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お祭りでブチギレた

あったのかなかったのかよく分からないままに梅雨も過ぎ去り、ようやく夏本番が始まった。

夏といえばお祭り。

全国各地で日本の象徴のひとつとも言える夏祭りが賑わいを見せるだろう。


過去一度、自分はお祭りで盛大にブチギレたことがある。


そう、何年も前、まだ学生だった時分だ。


当時付き合っていた彼氏は同い年で、顔は良いがコミニュケーションが取りづらいというか、
何を考えているかよく分からない男だった。

物静かで大人しく、ぎゃあぎゃあと煩い対照的な自分とは意思疎通が上手くいっていなかったように思う。


その日、大学のそばの神社で大きなお祭りがあったので彼氏と行くことにした。


サークルの仲間たちからも誘われていたが、そちらを蹴ってまで素敵な恋の夏を優先したのだった。


自分は甚平、彼は浴衣で待ち合わせることに決め、当日そこへ現れた彼に胸をときめかせながら手をつないで歩き出した。


人の賑わいや太鼓の音が心地良い。

夏祭りの雰囲気を存分に楽しみながら胸を躍らせた。


さあどこの夜店から寄ろうかとワクワクしていると、彼は乏しい表情のまま言った。



祭りきたはいいけど、何するの?




何、する…?

いや、何って……

食べ歩きしたりラムネ飲んだりいろいろあるでしょうよ。

というか特定の何かじゃなくて雰囲気を楽しむことだよ。


そんなことまでいちいち言わなきゃ分からんか!?


思えば彼は効率主義というか、設定された目的がないとそこへ向かって動けないタイプだったのだろう。


でも、でも、
待ち合わせてウキウキしているところに第一声で「何するの?」はあまりに冷たく突き刺さった。


瞬間、頭にカーッと血が上り、気分を台無しにされた悲しさと飲み込みの悪い相手への失望とで怒りに任せて手を振りほどいた。


もう帰る!!!!!!!!

お祭りに来て数分しか経っていないのに、自分は走って鳥居を抜け、泣きながらその場を後にしたのであった。


これはやはり相手がおかしいのか、それとも自分の沸点が低かっただけなのかはよく分からない。


お祭りのシーズンになると毎度思い出す苦い出来事だ。


もう大抵のことでは帰ることはしないと思うが、盆踊りを踊りながら、櫓の下で当時の思い出をしみじみ懐かしんでいるのだった。

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