見出し画像

聴いたよ新譜2021 vol.3

お世話になっております。
毎週金曜日の新作配信アップロードが楽しみになってきたところではありますが、驚くことに今回も素晴らしい作品がたくさん楽しめました。どれも先行配信の段階から興味を引いた作品ばかりで、Cassandra Jenkinsを筆頭に女性SSWのインディフォークが今回特に豊富に感じました。トレンドというのもありつつやはりそれを求めてしまう自分もいたりするもので…たくさん楽しんだのでこちらで感想+紹介とさせていたければと思います。

例の如く今回も、前回更新以降なので2/6~2/19発売分までの音楽でApple Musicにて配信のあるものに限定して8作品選びました。

今回もこちらに選出できなかった作品もいくつかありますが…かなり迷いつつもこちらの8作品について感想+紹介させていただきます。毎回申し上げていますが、あくまで僕は少し前まで音楽を適当にオススメにあったものだけをシーンなども無知のまま聴き続けてきたので、知識不足があるかもしれません。新鮮な感想として受け止めていただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします!


1. Virginia Wing - Private Life

サウスロンドンのデュオVirginia Wing。恥ずかしながら今回初めて聴きましたがとても素晴らしかったです。
1曲目からGo!Teamを思い出すようなキラキラしたシンセサウンド、ボトムは軽くチープでミニマルながらそこにボーカルが重なっていき、なんとも言えないトリップ感。ほう…と思い2曲目以降を聴いて行くと驚きの連続だった。

基本はミニマルなシンセサウンド、しかしそれがダンスミュージック的ではなくR&B的に、ダブ的に作られ、トライバルな楽器音がガヤガヤと鳴り、そこにジャジーな管楽器が入ってきたりして、と思えばストレートなテクノポップ曲もあったりして…どの曲でもクラブミュージックのメソッドが雑多にアレンジされ、色々あって結果サイケデリックな仕上がりに感じさせてくる

5曲目の99Northが特に好きだ。バトルズのような変則ビートでスタートしたかと思えばブレイクしてジャジーなサックスソロが鳴り響き、そこからはサックスが縦のビートで楽曲をまとめてくれる感じが最高に気持ちいい。とにかく全編シンセサウンドを軸に様々なアプローチを楽しめるクセになる1枚です。めちゃくちゃいい。

2. Cassandra Jenkins - An Overview on Phenomenal Nature

アメリカNYのSSW。先行で発表された1曲目のMichelangelo、3曲目のHard Driveを聴き、MVを観た時点から完全に虜になってしまい過去のライブ映像など見てしまうほどに楽しみにしていたアルバムですが…いざアルバムを通して聴いてみると予想を遥かに上回る名盤級の作品でした…

インディフォークの1番気持ちいいところ取りをした1曲目の歌い出しでもう掴まれてしまったのですが、ローファイすぎずポップスすぎない絶妙なインディ感からの待ってましたと思わせてくれるファズ…このタイミングでファズ入れられたら大概右手あげちゃうんですよね…僕はチョロいんでね。2曲目はインディフォークの路線から少しずつ丁寧にアンビエントフォークに寄っていくのだが、サックスの音色がめちゃくちゃ気持ちいい…3曲目にもその空気感は引き継がれ、ポエトリーとアンビエントフォークの音の渦にどっぷり浸かることができた…
まずこの1曲目から3曲目までのグラデーションが完璧すぎる

4〜6曲目もどれも素晴らしく、陰りのあるトーンが優しい声にマッチしている。静かで温かみのある暗さがクセになるサウンドで、3曲目までの余韻のまま浸ることができる。もうこの時点で僕もほぼイってはいるんですが…

ラスト7曲目がまさかの小鳥の囀りなどをサンプリングした、ジャケットアートそのものの美しく淡い朝を連想させるアンビエント

アルバム1枚にストーリーを感じつつ統一された空気感と間違いないサウンド…毎朝聴きながら通勤したい名作だと思います。すごい。

3. Mogwai - As the Love Continues

実の所、Mogwaiの新譜が出ると知ってもあまり騒がない自分がいた…僕の中にはいつもMogwaiに求める「こういうMogwaiであってほしい」みたいなものがあって…それは氷のように冷たい緊張と緩和の暴力的なまでの乱高下だったりするんですが、ようはそれって『初期のMogwai』なんですよね。バンドが進化していく過程でその轟音にフォーカスしすぎていったり、エレクトロを利用したアンビエンスの獲得だったり、どれもMogwaiなんだけどいつもどこかでそれを待ってしまう自分もいて、今作はそんな自分にとって

「知るかバカ!これでも喰らえ!!」
とでも言われたような気持ちよさがありました。近年Mogwaiのエレクトロサウンドあり、そこからの爽快感すらある轟音ギターの「音の壁」これがまた混ぜるな危険って感じで、そのあまりにギトギトしたサウンドに心から敬意を表しつつも「なんて下品で最高なんだ…」とも思えてしまう

その下品さが突き抜けて爽快で、混乱の時代に抱えた色んなごちゃごちゃした気持ちにビシビシと訴えかけてくるモノがある。曲を聴くごとに轟音を待ってしまうこの状態そのものは明らかにあの頃の気持ちなのに、サウンドやバンドのあり方はやはり全然違ってしかしそれがとてつもなく愛おしい作品だと思います。

