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【読書日記】向日葵の咲かない夏 / 道尾秀介

2022年12月17日 読了

※本と一緒に撮った写真が無かったので全く関係ない画像ですみません。

この本を読むのは2回目で、どんでん返しミステリーが好きな友達に薦めたら久々に読みたくなったので6年ぶりに再読。

小学校のクラスメイトでいじめられっ子のS君の首吊り死体を発見してしまった主人公のもとに、S君の生まれ変わりだと名乗る蜘蛛が現れ、「僕は自殺じゃなくて殺されたんだ」と主人公に告げる、というかなり奇想天外なあらすじ。

蜘蛛に生まれ変わったS君と協力しながら犯人を追い詰める展開で、周りの人間も蜘蛛の生まれ変わりを平然と受け入れたり、不思議な力でヒントをくれるお婆さんが現れたり、まるで児童文学のような設定に対して、グロテスクな描写やキツすぎる家庭環境が生々しく表現されるギャップに戸惑う内容。

初めて読んだときはそのぶっ飛び具合に「なんじゃこりゃ、意味わからん…」と思いながら読んだ。最後にどんでん返しがあり、かなり衝撃的だったが、初読時は禁じ手的なトリックだと思って、面白いけど評価が難しい……と感じていた。

しかし今回改めて読んで、ほとんど内容を忘れていたが「こんなに凄かったか?」というほどに感動した。め〜ちゃくちゃ面白い。真相を(うろ覚えながら)知ってる状態で読んだので、徹頭徹尾完璧な構成力に改めて気付かされた。続きが常に気になる展開で、たたみかけるように明かされる衝撃の真相、ゾッとするほどの狂気はホラーとしての面白さもあり、改めて戦慄した。

そしてラストシーンは何度読んでも鳥肌が立つ。「向日葵の咲かない夏」という標題の意味については作品内にハッキリと描かれず、各自がどういう意味なのか考えさせられるのも趣深い。

「人は誰もが自分だけの物語の中にいて、その物語はいつだって何かを隠そうとしているし、何かを忘れようとしている」というセリフがこの作品を象徴していて、個人的にもとても共感でき、心に刺さった。トリックや構成のみならず、文章一つ一つがとても鋭い。すごい小説だ、と改めて感じた。

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