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コント台本「妄想」

学祭で静寂を生んだネタです。
私は、Bの役。不思議ちゃんな相方に当て書きしたつもりです。
なかなか重たい会場だったので湧きは少なかったですが、頑張って声張ったのでいいです。


A「入って入ってー!」
B「お邪魔しまーす」
A「狭いけどゆっくりしてってよ、荷物その辺にでも置いて!お茶ついでくるね」
B「ありがとう~、ちょうど予定つぶれて暇してたから助かったわ。で、今日は何の用?わざわざ家にまで呼んで」
A「実はさ、今日はBに頼みたいことがあって来てもらったんだ」

 A、言いながらリビングに戻ってくる

B「なにそんな改まって、私に頼みごと?」
A「ちょっと、実験台になってほしいんだ」
B「実験台?なんの?」
A「バイバインを、飲んでみてほしいんだ」
B「バイバイン?バイバインってあのドラえもんのひみつ道具の?」
A「うん。他に何があるっていうの」
B「うん、よし、一つ大事な話をするよ。ドラえもんを見て、いろんな妄想をするのは自由だよ?でもね、サイコパスな妄想を私に押し付けるのは違う。分かる?」
A「サイコパスでも妄想でもないよ!ほんとに気になるんだもん!」
B「まただ…この子、また妄想癖拗らせてる。この前だって、ネズミ捕りにピカチュウがかかったとか意味わかんないこと言ってたし…でんきねずみポケモンはねずみではないだろ…。いちいち思いつくことが怖いんだよ…あのね、当たり前だけど、まずバイバインなんてものは現実にないの」
A「あるよ!ほら!」
B「そんな小道具まで作って…いよいよ二重人格とかなんじゃないの」
A「これを一滴かけたらその物体は5分ごとに倍増していく。のび太が栗饅頭にかけちゃってどんどん増えちゃって、最終的に宇宙に捨てに行ったって話は有名だよね。バイバインって実は、体内で消化したら効果が消滅するみたいなんだ。実際、私も小っちゃいお菓子で試してみたけど、食べきったらそれ以上変化はなかった。理論上、体内で消化できれば効果は消えるけど、ヒトが直接飲んだ場合どうなるかってどこにもデータがないんだよね。だからどんな味がするのかも分からない。自分で実験できればいいんだけど、万が一増えちゃったら面倒くさいし、実験台を探してたとこなんだ」
B「なんか語り出したんだけど...!怖い!何言ってんの!?ねぇ、ねぇ!もう見えてないじゃん私!バイバインの説明いらないって!なんかデータとか言ってるんだけど!ドラえもんにデータとかいう概念持ち込まないでよ!」

 B、長台詞の横で喋る
 A、ガン無視で喋り続ける

A「はい、飲んで」
B「ちょっと待ってよ、じゃあこの瓶どこで手に入れたっていうの」
A「そりゃあドラえもんだよ、てってれー!スペアポケット~」
B「はは、じゃあタケコプターでも出してみてよ」
A「出せるよ?ちょっと待ってよ…あ、ダメだ、機能止められてる」
B「機能止めるって何?!」
A「4次元状態に出来なくされたわ、ドラえもんに」
B「ドラえもんに?!あんたの妄想の中のドラえもんだいぶ厳しくない?」
A「いや最近喧嘩しちゃってさ、めちゃくちゃ拗ねてんのよ、ドラえもん」
B「ガチの喧嘩じゃん」
A「機嫌損ねてるからあと半年は22世紀から帰ってこないだろうね、タイムマシンも止められたし」
B「妄想のベクトルが歪みすぎてるよ」
A「だから妄想じゃないって!本物なんだからさっさと飲めばいい話でしょ!なにぐずぐずしてんの?あームカつく」
B「逆ギレ~??勝手に呼びつけといてそれはないでしょ!あと本物ならなおさら飲むわけないよ!」
A「駄目だ、甘いもの食べて落ち着いて。ほら、どら焼き」
B「落ち着いてはこっちのセリフだよ。そんで徹底してんなぁ~、ちゃんとどら焼き買ってるし」
A「ドラえもんが置いてったんだよ、押し入れも片さずに出てったし」
B「うわ、ほんとだ布団敷いてる」
A「ドラえもんのいびきがまたうるさいんだよね~静かにしてって言ってるのに全然言うこと聞いてくれなくて!誰のおかげでひみつ道具使えてると思ってんだってブチギレちゃってさ!」
B「昭和のおやじかよ」
A「俺より先に寝てはいけない、俺より後に起きてもいけない」
B「関白宣言かよ」
A「いやぁ、ドラえもんも困ったもんだよねぇ~」
B「…駄目だよ。そうやってすぐ妄想に逃げちゃ駄目だよ!どんだけのび太みたいに頭が悪くたってどんくさくたって、ドラえもんはいないんだよ。自分の力で頑張っていくしかないんだよ!いい、よく聞いてよ。妄想というさかなは、釣り竿が持っていかれそうになるぐらい大きなさかなだよ。でもね、妄想というさかなは時間というさかなや信頼というさかなを沢山食べてしまう。だから、時間というさかなや信頼というさかなのことも、いけすの中の高級養殖魚のように大切に守ってあげなきゃいけないんだよ。それに、そんなに妄想というさかなに現を抜かしてたらご両親というおさかなが心配するでしょ!」
A「さかなやめてよ!サルゴリラじゃないんだから!あとさ、さっきからずっと妄想妄想って言うのやめてよ、全部ほんとのことなんだから」
B「ほんとなわけないでしょ!嘘というさかなは信頼というさかなを…」
A「さかなやめてよ!」
B「じゃあさ、なんでそこまでしてバイバインを飲ませたいわけ?」
A「もし上手く増やせたら日本の人口減少問題を解消できるかもしれないじゃん」
B「意識高いタイプのサイコパスだ…宇宙規模のリスクがあるんじゃなかったの…?」
A「そっか!増え続けちゃうもんね!世界中がBで埋め尽くされるってことでしょー!はははおもしろ〜!はははは」
B「妄想というか暴走でしょ、これ」
A「世界の危機を救うんだよ!いいからほら飲んで!」
B「話聞いてた?!」
A「いいから試しにさ!」
B「嫌だって!無理無理!」
A「……あっ!」

 A、駆け寄って窓を開ける、遠くを見つめる動き、窓から手を振る

A「おーい!いつの間に戻って来てたの、またそんなにいっぱいどら焼き買って!」
B「タケコプター…?」


P.S.無い窓の外を眺める、アトムみたいなネタがしてみたかったんです。

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