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聴いたよ新譜2021 vol.12

お世話になってます

最近色々ありましてなかなかゆっくり音楽を聴く心の余裕が無かったわけなのですが、今月も素晴らしいアルバムがたくさんリリースされました。正直なところレビューするほど身に染みて聴けていないアルバムも多いので、今月はかなり絞っての感想になりますが、これがどなたかの指標や生活に影響することがあったら嬉しい限りです。


1. Walt McClements - A Hole in the Fence

あまり情報が無いのですが今月よく聴いたアルバムの一つ、Walt McClementsです。

アコーディオンを使用し
呼吸を感じるアンビエントサウンド
生態的なパワーと光を感じます

ピッチフォークでは不評のようですが、全体的にこのアコーディオンの伸びと抑揚が気持ちよくエレクトロニカと混ざり合って素晴らしいアンビエントサウンドを作りだしていると思いました。包容力とエモーションの揺らぎというか、いつもアンビエントのレビューって表現が気持ち悪くなりがちなんですが許して欲しいです…とても素敵なアルバム。


2. alexalone - ALEXALONEWORLD

アメリカはテキサス州オースティンを拠点とするバンド、alexaloneのデビューアルバム。90年代を思わせる凶暴な歪みと残響による音の壁を駆使したエクスペリメンタルなサウンドは、初めてsonic youthを聴いた時のようなある種ヒリヒリした気持ちを思い出させてくれました。

USインディ・オールドスクール
その殺気まで見事に作り出し
スリリングで突き抜けた気持ちよさがある

ミニマルでガレージパンクを思わせる録音に、残響の聴いたストローク、地を這うような声からどんどん盛り上がってクライマックスには凶暴なディストーションが刺さってくる。今日日丸くてチルなサウンドか、エッジィなギターこそがクールなサウンドの前提条件とされる中完全に逆行しているところも含めてとても好感が持てるアルバムでした。ライブ見てみたいですね…

3. quickly,quickly - The Long and Short of It

3〜4年前まだ東京に住んでいる頃、DJで使用するネタ集めにsoundcloudをよく徘徊していたのですが、その時に出会ったのがquickly,quicklyでした。この当時ローファイhip hopやインスタントなトラックを求めていく中でかなりお世話になっていましたが…まさかそんなquickly,quicklyがghostly internationalからデビューするとは…恥ずかしながら新譜情報で知って驚きました

lo-fi hiphopのトラックメイカー
そこからの躍進として
1つの形を見せられたというか

lo-fi hiphopの感触も残しつつ、ブロークンビーツなどをまぜながら生音とも交えてオーガニックなサウンドが歌に馴染んでいく…もはやトラックメイカーというよりSSW的ともいえる域まで作品は作り込まれており、本当にquickly,quicklyなのか?とまで思ってしまいました。
インディーフォーク的あっさりした歌の下でビートとグリッチが暴れていく感じなど彼のLo-Fiイズムの新しい表現方法を見つけた感じに痺れました。

4. Bnny - Everything


シカゴの4人組バンドのデビュー作。全く初めて聴いたバンドでしたがとても好みな作品でした

悲しみの向こう側はやっぱり暗くて
けどそれが美しく見えてしまう

ボーカルがパートナーの死を乗り越えながら数年かけて曲を書いた。というエピソードもあり作品通して悲しさのフィルターを通して聴いてしまったところはあるのですが…グランジライクなコード進行にルーム感のあるリバーブがダークで美しく、適度に浮遊感もありなんとも夜に1人で家で聴きたい作品です。

5. 羊文学 - You Love (ep)

アニメ映画「岬のマヨイガ」の主題歌「マヨイガ」を軸にテーマに作られたep。先日のフジロック でのライブもとても解放感があり素晴らしいアクトだった羊文学でしたが、その後リリースされたこちらの作品もとても素晴らしかったです。

90'sローファイの乾いて潰れたサウンドが
日本の夏の原風景に絶妙に混じり合う

主題曲たるマヨイガは疾走感あるエモーショナルなポップソングですが、付随する楽曲は夏の原風景を描写しながらもPavemantばりのローファイインディフォークをしっかりと感じられるのが素晴らしいと思いました。今まで以上に曇って引っ込んだギターサウンドが最高。
マヨイガの蓮沼執太フィルバージョンも流石でした。ep全体を通しての雰囲気として作品らしさが強く、とても素晴らしかったです。

6. Men I Trust - Untourable Album

カナダのインディポップトリオ、Men I Trustの4枚目のアルバムです。幻となったフジロック'20にもラインナップされていて楽しみにしていたのですが、今年もアルバムをリリースしてくれました。

トリップホップを想起させる「曇った霧」
そこに漂い包み込む温かい声。
深夜に一人で聴き浸りたい一作です。

Men I Trustは僕にとっては長時間残業の友と言っていいほど作業中に聴くことが多いアーティストなのですが、今作は今まで以上にダークで曇ったサウンドが素敵でしたね。これまでの作品では感じた木漏れ日感とはまた違い、トリップホップ感も強く、ポーティスヘッドやコクトーツインズを思い出す霧を感じました。名作だと思います。


7. Big Red Machine - How Long Do You Think It's Gonna Last?

The Nationalのアーロン・デスナーと、Bon Iverのジャスティン・バーノンによるユニット。まあこのメンツの時点で名作しか生まれなさそうな感じなのですが、そんな2人の組むBig Red Machineのセカンドアルバムです。

きっとここが現代USインディの中心で
シーン総括するような歴史的作品

エレクトロニカの要素もあり実験的ですらあった1stから、今作はオーセンティックとすら言えるまでにUSインディとしてのサウンドとなっており歌の魅力が前面に出たアルバムでした。豪華な客演陣の個性も作品に傾倒しすぎずに発揮され、まるでサークルを囲んでそれぞれに音楽を披露しているかのような温かさすら感じられる。
この時代にこそ聴きたいカラッとしたサウンドと、一見歌中心に見えつつアルバムを通してUSインディにある多種の要素を混同しているのも魅力的でまさにシーンを総括するかのような、そんなパワーを感じる名作でした。



8月

以上7作品でした。
アルバムとして聴いてとても良かったものは他にもたくさんあったのですが、書く気力がここまでが限界でした。しかしながらこれを書くという勝手な使命感があるからこそ音楽に触れ、楽しみ続けられるのはとても嬉しいことで感謝が絶えません。

音楽が生活を豊かにし、はたまた音楽によるニュースやネットの騒ぎで心を病み、多忙な日々にダウナーになっていくのでここに挙げた7作品には特に感謝です。

心に余裕が出たら新譜以外の記事も書きたいんですけど…長い休みください。

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