めちゃくちゃ好きなアルバムです。
今のMogwaiを楽しめる1〜3曲目もいいのですが、個人的には5曲目のDrive the Nailが好きです。階段式にクレシェンドする楽曲で、「轟音きた〜」からの「もう1段階上の轟音があるだと…!?」の感じがたまらないです。下品。


4. Katy Kirby - Cool Dry Place

インディフォークの女性SSWといえば去年今年だけでもすごい数ありもはや僕も把握できていない現状だが、ナッシュビルのSSWであるKaty Kirbyの新作、初めて聴きましたがとても良いアルバムでした。

インディフォーク自体が僕としては大好きなので一生聴いていられるのですが、セオリーみたいな部分で共通して紋切り型な雰囲気があってどれがなんだかわからなくなったりするのも事実。しかしこの作品はシンプルでセオリー通りながらギターの歪みの入れ方や展開の盛り上げ方が絶妙で飽きない作りだなあと思います。

特に表題曲でもある8曲目のCool Dry Placeはそのポップネスとインディ感と展開の気持ちよさが素晴らしいバランスで作られている名曲だと思います。好き…

5. Pauline Anna Strom - Angel Tears in Sunlight


80年代に活躍した盲目の電子音楽家Puline Anna Strom、33年ぶりのアルバムとしてレコーディングされたのが今作。さすがに知らなかったのでこの機会に過去作のコンパイル盤も聴いたのだが当時の時点から今聴いても新しいサウンドを放っており、今回の新作のおかげで出会えて嬉しい気持ち。

楽曲はとてつもなく美しく色褪せないパワーを持ち、アルバム通してもビート感がある楽曲も含めて40分9曲と聴きやすいつくりでミニマルながら中毒性のあるアルバムとなっています。音の種類こそシンプルながら常に奥行きが広く、聴きながらイメージがどんどん湧いてくる作品

元々アルバム制作中に親友を亡くし、そこに当てたメッセージも込めた作品だったようだが、結果的に12月に本人も他界し遺作となってしまう…そうでなかったとしても素晴らしい作品。生命のパワーを感じる名作だと思います。RIP

6. Lael Neale - Acquainted with Night

アメリカLAのSSWであるLael NealeのSUB POPからリリースされた新作アルバム。先ほどから…というかこのnoteでも既にインディモダンフォークやベッドルームポップを軸にしたSSWは数多く触れてきたが、

個人的に歌声の魅力に最も取り憑かれたのはこのLael Nealeだったかもしれない。

ミニマルでベッドルーム感も強く、ローファイアナログシンセのサウンドがこの独特の歌声を引き立てていてなんとも言えない味を感じる。SUB POPの力がわかるほど近年の所属作品を聴けてはいないが、かつて熱狂したSUB POPにもあったアングラ感はたしかに感じるし、なんとなく「ぽさ」はわかる気もする…

数少ない音色のバリエーションの中で聴き切らせてくれるこの歌声とメロディ。なんだかんだ今年たくさん聴きそうなアルバム

7. Wild Pink - A Billion Little Lights

Fleet Foxes好き好きマンであるところの僕としてはアメリカらしさが滲み出るギターサウンドにShimmerの効いたモジュレーションが響くこのサウンドがあって、そこに優しくも渋い歌声が乗っかってきちゃうともうたまらないんですよね。

前作以上にぬけ感のあるサウンドで、それでいてサウンドはゴージャスすぎずモジュレーションも気持ちいいレベルを超えすぎず…インディらしさをはずれすぎない絶妙な侘び寂び感が古き良きサウンドを新鮮なものに変換しているように思います。
こういうアルバムを田舎住まいの僕なんかが朝に聴いちゃうとばっちりすぎて本当に気持ちよくなっちゃうんですよね…ジャケットも毎作品飾りたくなるくらい好きです。

外で聴きながら酒飲みたい

8. Another Michael - New Music and Big Pop

一聴して、僕の今の生活に足りてないのは「Fun」だと確信するほどに心を明るくしてくれる音楽でした。MIKAを思い出すようなキレのある明るいインディサウンドがどこか間抜けでローファイで、しかし外向きに広がっておりとても素晴らしかったです。

ペンシルバニアのAnother Michaelの1stアルバム。明るくありながらもしっかりとインディギターロックのサウンドを崩していないところに好感が持てました…snail mail??というかなんというか。

ちと情報も少ないのですが、結構元気もらってます…たまにはこういうアルバムを選ぶのもいいかな…って。


すごいよ

今回も良い作品がたくさんで楽しい2週間でした。インディ、ベッドルーム系のアーティストが相変わらず良作を各地で出していたり、ジャズやアフリカ系音楽なども広がりを見せていて今年もなかなか内省的な空気感のある作品に目がいってしまうっていうのはありますが…cassandra jenkinsみたいなすごい作品も出てきてて結構驚きました。


発売して少し経った作品などにも新たに出会えたりもして視野が少し広がった感覚もあります。アフリカンジャズのコンピ「Indaba Is」とか最近聴いています。他にもYouTubeのKEXPチャンネルでslow pulpsen morimotoBright EyesDaughterのライブを観たりと楽しく過ごしておりました…

Tash Sultanaのアルバムも良かったし、
先行楽曲が少しづつupされているアルバムもありますね…Blake Mills & Pino Palladinoや元The Pain of Being Pure at HeartのKip Bermanの新バンドThe Natvralなど…まだまだ今年は楽しみな作品が多いですね…聴き切れるのか。

生活に馴染みつつ、自分の創作活動に活かしつつたくさん音楽を聴いていきたいな…
お読みいただきありがとうございます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?