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DX視点で読み解く: JETRO対日投資有望産業~観光レポート

新型コロナウィルスワクチンの開発と認可が下り、世界中で次々と接種が進んでいます、なによりです。効能期間が短いだとかワクチン自体が効く効かないなどの議論もありますが、それはそれとして・・・

ワクチン接種をすると、心も軽やか!
出歩きたくなる気持ちは・・・わかります。
自分はワクチン接種した! これで(たぶん)大丈夫だ!っと。
接種を終えた世界中の人がそう思ったとしても不思議ではありません。

3月15日の参議院予算委員会で、ワクチン接種を担当する河野大臣が、新型コロナウイルスのワクチン接種を済ませた人に対し、公的に発行される証明書「ワクチン接種証明書(通称:ワクチンパスポート)」について答弁で言及しています。

このワクチンパスポートは、すでに30か国以上が、導入や導入に向けた検討を進めています。もっとも、ワクチンパスポートを持っているからといって隔離措置などが免除されるかは受入国次第。それでも、例えばEUは経済の立て直しを後押ししようと、夏の休暇シーズンまでにワクチンパスポートの導入に向けた準備を進めています。

東京オリンピックはインバウンド観戦客の受け入れを断念しましたが、いづれ遠くない将来、ワクチンパスポートを片手にインバウンド観光客が再び押し寄せてくるでしょうね。国境を越えた往来再開まであと少しです。

それに関して、JETROがとても興味深いレポートを発表しています。
JETRO対日投資有望産業:観光レポート

外国企業に向けた、対日投資の有望産業情報を紹介するシリーズ。 各産業の最近の動向を伝える「全体概況」、規制緩和や法制度改正などの「政府の取り組み」、当該産業の中で成長著しい「魅力的な注目市場分野」という3つの視点から各産業について説明したレポートです。

今回はこのレポートをDX視点で読み解いてみます。

■1、全体概況

**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
コロナ終息後も成長が期待される日本の観光市場
日本のインバウンド市場は著しく成長しており、2019年の訪日外国人旅行者数は、過去最高となる3,188万人(前年比2.2%増)となり、7年連続で過去最高を更新しました(図表1)。同年の国際観光収入では、訪日観光客から461億米ドルを獲得し、ドイツ、オーストラリアを抜いて世界第 7 位に順位を上げています。また、旅行・観光分野で3590億米ドルが日本のGDPに寄与されており、この額は同分野において、米国、中国に次いで、世界第3位の市場規模を誇っています。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
2019年の日本の旅行市場規模全体(27.9兆円)の内、インバウンド市場はまだ2割弱で成長過程にあるのに対し、国内在住者による国内旅行は8割近くを占めています(図表2)。そのため、新型コロナの感染状況を踏まえ、感染防止策を前提としながら、先ずは国内在住者による国内旅行需要の回復に期待が寄せられています。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

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なるほど。そうですね、まずは日本人による日本国内宿泊・日帰り旅行の消費額回復でしょうね。さて問題は、その後の訪日外国人旅行。 果たして日本に来てもらえるのでしょうか・・・・

**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
アジア・欧米豪で12の国・地域の海外旅行経験者を対象にしたアンケート調査では、新型コロナ終息後に海外旅行したい国として、日本はアジアでは1位、欧米豪では米国に次いで2位となっています(図表3)。また、国籍別では、中国、香港、台湾、タイ人の6割超が訪日を希望しています。このことから、新型コロナの感染拡大によって一時的に訪日旅行が出来ない層が、事態収束後に、訪日旅行を計画する可能性が極めて高いと予測されています。インバウンド市場においても、新型コロナ終息後の早期回復が見込まれています。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

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おー! コロナ終息後に、海外旅行したい国のトップに我ら日本があげられています! これはとてもうれしい調査結果ですね。
世界の皆さん、ぜひ日本へ! 
よーし、受け入れる私達も、オ・モ・テ・ナ・シの精神で・・・って悠長なことをいっている場合でないかもしれません。


■2、政府の取組

**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
日本政府は観光を、成長戦略の柱、地方創生への切り札と定め、2016年3月の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において、訪日外客数を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人という目標を掲げました。(中略)政府は、感染状況や旅行需要の回復状況を踏まえながら、感染拡大防止策を取ることを前提に、当面の観光需要を担う国内旅行の需要を喚起しつつ、本格的なインバウンド回復に備えた取り組みを進める予定です。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

事態収束後に、訪日旅行を計画する可能性が極めて高い・・・これはもしかすると日本政府が掲げた2030年に6,000万人という目標を前倒しで達成する可能性もあるかもしれませんね。

2019年当時でもあれだけの観光地混雑がありました。京都の三年坂とか原宿竹下通り並の混雑していた記憶がありますw それ以上の観光客が押し寄せ、受け入れることは現実的なのでしょうか? 宿泊キャパは十分で宿泊難民がでることはないのでしょうか? 主力観光地ばかりが混雑し、地方・中小観光地は閑古鳥とならぬよう顧客誘導は十分なのでしょうか?


