近くの公園で小学生たちに混じって遊んだり公園暮らしのおじさんと親睦を深めたりしているうちに夜になってしまい、相手からの連絡もなく1人で家に帰ったといったストーリーが綴られていた。

小学生に溶け込める21歳すごい。
子供心を忘れない人間というのは魅力的だ。
ホームレスのおじさんと仲良くなるくだりも最高。


こんなようなブッ飛んだ記事がいくつも書かれているのだ。

だが、読者の数も1人か2人で、ブログというよりもはや彼自身の備忘録のような役割を果たしているように見えた。


この文才は、世に認められるべきだ。
強く感じた。


ちなみに、自分がこれを知人にシェアしたときのやりとりがこれだ。

興奮と熱量が伝わっただろうか?

とにかく読んでいるだけでもう面白すぎて可笑しすぎて、ギャグエッセイとして売り出したらかなり売れるのではないかと確信した。



だがそれから数日後。

突如彼は姿を消してしまった。

ブログも閉鎖され、覚えていた彼関連のキーワードを検索しても見つけられなかった。


多くの人の目に才能が見出される前に、天才の所業は砂に埋もれてしまったのである。


自分は今でも諦めきれていない。
どうしても、彼が紡いだ面白すぎる魅力的な文をもう1度読みたい。

彼は今どこにいるのだろう?
引きこもってはいるのだろうが、ネット上のどこかに潜んでいるはずである。
(無論、馬鹿にしたり安住を暴いてやる気持ちでないのは皆さんにご理解いただけたと思う)


上記の情報から、彼の日記の所在を知っている人がいたら、ぜひとも教えてほしい。

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