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過去に想いを馳せて。メキシコとフランスへの特別感。

遠い異国の地だからこそ会えた人。

ここでは誰もわたしを知らない。

旅の開放感。

いつもと違う自分になりたいという
ちょっとした遊び心。

メキシコ南部の小さな街。
ホステルの共同キッチンで出会ったフランス人。

銀縁眼鏡と無精ひげ
フランス語訛りの堪能なスペイン語

分かりやすく恋をしてしまった。


日本にいる恋人の存在にフタをして

ごめんね、ごめんね、と
心の中でつぶやきながら。

今なら、漫画かドラマのヒロインにでもなったつもりだったのか、と思うけど。

それでもあんなに瞬間的に
誰かに夢中になったことがあっただろうか。


あの日、あの時、会わなければ
袖摺れの仲にもならなかった。


もう2度とない淡い恋。

過ごした時間はたったの3日間。

手を繋ぎ、バスに乗り込むわたしを見送る姿。

今でもふと思い出す。

満面の笑みを包み込む
チクチクとした無精ひげと

宇多田ヒカルの歌詞のごとく

タバコのフレイバーがした最後のキス。

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