政府の本格的なインバウンド回復に備えた取り組みは次の4つです。

(1) 観光DX(デジタルトランスフォーメーション)
(2) インバウンド観光促進のための対外発信強化
(3) 訪日外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充
(4) 多言語対応

(1) 観光DX(デジタルトランスフォーメーション)

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**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
最先端のICTを活用して製品・サービスやビジネスモデルの革新を図るDXを観光分野に取り入れることは、日本の観光競争力向上に向けての喫緊の課題です。また、新型コロナによって深刻なダメージを受けている地域経済を立て直すためにも、DXによる観光ビジネスの生産性向上や高付加価値化は必要不可欠になっています。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

総務省は2021年度予算の概算要求で、地方自治体のDXに向けて38億8千万円を計上しています。各地方自治体も地元の観光協会も同様の施策を積極的に展開しようとしています。
どれもシステム開発が伴います。また施行によりオペレーショナルな運用と改善も必要となります。
・利用者視点にともなう UI/UX の向上
・利用データ把握と分析

TCO(Total Cost of Ownershipの略。総保有コスト)の考えでは、導入時に必要な初期投資費用(イニシャルコスト)と、保守・運用・維持費用(ランニングコスト)を含めた総経費を計算して見る必要があります。多くの場合、イニシャルコスト < ランニングコスト になる場合があり注意が必要です。特に観光は、コスト以上に、共感・感銘・納得などエンゲージメントが求められる業界。それを達成するために、デジタルマーケティングやDX運営に明るい人員が必要になります。

(2) インバウンド観光促進のための対外発信強化

**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
日本政府観光局(JNTO)は、訪日しようとする外国人旅行者が容易に日本の情報を入手できるよう支援しています。訪日に必要なビザ情報等は元より、災害時の情報の広く迅速な発信を行うとともに、デジタルマーケティングを強化し、データ分析の高度化や分析データのプロモーションへの活用等を行うことで、相手方の属性や関心を踏まえた的確な情報発信や効果的なプロモーションを実施しています。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

訪日しようとする外国人旅行者が容易に日本の情報を入手できるようSNSや情報提供サイトを活用する必要があります。伝統的な観光スポット紹介からはじまり、大ヒット映画『君の名は。』の舞台として知られる飛騨高山のような聖地巡礼などマニアックな情報発信も、外国人人気に火を付ける可能性がありますね。
また医療ツーリズムや、各種体験型観光なども注目できます。柔軟な視点と視野で情報発信のアイデアを再検討してみてはいかがでしょうか? 参考となるベンチマークを抑え、アンテナ感度をあげる必要もでてきますね。

(3) 訪日外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充

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**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
訪日外国人旅行者向け消費税免税制度は、利用者・事業者双方のニーズに対応するため、毎年改正されています(図表5)。2016年5月の改正では、免税の対象となる最低購入金額が「5,000円以上」に引き下げられました。化粧品や医薬品、トイレタリー製品など単価の低い消耗品や、地方への波及効果が見込まれる民芸品・伝統工芸品についても、免税で購入しやすくなることで、訪日外国人旅行者のインバウンド消費を促進しています。財務省と観光庁はさらに 2018 年度税制改正で、一般の物品と消耗品の購入額を合算し 5,000 円以上になれば免税対象とする改正を行いました。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

注目は2つ。
注目1: さあ、免税店事業者になろう!
2020年4月に、免税手続きの電子化が開始されました。免税店事業者になりやすい環境が整い始めています。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/index.html

注目2:従業員を介さずに販売を行った物品についても免税の対象に
近年、訪日外国人旅行者向けにお土産を販売するIoT技術を搭載した自動販売機が人気であり、従業員を介さずに販売を行った物品についても免税の対象にして欲しいという事業者のニーズに応える形で、2020年の改正では、一定の基準を満たす自動販売機の設置については人員の配置が不要となりました。パスポートの提示に代わり、顔認証機能や文字認識機能で免税手続きが完了するため、外国語対応等ができる人員の確保が難しい地方部においても、免税販売が拡大することが予想されます。

(4) 多言語対応

**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
外国人旅行者数が大幅に伸びている日本において、旅行体験の満足度を高めるための多言語対応は喫緊の課題と言えます。空港・港湾、公共交通等の移動手段、観光地に至るまで、より一層快適でストレスフリーな旅行環境を実現させるため、政府や各自治体は、観光案内所、デジタルサイネージ等の案内板、スマートフォンを通じたトータルでの多言語情報提供体制の整備に努めています。また、東京オリンピック・パラリンピックに向けて設置された「多言語対応協議会」はポータルサイトを開設し、多言語対応に取り組む上での参考資料、全国各地の自治体や民間団体等による先進的な取組事例等を全国へ発信し、各地で多言語対応を推進しています。多言語対応サービスを提供するベンチャー企業等も積極的に紹介しています。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

