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疲労した現像液で写真はどうなる?4ヶ月保存したKodak D-76を試す

残暑厳しい9月のある日。Lomographyのモノクロフィルムでスナップしてきました。


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この日は一緒に歩いてくれる人がいて、イケダさん(@souvenir878)、かのうさん(@junichirokano)、そしてモデルのHOTARU。さん(@kosyo0821)の3人と写真を撮りました。写真好きが集まりとても良い時間を過ごさせてもらいましたた。ありがとうございます。


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疲労した現像液で仕上げた写真

さて、ここからがタイトルにしたnoteのテーマ。「疲労した現像液は写真にどういう影響を与えるのか?」です。

この日のカメラはライカM3と沈胴ズミクロン。フィルムはLomoのB&W400で、現像液がコダックのD-76。

関連:Summicron 50mm F2 1st - ぼくが偏愛する沈胴ズミクロンのこと

このD-76がだいぶ疲労していて、液を作ってから4ヶ月が経過。さらに10本以上のフィルムを現像しています。交換せねばと思いつつ、やれば出来るものだからついつい使いまわしてきた現像液です。公式のインフォメーションによると、D-76の使用期限についてはこのように書かれています。

【D-76の使用期限】
貯蔵液:瓶の中を一杯に満たして6ヶ月
使用液:1ヶ月

「フィルムを20℃の現像液に浸して10分...」といったデータは基本、現像液がフレッシュな状態を前提に作られています。だからユーザーは現像液を使い回すごとに少しずつ現像時間を伸ばすなりして対応します。

今回の現像液も現像の度に保存液から必要な分を取り出して使ってきたもの。だから貯蔵瓶中の液量は少しずつ減っているし、現像の度に空気に触れるから劣化もしているはずです。それを使って現像した写真を以下に並べてみます。


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一応微粒子現像液とされるD-76ですが、さすがに粒状感が目立ちます。それに2枚目の縦の写真ではシャドー部がストンと沈んでいます。これは疲労で現像力が弱まる → シャドーが持ち上がらない、ということなんでしょうか。1枚目と3枚目の空の写りも荒々しい感じ。

新鮮な現像液と比べたわけじゃないから断言は出来ないけど、たしかに疲労の影響はあるんじゃないかな。


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せっかくのメンズポートレートもザワついてしまった。こういうのはアクロスやT-MAXのような微粒子フィルムの方が合いそうです。

その一方で、こうした描写こそモノクロフィルムっぽいとも思いませんか?

デジタルなシャープな絵と違った、どこかアナログを感じる写真。これでも現像自体は出来ちゃうのですから、こうした描写が好きな人はあえて使い古すという方法もあるんじゃないでしょうか。現像時の液温を上げて荒々しいネガを作るという技法もあるみたいですし。



なぜかあまり影響を感じないカットもある


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逆に、同じタンクで同じタイミングで現像しているのにそこまで疲労の影響を感じないカットもあります。この写真の傘の部分は陰影やシワがナチュラルに出ていてすごく好きな雰囲気。「使い古した現像液に残る銀粒子が解像感を高めることがある」というのも聞いたことがあるけど十数回の使用でそれが起きるのかも不明です。


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新橋のストリート将棋。これも疲労を感じないというか、気にならない。現像液が疲労していてもイケるカットはたしかにあって、それが1本のフィルムでどちらも生まれているなると理由は撮影時の露出なのか被写体選びなのか。こういう疑問の答えを探っていくのも写真の楽しいところなんでしょうね。


新品の現像液ではどうか?

こうした比較がスマホサイズでどこまで伝わるかは怪しいですが、最後に新品のD-76を使って現像した別ロールの写真を見てみます。


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比べてみるとこちらの方が粒子にムラがなく、さらに細かく均一に並んでいるような印象。粒子が細かいせいか、写真全体のシャープネスも高く感じる(わかりますかね...?)

やっぱり現像液は使いまわしすぎないのが良さそうというのがいったん今回の結論。現像液は多少古くても像が出るし、使いまわした分だけ現像単価は下がるのでついついリピートしがち。だけどこれも食事や薬と同じで用法容量、そして消費期限を守った適切な使用が好ましいのは言うまでもないのでしょうね。

最後に、この日のフォトウォークで一番のお気に入りカットを。


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写真は楽しいねぇ。

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