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【書評】ナナメの夕暮れ~やはり若林は天才だった~

2008年おもしろ荘でデビューしたときから好きなオードリー。
10年の売れないショーパブ時代を経て、その年のM-1グランプリで準優勝をきっかけに大ブレイクした2人。
若林は番組MC、DJ、大喜利の舞台でも活躍し、春日はフィンスイミング、東大受験、ボディービルダー、クイズ番組での活躍と、多彩な才能を持ったコンビだ。
そんな大好きなオードリーの若林が書いた最新のエッセイが「ナナメの夕暮れ」。この内容が心に強く響いたので、初めての書評に挑戦したい。

兼ねてから薄々感じていたことだが、この本を読んで1つ確信したことがある。

オードリー若林はやはり、天才だった。

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1.オードリーの紹介

その前に、オードリーについて軽く紹介しますね。

【概要】
コンビ名:オードリー
メンバー:若林、春日
 事務所:ケイダッシュステージ

【略歴】
2000年:コンビ結成(高校の同級生・当時のコンビ名はナイスミドル)
2008年:年始の「おもしろ荘」で初の地上波漫才デビュー
    年末の「M-1」で準優勝(敗者復活から決勝・1R1位通過)
2009年:「スクール革命」 レギュラー入り
    冠番組「オードリーのオールナイトニッポン」開始
2011年:「ヒルナンデス」水曜レギュラー
2012年:冠番組「オードリーさん、ぜひ会って欲しい人がいるんです。」
    開始
2014年:「しくじり先生」 担任(レギュラー)
2019年:初の武道館単独ライブ
    「日向坂で会いましょう」MC
     冠番組「あちこちオードリー」開始

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2.心の大きな穴は"没頭”で埋め

若林はファンの「失恋して辛い」という悩みに対して、何かに没頭することが有効だと語る。自分がして楽しいことに没頭することで、失恋で生じたネガティブな感情をかき消すことができるという。著書の中で具体的に挙げられているものは、仕事、友達に会う、アイドルを応援、無料のゲームアプリ、筋トレ、新しい恋だ。

(スワッキーのひとりごと)
僕自身、最近はネガティブになることは少ないけど、もしそういう気分になったときは自分の好きなテニス、卓球、アニメ、漫画に没頭して気分を紛らわせてみたい。ネガティブな事象に囚われすぎず、自分の好きなことをして気分転換するのは確かに有効そうだ。

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3.オリジナルを生み出す為には事前に"自分の特性”を理解する

オードリーの代名詞「ズレ漫才」に行きつくまでには途方もない苦労をしたという。漫才を作る上で、そのスタイルがオリジナルであることは必須である。先輩にそう教えられた若林は自分たちオリジナルの漫才を確立するために、アメフトの防具を着て舞台に出てが、大滑りした。そこで、「誰もやったことがないネタをやるのは簡単だが、誰もやったことがなくて、笑いも起こるネタを作るのは難しい」と若林は感じた。そうしたネタを作れる先輩に尋ねたところ、オリジナルを作るためには「自分の特性」を経由していることに気づいたそう。そこで、相方春日の特性が「上から目線」、自分の特性が「冷たいツッコミ」だと認識したという。この2人の特性を上手く組み合わせて誕生したのがオードリーオリジナル、ズレ漫才だ。

(スワッキーのひとりごと)
自分だけのオリジナルな人生を生きたい僕としても、この若林の教訓は思うところがある。自分の特性を理解して、それを伸ばさないと自分だけの道を切り開くことはできない”予感”がしてるから。根が安定志向な僕は、気づけば周りの人の真似ばかりしている。オリジナルなところは1つもない。このまま平凡な毎日を送っていていいのか。常にこの不安がまとわりつく。
自分の特性を見つけて、オリジナルの人生を生きるために、まずは自分が他人とどう違うのかを意識して過ごしてみたい。

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4.”耳が痛い”ことを言ってくれる信頼できる人を持つ

芸能人の失敗談を語る番組「しくじり先生」を3年レギュラーで出演していた若林。数々のしくじりを聞いて、若林が心に残ったことがあるという。それは、「自分の弱さと向き合うことが一番難しい」ということ。特定の信仰を持つ人が少ない日本では、自分の弱さを神の視点を通さずに自らの力でじっと見つめるのは難しい、と若林は言う。自分の弱さが露呈したけっか、しくじりが生まれる訳だが、そのしくじりを回避する方法があるという。それは、タイトルにもある「”耳が痛い”ことを言ってくれる信頼できる人を持つ」である。「自分では自分のしくじりの種には気づけないとうのが120回の授業をうけた僕の結論」と若林は語る。若林はディレクターと同期の芸人の2人が耳が痛いことを言ってくれる存在であり、「若林は結婚したほうがいいね。一人で自分の内面ばかりみてないでさ」と言われたという。2019年に若林は作家の紹介で会った看護師と結婚した。

(スワッキーのひとりごと)
自分が聞く耳を持てる人の意見を素直に聞く若林の姿勢は、人生でしくじらないためには重要なことだと僕も感じさせられた。僕にとって「”耳が痛い”ことを言ってくれる信頼できる人」は誰だろう。パッと頭に浮かばない僕は、しくじり予備軍かもしれない・・・。早くそうした人を見つけようと思う。

