見出し画像

DX視点で読み解く:次期首相最有力候補、菅義偉官房長官の政策プラン



次期総裁(≒首相)最有力候補である菅官房長官が、9月14日の自民党総裁選挙に向け、政策プランを発表しました。

これを、デジタルマーケティングやDXプランナーの視点で読み解いてみましょう。来年度の予算計上のヒントになるかもしれません。


●菅官房長官の政策プラン

総務大臣や官房長官での実績を踏まえて、安倍路線を継承した、均衡のとれた骨太の6項目の政策となっています。

「自助・共助・公助、そして絆 〜地方から活力あふれる日本に!〜」 政策要旨    https://ameblo.jp/suga-yoshihide/entry-12622752975.html より抜粋
・国難のコロナ危機を克服
・縦割り打破なくして日本再生なし
・雇用を確保、暮らしを守る
・活力ある地方を創る
・少子化に対処し安心の社会保障を
・国益を守る外交・危機管理

(1)国難の新型コロナ危機を克服

いまこそ政治がしっかりと責任を持って、まず、爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守ります。その上で、感染対策と経済活動との両立を図ります。年初以来の新型コロナ対策の経験をいかしメリハリの利いた感染対策を行いつつ、検査体制を拡充し、必要な医療体制を確保し、来年前半までに全国民分のワクチンの確保を目指します。

これを第一に持ってくるのは当然ですね。感染対策と経済活動との両立を図るための具体的施策はGotoキャンペーンの後続策も予定されています。国主体の施策にのっかるのも短期的にはありですが、民間企業のマーケティング手法もウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据えて抜本的に見直す必要があるでしょうね。

さらにより長期的な観点でみると、コロナウイルスに続く新ウイルスパンデミックを前提とした政策を立てる必要もあり、旧来の経済構造とは抜本的な立て直しを図り、新たな人間中心設計のデジタル化社会を作る必要があります。極端に考えれば、リアル型イベントがなくても成り立つマーケティング、コミュニケーション、経済構造を編み出すことが重要といえます。
一方でリモート診療のような従来は、医療崩壊予防の観点から、医療業界の鉄壁鉄板の壁がゆっくりと崩れ、eーヘルスは注目できる分野ですね。


(2)縦割り打破なくして日本再生なし

なかなか進まない政策課題は大体、「役所の縦割り」が壁になっているものです。災害対策でも、縦割りが壁となり、全国で国交省所管以外の約900のダムが洪水対策に使われていませんでした。
政治主導で見直しを進め、全国で新たに八ッ場ダム50個分の水量について事前放流してダムの水位を下げて、大雨時に下流の水位を下げることになりました。
ポストコロナに向けてデジタル化の必要性が明らかになりましたが、かねてより「行政のデジタル化の鍵となるマイナンバーカードの普及が進んでいない」と指摘されています。できるものから年内に具体策を講じつつ、複数の役所に分かれている政策を強力に進める体制を構築します。

ここ注目です。従来、内閣府、内閣官房、経済産業省、総務省などでバラバラだったものを省庁横断の司令塔組織化しようとしています。デジタル庁です。同様の組織は韓国にはすでにあり、今回のコロナ禍での対応の違いがでました。

社会全体がDX化・デジタル化に向っています。義務教育、試験制度、金融サービス、行政サービス、売買契約、株主総会、医療診療、薬局など固定概念に固まりきった分野を行政主体で徹底的にデジタル化し、非対面、非ハンコ、非紙書面の手続きに変えるいいきっかけとなるでしょう。

今後マイナンバーカードを軸に、データの連結連動が急速に進んでいくでしょう。行政のデジタル化は、企業のデジタル化と接点を持つことに繋がります。プライバシーガバナンスの重要性が高まることは間違いありません。

