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ショートショート『紙飛行機は上昇気流に乗って』

 彼女は詩が好きだった。でも書くのはなぜか旅先にあるお客様ノートばかり。しかも恥ずかしからと言って一切僕に見せてくれない。外出が許された最後の旅行でも、結局見せてはくれなかった。

 彼女が旅立って1年。僕はふと彼女の詩が気になり、二人で行った旅先をもう一度巡る。僕は彼女の詩を探した。古いノートは倉庫から取り出し、見当たらないものでも2、3日かけてなんとか探し出してもらった。日付はあっている。この日に彼女は書いたはず。しかし、いくら探しても彼女の詩は見つからなかった。

―― 恥ずかしくなって、消したのかな。

 ところが、彼女との最後の旅先で泊まった八甲田ホテルでようやく見つかった。それは僕の名前と『ありがとう』というほんの小さな言葉だった。


 僕も書いてみよう…

 列車の中でメモ帳を取り出す。

『今日車窓から見えたのは虹でした
 赤青黄
 僕には三色しか見えない
 だけど虹の向こうにいつも君が見える
 一瞬の透きも逃さない君は
 七色よりもっと多くの
 色が見えているのだろう
 君が見えたクレパス
 僕にも見えるように』

 恥ずかし!

 僕は破り取って紙飛行機に。するといきなり風が吹き、紙飛行機は窓の外へ。どんどん高度を上げていき、積乱雲の上昇気流に乗って大空へと飛んでいった。

(了)


(コメント)400字小説投稿サイト『ショートショートガーデン』に投稿した作品の「ショートショートロングバージョン」となります。400字以内という文字制限では表現しきれなく心残りだったので、字数を増やし加筆してこちらに投稿してみました。前の作品は簡潔な「ショートバージョン」で違うものとして考えており、二重投稿にならないよう配慮しておりますが、問題がありましたら削除致しますのでコメント頂ければ幸いです。

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