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5.ネガティブ芸人若林は”肯定ノート”を書いていた

若林はスタバで注文するときに「グランデ」と言えない。自分が気取っているような気がして、恥ずかしいのだそう。なぜ恥ずかしいのとかというと、もともと他人に対して「スタバでグランデとか言って気取ってんじゃねーよ」と思っていたから。若林曰く、他人の目線が気になる人は、他人のことを馬鹿にしている人だという。他人がはしゃいでいる姿を馬鹿にしていると、自分が我を忘れてはしゃぐのが恥ずかしくなるのだ。そうなると、自分が好きなことをするにも他人の目線が気になって思いっきりできなくなる。その結果、「あれ、全然人生楽しくない」となるのだそう。これに気づいた若林は、”肯定ノート”を書き始めた。このノートに自分が楽しいと思うことを徹底的に書いたという。なぜノートに書こうと思ったかというと、”自意識過剰のせいで、自分が本当に楽しいと思うことに気づいていない”という予感がしたから、だそう。実際にこのノートを書き続けた若林は、自分の知らない自分に気づいた。

【若林が肯定ノートに書いて気づいたこと・実践したこと】
・花火が好き
 →ドンキで1万円分の花火を買い占めて夜の海で打ち上げまくった
  こんなに楽しいと思うパワーが残っていたことに驚いた
・同期とお酒を飲むのは楽しい
 ⇔先輩や後輩と飲むと気を遣って疲れる
・動物は苦手だが馬だけは平気→馬に乗るのが好き
 自分でも意外だった
・プロレスに激ハマりした
・ゴルフを始めた
・キューバに行った
・DJ機器を買った

自分の好きなことがわかると、他人の好きなことも尊重できるようになる。と若林は言う。今までだったら「そんなベタな趣味恥ずかしい」とスカしていたが、どういうところが魅力なのか真剣に耳を傾けるようになった。実際に、プロレス好きの人の話を聞いて35歳にして初めてプロレスを見に行き、激ハマりしたという。

こうした没頭できる趣味は、ネガティブな若林にとって「命綱と同等の価値がある」と表現している。ノートを書いてから、若林はゴルフを始めたり、キューバに行ってみたりした。周りからは冷ややかな目で「ゴルフなんて始めて普通のおじさんに成り下がりやがって」「キューバなんて行って、いい歳こいて中二病かよ」と言われながらも、自身がもとはそちら側だったこともあり、気に留めなかったという。

好きなことの次は、他人を肯定する文言を書き込んだ。最初に尊敬する人のことを書き、自分がどういう人間が好きかを知った。それからは普段接する人たちの優れている部分を思いつく限り書きまくったのだそう。どうしても腹が立つことさえも、歯を食いしばって肯定したという。他者への肯定がスラスラ出てくるようになると、不思議と他人を否定的に見る癖が徐々に矯正された。そうなると、自分の行動を否定的に見る人が、自分が思っているほどこの世界にはいないような気がした。この考えに至った若林は、「物事に肯定的な人が他人の目を気にせずに生きてるように見えるのは、自分は他人から肯定的に見られているのだろう(自分も他人をそう見てるから)」と気づいたのである。

(スワッキーのひとりごと)
僕もさっそく肯定ノートを始めてみようと思う。元々人の目を気にするタイプではないが、自分と相手を肯定する習慣を持つことで、今より多くの人のことが好きになれる気がしてる。

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6.勘とは”今までウケたこと・ウケなかったことのデータの総量の瞬間的な結論”

特番で、AIの開発者と話す機会があったオードリー。「AIはM-1で優勝できる漫才を作れるか」という疑問に対し、開発者は可能だと言い切った。その根拠は、今まで爆笑を取った漫才のデータをAIに取込み、「どういうテーマだと人が笑うのか」「最適な間とはどういうタイミングなのか」が可視化できることによるものらしい。これを聞いた若林は「いや、それ芸人が頭の中でやってること」だと思った。そして、芸人の勘といわれるものは”今までウケたこと・ウケなかったことのデータの総量の瞬間的な結論”だと気づいた。脳の中のデータがウケたことが色濃く残っている人はアグレッシブだし、スベったことが色濃く残ってる人は臆病になる。そう思うと、データの総量は多いほうが良いからスベリ続けていた20代の10年間はあれはあれで意味のあるものだったんだな、と若林は振り返る。

(スワッキーのひとりごと)
スティーブジョブスが「Follow your heart and intuition(自分の心と直感に従え)」と言った意味が、若林の言葉を聞いて腑に落ちた。直感とは、経験から得られた結論であるということ。芸人が過去の経験から”ウケる発言”を言えるように、ビジネスマンは過去の成功と失敗経験から”その瞬間の仕事の答え”を導きだしているのだと感じた。仕事でも仕事以外でも、「理由はうまく表現できないけど、多分こっちの道が正しい」と思う場面が来たら、僕はその直感に従おうと思う。

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7.”自分たちがやりたいことと2割のお客さんが笑ってくれる”が僕たちの目指すところ

M-1の決勝に行く少し前の時期、全然ウケなくてやってられなくなった若林は「最後に自分の好きなことをやって辞めよう!」と決心していた。自分と相方の瞳孔の開き具合だけを求めた、”どうしてもやりたい漫才”をしたかったのである。100人中全員が笑わなくていいから、せめて2割のお客さんが笑ってくれれば。笑い声が全く起こらないと、瞳孔は萎んでしまう。”自分たちがやりたいことと2割のお客さんが笑ってくれる”が僕たちの目指すところだった。反対に、自分たちがやりたくないことと8割のお客さんはどうでもよかった、と若林は語る。

(スワッキーのひとりごと)
何を優先して、何を諦めるかを決定づける言葉だと感じた。仕事選びでも、「ワークライフバランスを優先する代わりに、給与が低いのは諦める」といった優先付けはある。自分が本当に優先したいことに注力した人は、やっぱり強いんだなと思った。全然ウケなくても自分たちが追求する漫才を極めて、その結果冠番組を何本を持つようになったオードリーはやっぱりすごいし、超カッコイイ。今の僕の最優先事項は「奨学金の返済」だけど、それが終わったらオードリーみたいに自分のやりたいことをとことん追求していきたい。



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