(3)雇用を確保、暮らしを守る

依然厳しい経済状況の中で、雇用を守り、事業を継続するために、今後も躊躇なく対策を講じます。最大200万円の持続化給付金、公庫や銀行による最大4000万円の無利子・無担保などの総額230兆円の経済対策について、スピーディに必要な方々にお届けします。
さらに、GoToキャンペーンをはじめ、感染対策をしっかり講じることを前提に、観光などコロナによってダメージを受けた多くの業種を支援します。

GoToキャンペーン、GoToイートなど国をあげての景気浮揚策が続くでしょうね。その機をどのように捉えるか・・・デジタルマーケターの腕の見せ所です。一過性の呼び込みに力をいれこまず、顧客のデータ化、PDCA化、MA化などを統合しておくべきでしょうね。

今回外出自粛要請によるリモートワークのチャレンジは、ネットワーク問題やセキュリティ問題を露呈しました。官民協力のもと、今後リモートワークを阻害する規制や慣行は排除されていきます。新たなセキュリティガイドラインやガバナンスを提示し、コンピューターネットワークの接続形態やゼロトラストを活用したセキュリティなどより高度な施策も検討していく必要がでてきます。

最大200万円の持続化給付金、公庫や銀行による最大4000万円の無利子・無担保・・・これは歴史的にありえないほどの大盤振る舞い。借金は必要ないとかのんきなことをいう経営者に、次の10年を見据えたデジタル戦略をたてこのチャンスに投資調達を社内的に進めるべきでしょう。

まして総額230兆円の経済対策は、マネタリーベース、つまり世の中に出回るキャッシュの「量」が増えるということ。今回の金融政策はMMTの壮大な実験とも揶揄されています。歴史的観点でみるとキャッシュがあふれると必ずインフレに動いていきました。インフレはキャッシュの価値が下がるということ。来るべくインフレ時代に備え、積極的なビジネス投資・大胆なDX施策をおこなう好機ではないでしょうか。

(4)活力ある地方を創る

私は秋田の農家の長男として生まれ、地元で高校まで卒業しました。それが私の原点であり、政治の道を志して以来、常に「活力ある地方を創りたい」という思いを胸に、知恵を絞り、政策を実行してきました。
総務大臣時代には、官僚に大反対されながらも「ふるさと納税」を立ち上げて、いまでは年間約5000億円まで拡大しました。官房長官としては、外国人観光客を約四倍の年間3200万人、消費額年間5兆円まで拡大し、農産品の輸出を倍増して9000億円にしました。昨年地方の地価が27年ぶりに上昇に転じました。鳥獣被害対策と所得向上のため、ジビエの活用を支援しました。
今後も最低賃金の全国的な引き上げを行い、農業改革や観光をはじめ頑張る地方を政治主導でサポートします。

地方分権の担当大臣を経験してきた背景から「総務省政策」が菅氏の得意分野といえます。アベノミクスで放った三本の矢との違いをここで見せてますね。

超高齢化で人口減少が進む日本では、地方の活性化は急務。ただ急務急務といいながら効果的対策とその効果がこの十年実を結んでいないのも事実。5Gなどのインフラとデジタライゼーションによるサービスの発展により、地方でも大都市のように仕事と生活が出来るようになってきました。地方から都心へから、都心から地方へ。人的移動の逆流をチャンスにする時代といえます。

また、ふるさと納税で荒らくれた自治体と決着の目処も見え、次の展開に進める土壌が整いました。EC推進・デジタル決済の普及、サプライチェーンの国内回帰など地方活性のあらたな施策が展開されることが予想されます。地方企業・地方自治体は情報の発信力を高めこのチャンスをものにする必要がありそうです。

(5)少子化に対処し安心の社会保障を

全世代の誰もが安心できる社会保障制度を構築します。これまで、幼稚園・保育園、大学・専門学校の無償化、男性の国家公務員による最低一か月の育休取得などを進めてきました。
今後、出産を希望する世帯を支援するために不妊治療の支援拡大を行い、さらに、保育サービスを拡充し、長年の待機児童問題を終わらせて、安心して子どもを生み育てられる環境をつくり、女性が健康に活躍できる社会を実現します。

