なんかよかったこと
ここ最近、わたしの日常生活であった「なんかよかったこと」について、思いつくままに綴ってみようと思う。
「すごくよかったこと」ではなく「なんかよかったこと」にする。
なので、たぶん全体的に大したことはない。
あと日にちの記録はおおよそだから、もしかしたらちょっとズレてるかもしれない。
それでは行きます。
・12月17日〈夕日のおじさん〉
わたしのアパートの近くには小さな川がある。
そのそばを歩いていたら、たまたま夕日がかなり良い感じに沈んでいて、光も水面に良い感じに散らばっていて、それはピンク色の雲をバックに良い感じに映えていて、全体的に良い感じの風景として仕上がっていた。
これは写真を撮っておこう!と思ったわたしはスマートフォンを構え、パシャパシャとシャッターを切っていた。
すると後方から、足音が聞こえてきた。ちらっと振り向くと、仕事帰りとおぼしきサラリーマンのおじさんが、気ぜわしげにこちらに歩いてきている。
すこしばつが悪い思いがした。夕日の写真を撮っている所を誰かに見られるのって、自分がセンチメンタルになっている場面をちょうど覗かれた気がして妙にはずかしい。
さっさと立ち去ろうと思ったわたしはスマートフォンをポケットに突っ込んで歩き出した。
すると数歩進んだところで、パシャッ、というシャッター音が聞こえた。
おやと思って肩越しに後ろを見ると、先ほどのおじさんがわたしと同じようにスマートフォンを構えて、わたしと同じように夕日の写真を撮っていた。
思わず顔がにやけてしまった。おじさんも自分と同じ風景を見てぐっと来たのかよと思うと、なんか、よかった。
・12月21日〈最後が余計〉
天気が良かったので、散歩がてら隣駅のドトールまで歩いて向かっていた。
すると前方に、犬の散歩をしているおじさんがいるのが目に入った。
犬とおじさんは順調に散歩を楽しんでいるように思われたが、その途中、犬が道端に座り込んでしまった。
おじさんは犬に「ほら、歩くよ」と諭すようにリードをやさしく引っ張る。
しかし犬は言うことを聞かない。挙句、本格的に道端で眠り始めてしまった。
おじさんは遠目から見てもわかるくらい、困り果てていた。
その光景はほのぼのとしていて、なんかよかった。
ちなみにその後、もはや諦めたおじさんは眠る犬のかたわらで、どこか遠くを見つめながらたそがれ始めていた。
それを見たわたしは、これは輪をかけて平和なワンシーン、いや、
ワンコシーンだなと思った。
・12月30日〈もっと研修に集中したほうがいい〉
その日は年末だったので、自分の家の大掃除をしていた。
4月ごろに職場の研修で使った資料とか、たぶんもう要らないから捨てようと思ってまとめていた。
そしたらとある用紙に、過去の自分によるこんな落書きがあった。
なんですか?リーゼントパンって・・・。
これを書いたときどんな感情だったのか、まったく思い出せない。でもこの落書き、なんかよかった。
ついでに紹介すると、これはわたしが大学生のときに書いた“ねむおせち”のラクガキ。
これもなんか気に入っている。かわいいからね。
・1月9日〈後半すみません〉
上野の森美術館で開催されていた、モネ展へ行った。
この日は「なんかよかったこと」がけっこうあったので、箇条書きにする。
・わたしのすぐ後ろに立っていたマダムが絵を観ながら「すごく、じょうずね」と、かなり当たり前の感想を述べていた。
・“積み藁”の絵の前で腕を組みながら「こりゃあ敵いませんね」みたいな顔で大きくかぶりを振っている男性がいた。お前は何者なんだよと思った。
・さっき「すごくじょうずね」と言っていたマダムが、今度はめちゃくちゃでかい絵の前で「大きいわね」と言っていた。
・ミュージアムショップにて「ぬいぐるみを落とされた方いませんか?ぬいぐるみの落とし物があります!」とけんめいに声を張り上げているスタッフさんがいた。
・あとこれは別に「なんかよかったこと」ではないのだが、とある絵の真ん前で、お互いの手を握り合った状態で長時間むつみ合っているカップルがいた。
そのせいで近辺には滞りが生じており、皆一様に眉をひそめていた。
わたしがヤバい人だったら「あなたがたは、バオバブくらい図太い神経をお持ちなんですね」と言って水をかけていただろうなと思った。
・あとこれも別に「なんかよかったこと」ではないのだが、美術館の「写真撮影OK」のゾーン、あれって果たしているのだろうか?と毎回思う。
「写真を撮れば、あとで見返せる」という心の余裕が生じると、絵を真剣に観られなくなりそうじゃないか?
本物が目の前にあるのに、それをわざわざカメラ越しに見るのはもったいなさすぎる。そんなに画像としてスマホに残しておきたいなら、あとでグーグルとかピンタレストで保存すればいいし。
それに美術館って非日常を味わいたくて足を運ぶ節もあるのに、そこに軽薄なシャッター音が響き渡ってると現実に引き戻されちゃって、なんか冷めるんだよな。
「なんか冷めるんだよな」で終わっちゃったよ。
・1月15日〈わたしも本当はこいつみたいになりたい〉
友人と遊びに出掛けたときのこと。
わたしたちは乗り換えで、とある駅に立ち寄っていた。
その駅は、改札を出たところにセブンティーンアイスの自動販売機が置いてあるタイプの駅だった。
友人はこれに、めちゃくちゃテンションが上がっていた。
ちょっと上がりすぎなくらい上がっていた。
自動販売機が目に入った瞬間「やばい!この駅セブンティーンアイスある!うわ〜!絶対買お!」と言い、はじかれたように駆け出していった。
友人はその後「何味にしよっかな〜、このティラミスのやつにしよっかな〜!うわ〜!悩ましい〜!まあこんなこと言いながら結局チョコミントにするんだけどね!結局!結局ね!はい決定!私、チョコミントにしまーす!」と高らかに宣言すると、
「はやくはやくはやくはやく!!」と言いながらボタンを連打、出てきたアイスを大喜びで取り出していた。
しかし包み紙に手をかけた瞬間、そんな友人のテンションは一変した。
目の前のアイスを、信じられないものを見るような顔つきで見つめ出したのだ。
「…こんな寒いのにアイスって、バカみたい」
友人は低い声でそう言うと、
なんならちょっと嫌そうな顔でアイスを食べはじめた。
マジで何がしたかったんだよと思った。
でもその一連の挙動は、友人の素直な性格がよく表れていたし、感情のままに突っ走るみずみずしいエネルギーはどこかまぶしくも見えて、なんか、よかった。
あとこいつとは、ずっと友だちでいようと思った。
ちょいちょいブレてしまったが、わたしの「なんかよかったこと」の記録は以上である。
読んでくれた方、ありがとうございました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?