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太極拳に学ぶ体の身体操作の知恵 ~第四訣~

第四訣 分虚実(ぶんきょじつ)

歩く姿はしなやかに 
ーナンバ歩きと正常歩行の秘密ー

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♦ナンバ歩きの謎

・ナンバ歩きは南蛮歩きのことで、歌舞伎の所作のひとつである
・南蛮歩きは舞台照明も音響も不十分だったむかしの演出効果を上げるためのデフォルメ(誇張)だったと考えられる
⇒踏み出す足と同じ側の手で華やかに袖を振ると、屏風を開いたようにからだが大きく見える
・特に足を強く踏みしめる動きを「六方」といい、日常の動きとは一線を画す
⇒華麗でしかも荒々しいこのような演出は観客の心をかき立てられ、日常生活とかけはなれた動きに、「南蛮渡来の歩きに違いあるめえ」という意味で「ナンバ歩き」と呼んだのだろう
・武術動作には確かに同側の手足を使う動きがあるが、しかしそれは瞬間的な「体裁き」である


♦自然な歩みは達人の境地

第二訣は「分虚実」、虚実を分けよ、という教えである。
簡単にいえば、右足を踏みしめて「実」となった時、左足は「虚」となって軽やかに歩めということだ。

《 第四訣 》分虚実(虚実をわける)
 太極拳術では虚と実を分けることを第一義とする。全身すべて右腿に坐らせれば右腿は実、左腿は虚となる。全身すべて左腿坐らせれば左腿が実、右腿が虚となる。虚実を分けることができるようになったあとで初めて身の転動が軽霊(かろやか)になり、すこしも力をむだに費やすことがない。もし虚実を分けることができなければ、歩みは重く滞り、立つ身はおのずから不穏になり、たやすく人に牽き動かされることになる。

※注:中国語で「腿」は脚全体、「足」は足先を意味することが多い。

 ここでは原文を重んじて「分虚実」の3文字を最初に掲げたが、今では「虚実分明」(虚と実は明らかに分けよ)あるいは「虚実分清」(虚実は清らかに分けよ)で表す方が一般的だ。

「虚実を分けて、つまり左右の重心を交互に移して歩け」
こんな分かり切ったことを重大要訣のひとつとして説くのはなぜだろう?

 それは…
武術では両足が居つきやすいからである。
技を決める時には腰を安定させる必要があるが、腰を安定させ力を入れて技を決めようとすると、どうしても両足で踏ん張る必要がある。これを意識し過ぎると、技を決めようとする段階で絶えず両足に力が入りやすくなる。
 いかなる場でも常に自然な歩みを保持できれば、それは既に達人の境地であると言えるだろう。


♦自然歩行を分解してみると

 そもそも人間にとって自然な歩みとはどんなものか。
「四肢と脊椎の診かた」によると、人の歩行には次の二面がある。ひとつは重心をかけて体を支える段階、これを「立脚相」という。もうひとつは重心を抜いて前に倒す段階、これを「遊脚相」という。

 太極拳の演武では「停まるに似て停まるにあらず」ということを強調している。停止しているようであって実は停止していない。あくまでも動きの過程で現れる静止的な動作なのだ。微視的には決して停まることなく次の動作へと連続している。
 これよりも指摘したいのは、後ろ足の踵を上げる動きだ。
楊式太極拳 摟膝拗歩(ろうしつようほ)では、自然歩行より歩幅を大きくとるので単に踵を上げるだけでなく、つま先で柔らかく地を蹴るような意識が必要だ。
 前足にゆっくりと体重をかけつつ、後ろ足はつま先で柔らかいながらもしっかりと地を蹴って引き寄せる。この動きはスケートで氷上を走る時の動きと共通している。
 この動きで足首と膝には、しなやかな力が養われる。これを長期間練っていると、その粘りと力は走るときにも活きてくる。ゆっくりとした歩法練習から速さへの力が生まれる。

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♦ウォーキングのすすめ

 スポーツとしての「ウォーキング」は正常歩行を練り上げる最高の運動だ。たとえば、ウォーキングは目の運動になる。目は脳の一部。歩きながら移り行く景色をなんとなく見ているだけで目と脳にマッサージ的な効果をもたらしている。まさにウォーキングは「安静をもたらしつつ内側から動きを練り上げる」というタイチ・ムーブメントの大原則に合っているのだ。

足を踏み出す時にほんのちょっと腰を入れて歩いてみよう!


【 感想 】
冬になると屋外のスケートリンクに足を運ぶ。
数年前から子供たちと行き始めて、遠いため行けるのはシーズン中に1〜3回ほどだ。
行ってみると、いろいろな人の滑り方が目に入る。
アイスホッケーを習ってるだろうなと見える男の子は、重心を低くし力強く滑り、豪快に止まり、バランスを崩すときは派手に転ぶ。豪快で激しい滑りをする。
高齢のおじいさんは、ちょうちょみたいにひらひらと舞うように滑る。軸がないように見えて軸がある。するりんと流れるようににスピンをする。
滞ることなく流れ続ける。

アイスホッケーの男の子が近くに来ると、その激しさに巻き込まれないようにと気をつけるのだけれど、おじいさんがそばにいても、怖さがない。圧がない。

去年、自分は後ろ向きに滑れるのだと気づいた。
だから、今年はもっとなめらかに滑れるようにしたいと思ってる。(実情何回行けるか分からんけど …あれ?なんの話 笑)

つまり、虚実がうまくつなげないと棒人間みたいな滑り方になるし、バランス崩して転んじゃうよねって話でした。
虚実は奥が深いのだ。

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