少子化と女性活躍をあげています。注目はシニア雇用について触れていない点。社会保障は、コロナ禍によって前提条件が大きく狂ってきました。労働需給が緩和して、企業が余剰人員へ。またリモートワークなどデジタル化の波についてこれないシニア層を70 歳までシニア雇用者を雇用延長することができるのかなど勘案した結果なのだろうと思うのは私だけでしょうか。
労働環境は、このコロナ禍で大きく変わりました。今後リアルなコミュニケーションは減り、デジタル的なコミュニケーションが必須となり、人材不足な領域ではAI/機械学習が活躍することになるでしょう。

(6)国益を守る外交・危機管理

我が国の安全保障環境が一層厳しくなるなか、機能する日米同盟を基軸とした外交・安全保障政策を展開していきます。国益を守り抜くため、「自由で開かれたインド太平洋」を戦略的に推進するとともに、中国をはじめとする近隣国との安定的な関係を構築します。「戦後外交の総決算」を目指し、特に拉致問題の解決に向けた取組に引き続き全力を傾けます。
安全保障上の脅威、自然災害、海外に在留する日本国民への危険など、あらゆる緊急事態・危機に、迅速かつ的確に対処します。さらなる課題として、憲法改正にも取り組みます。脱炭素化などの温暖化対策、エネルギーの安定供給に取り組みます。

11月の米国大統領選挙の世情性を考えると安倍首相がこのタイミングで退陣するのはベストな判断だったかもしれません。中国や韓国との関係も、今後も一筋縄ではいかないでしょう。過去に外交面での実績のない菅氏にとって、外交が最も未知数。それでも中国・韓国との影響を受けないTPP11やインドとの結びつきはより強化に、またグローバルサプライチェーンを大胆に見直し国内回帰は加速していくでしょうね。

大局的な視点でマーケティングを考える必要がでてきそうです。

まとめ

9月14日(月) 14:00~、党大会に代わる両院議員総会/投開票が、グランドプリンスホテル新高輪で行われ新たな自民党総裁が選出されます。

仮に、菅氏が選出され、上記政策プラン通りになるとすると以下のような着眼点がデジタルマーケターやDXプランナーには必要になりそうです。

・感染対策と経済活動との両立を図る新たなマーケティングスタイル
・eーヘルス
・プライバシーガバナンス
・民間企業自身のデジタル化
・中長期的DX施策検討&実施
・リモートワーク推進
・サプライチェーンの国内回帰
・デジタル的なコミュニケーションの整備とAI/機械学習化
・大局的な視点でのマーケティング

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)が発生したことにより明確になった日本の課題。ポジティブに捉えれば、デジタル化の必要性を世界中の誰しもが認めざるを得なくなったということです。歴史的なシフトチェンジ、まさにマクロ的なデジタルトランスフォーメーションが起きています。今後官民が連携することでどのようにこの課題を解決していくのか、この動向に注目ですね。

ご提案:ちょいと早めの来期予算検討

そうそう、もうひとつ重要なことをお伝えします。
コロナ禍の影響を踏まえ、来年度(以降)の予算編成を抜本的に見直そうという企業が増えています。今年度は予算がなく応急処置的対処しかできなかったこと、または、ウィズコロナ・アフターコロナを見据え中長期的な計画とそれに必要な予算計画をしようという動きです。従来より数カ月早くからこの来年度予算に向けた事前調査・検討を開始しはじめている企業が散見されます。

今回のこの菅義偉官房長官の政策プランも、予算獲得に向けた状況証拠として使ってみるのもいいかもしれませんね。

懸念事項あれば、いつでもご連絡ください、お待ちしています。

いただいたサポートは、活動費・購入費など有意義に使わせていただきます!