多言語コンテンツによるWebサイトやSNSでの情報発信の他に、NFC(近距離無線通信技術)が搭載されたプレートや二次元バーコードをスマートフォン等のモバイル端末で読み取ることで、端末の言語設定に対応した言語(日本語、英語、中国語、韓国語)に翻訳された状態で観光情報を取得できるようにするとか、AR(拡張現実)技術を活用し、日本語表記情報をリアルタイムで多言語化するサービスを展開する施策も計画されています。

■3,魅力的な注目市場分野

観光産業における魅力的な市場として以下の3分野を取り上げています。

(1) 金融サービス
(2) OTA(オンライン旅行会社)
(3)ホテル・宿泊施設


(1) 金融サービス

**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
訪日観光客の訪日目的の一つにショッピングがあります。彼らの母国の多くでは、キャッシュレス決済が常識となっており、インバウンド需要に対応するには、キャッシュレス決済システムの導入が欠かせません。(中略)また、新型コロナを受け、オンライン決済の増加や、実店舗でも現金の手渡しという従業員と顧客の接触機会を削減するという観点から、非接触型を中心としたキャッシュレス決済に注目が集まっています。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

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日本においても〇〇ペイが急速に普及しています。けれどそれは国内限定。
外国人旅行者まで視野を広げ国際的なキャッシュレス決済ツールに対応する必要がでてきますね。さまざまな決済手段が乱立することで資金管理や顧客管理も複雑になります。


(2) OTA(オンライン旅行会社)

**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
スマートフォンの普及率上昇で幅広い層にわたってインターネット利用が一般化したことにより、世界では既に、OTAの市場規模が伝統的旅行会社を上回っています。日本国内では、未だ伝統的旅行会社が優位な立場にありますが、2018年のOTA市場規模は約 2 兆 5,520 億円となり、年々その比率が上昇しています(図表7)。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

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じゃらんnet、楽天トラベルや一休.comなどが日本のOTAですが、エクスペディア(米国)、Airbnb(米国)、ブッキング・ドットコム(オランダ)、スカイスキャナー(英国)、アゴダ(シンガポール)など、近年は外資のOTAも積極的に日本に進出してきています。


これらの大型OTAの特徴は、発地主義とマクロ主義。

東京にいる人間に対して、旅行代理店は渡航先(例:NewYork)を紹介します。=発地主義
東京にいる代理店は、渡航先(例:NewYork)のきめ細やかな情報をもっていません。=マクロ主義

デジタル化が進み、OTAはその作業効率を徹底していますが、発地主義・マクロ主義であることは否めませんね。対抗する上で、注目は逆転の発想である着地主義・ミクロ主義。

当該観光地がいかに素晴らしいか、季節柄の変化やイベント情報などきめ細やかな情報発信を促すことで観光地としての魅力を最大限に伝えることができます。デジタル化を勧めインタラクティブな会話により観光客とのエンゲージメントを高めることが可能になります。
たった1枚の写真がインスタグラムに投稿され、国内外から多くの観光客を誘導することに成功した事例も数多くなってきています。


(3)ホテル・宿泊施設

**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート
特に注目のホテルタイプはリゾートホテル(フルサービスホテル)です。国内の部屋数全体に対する割合は1割にも満たず、日本人の国内旅行、及びコロナ後を見据えたインバウンド需要を考えると、日本におけるリゾートホテルの数はまだまだ少なく、外国企業にとって開発余地は十分にあります(図表9)。また、日本各地に50軒の世界水準の高級ホテルを建設するという2019年末に発出した政府方針とも合致するため、リゾートホテル市場の伸びが期待されています。
**********出典:JETRO対日投資有望産業:観光レポート

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このレポートではフルサービスホテル=大型ホテルの市場に着目しています。ただこれほど多くの観光客が押し寄せると、宿泊施設の部屋数が不足になります。不足になれば当然宿泊価格も高騰する傾向がでてきます。またホテルのような非日常空間を求めるのではなく、日本の日常生活を体験したいとのニーズも一方ではあります。

外国人観光客のみならず、リモートワークの定着化により、ワーケーションなど新たな宿泊ニーズもでてきました。一方で日本の人口減少による空き家問題なども深刻です。ある地方では廃校となった学校を宿泊施設に改装し、地方の新たな拠点とする動きもでてきています。さまざまな宿泊ニーズに合致した宿泊施設を底辺広く提供すること、また知名度を高めることもこれから重要になりそうです。


■最後に

コロナ禍は、観光産業に壊滅的な打撃を与えたという意見が多くみられます。ただそれもコロナワクチンにより遠くない将来に解消されるでしょう。

解消され、世界中からまたインバウンド観光客が押し寄せてきた際に備えて、いまのうちに準備することが極めて重要かと。


上記にあげた施策はどれも、システム化・デジタル化、そしてDXです。
どれも構築すればいいわけではなく、その後の運用が重要となります。

コンテンツ運用、データ解析と運用、UI/UXの定期的な見直し・・・

エンゲージメントを高める意味でも、運用は極めて重要になります。

え?それを担える人材が足らない?
ならば連絡ください、相談にのれますし、ご提供もできますのでw

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