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#01 はじめに・・・決意表明 / サーキュラー・エコノミーの実践的すすめ

「循環なき経済は罪悪であり、経済なき循環は夢物語である」

二宮尊徳の有名な言葉、
「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は夢物語である」
を援用し、循環経済の意義を経産省はみごとに表現(末尾P47参照)しました。

二宮尊徳が生きた時代は江戸時代後期(1787-1856)です。
産業革命により蒸気機関が開発され、その蒸気船に乗ってペリーが来航してきたのが1853年ですから、幕末・明治維新の直前ですね。200年以上続いた江戸幕府が制度疲労を各地で起きはじめた時代です。尊徳はその疲弊した各地の財政再建や農政改革を大胆に断行、その実績数は600以上ともいわれています。

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(写真提供:https://www.photo-ac.com/)

経済という言葉は、経世済民という中国の古事に由来しています。
経済(経世済民)の本来の意味は、苦しむ人の世を治め、環境を整えて、多くの民を救うこと。まさに尊徳は、地域経済の改革者。偉業の真髄が、その言葉から読み取れます。

尊徳の没後、日本は明治維新を迎え、文明開化の名のもと近代経済が日本でも開花します。

石炭・石油、鉱物・ミネラル、水、酸素など、地球上のあらゆる自然資源を「Take(採って)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」し発展してきました。(先進国を中心に限定的ながらも)飢餓・貧困に苦しむ民に衣食住を提供し多くの民を救ってきたことはまさに経済(経世済民)の本来の意味通りといえます。世界大戦後の現代経済はさらに加速、爆発的世界人口増を招き、大量生産・大量消費の潮流が生まれ、今日に至っています。

「Take(採って)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」。この経済モデルは一方向の経済、リニア経済と表します。前提事項はTakeできる自然資源が無限にあることです。しかし、現在70億人、そして今後も増え続けるであろう世界人口を持続的かつ恒久的に支え続けられるでしょうか。すでに世界規模で、乱開発・遺棄による弊害、例えば空気や水・土地の汚染問題や環境問題も発生しています。苦しむ人の世を治め、環境を整えて、多くの民を救うことがリニア経済では到底難しくなってきたのです。

制度疲労を迎えたリニア経済に替わるヒントがサスティナビリティ、持続可能な新たな経済モデルです。それがこのテーマである循環経済。英語でいうCircular Economy(サーキュラー・エコノミー)です。皆様はこの言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。

欧州連合(EU)によると、循環経済とは資源の枯渇や価格変動から企業を守り、新たなビジネスチャンスと革新的で効率的な生産方法及び消費スタイルを生み出すことで新たな競争力を高める経済政策であると位置づけられています。

生産、配送、製品、利用時などのすべてのプロセスにおいて、
資源使用量を減らし、製品や部品をより長く使い、
無駄・遊休になっている資源を効率的に使い、
再生可能で無害な素材や再生可能なエネルギーで運営していく
ことで極力資源を循環させていくのがこの循環経済です。

それらに向けた取り組みを新たなビジネスチャンスとし、
デジタル革命などを用い革新的で効率的な生産方法を生み出し、
諸費者に対しても新たな消費スタイルを提案する、
取り組みを企業としての競争力を高めることにつなげ収益化し、
社会全体の経済成長も持続させる
ことを可能とすることがこの循環経済なのです。

国単位で考えれば循環経済は新たな経済政策産業政策として位置づけることもできます。

サスティナビリティといえば、SDGsやESGという言葉が想起されます。

道徳的なサスティナビリティをただ追い求めても、経済性が伴わない状態では徒労に終わりかねません。持続可能性を追うことを持続できない・・・なんてことになりかねません。まさに「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は夢物語である」といえます。では、リニア経済の罪悪を回避するためにはどうするか・・・・

それこそが
「循環なき経済は罪悪であり、経済なき循環は夢物語である」
という言葉に帰結するのです。

循環経済は、企業の競争優位性を、そして社会のルールをも大きく変えます。資源消耗を減らし、経済を成長させる・・・この背反両立(デカップリング)させる新しい経済活動こそが循環経済なのです。

循環経済で資源消耗を減らし、
循環経済でサスティナビリティを達成し、
循環経済で企業や社会の経済を成長させることは可能です。

リニア経済で成り立つ既存の産業構造にくさびを打ち込み、新たなゲームメーカーとしての地位を得ること・・・
これは見方を変えれば、産業革命以来最大のチャンス到来ともいえますね。

まずは、できることから少しずつ、試行錯誤しながら少しずつ・・・循環経済を皆様が進めていくきっかけになり、循環経済が、産業活動・社会活動を行う上での規範となることを願い、このコラム”循環経済の実践的すすめ”をシリーズ化していきます。

最後に、二宮尊徳の有名なもうひとつの言葉を借ります。
凡人は小欲なり。聖人は大欲なり。

最初の一歩は小さくとも、循環経済は必ず世界を変えていきます。皆様の大欲を叶えられる取り組みだと私は信じています。

P.S.
あれ?「経済」って用語は福沢諭吉が外国の書物を訳したときに作った造語じゃないか?確か二宮尊徳(金次郎)は福沢諭吉より年上のはずだし。。。と疑問に思った方へ

その博識、お見事です。そのとおり!
後世の方が尊徳の言葉をその真意に照らし経済という表現に置き換えたのでしょうね。では質問。その福沢諭吉の有名な書物といえば?
そう、「学問のすすめ」ですね。敬意を表し、このコラムシリーズのタイトルは「学問のすすめ」を援用し「循環経済(サーキュラー・エコノミー)の実践的すすめ」としていますw



数藤 雅紀 suto.masanori@members.co.jp
循環経済戦略プランナー University of Cambridge Judge Business School, Circular Economy & Sustainability Strategies修了認定者

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